016 レッツ・ロックン・ロール・ドライブ
「うおああああああああああああああッ!?」
「なに叫んでるんだ? お姉ちゃんとやらをミリットと探したいんだろ? だったらマックスで行かねェと」
なぜ事故らないのか不思議で仕方ない。障害物競争と変わりなくあちらこちらへ車が動き回るものだから、おれは身体からスライムを出して助手席と合体させた。そうでもしないと事故ったとき窓ガラスから飛び出てしまう。身体を強く打って死亡なんて死に方嫌だ!!
「み、ミリーは落ち着いてられるの?」
「……。酔い止め飲んでるから」
「せめて麻薬がほしいところだろ……」
ミリットも見事に顔面蒼白となっていた。いつどこかにぶつかって死ぬか分からない恐怖感。それはドキドキズッキュンなわけだから恋しちゃったんだにもつながる……なに考えているんだ、おれ。
「ところでミリットちゃん、お姉ちゃんはどこにいるんだい?」
初めから訊けよ!! オマエもう一度どついたろうか!?
「……。カーナビに情報送ってる」
「おお。あとすこしだな。残り1キロ切ったところだ」
どうして残り1キロメートルを切ったというのにタコメーターは180キロを差しているのですか?
急カーブを繰り返し、歩道を何度も乗り上げ、むしろなんで死人が出ていないのか不思議なほどだ……。
そんなレッツ・ロックン・ロールなドライブは終わった。夜の公園についたのだ。
「小粋……。あとで覚えてろ……」
「なんでキレらなきゃならないんだ。最短距離で着いただろ? 所要時間なんと3分だ」
「正確には2分56秒46秒だ……。オマエ、警察がどうのこうの言ってたけど、この危険運転のほうが捕まる可能性高いんじゃねーの?」
座席にひっついたスライムをペリペリ破き、おれは公園に立つ。公園名は『ノース13通り公園』。飾り気のない名前だ。
「しゃーねェよ。それに、おれとオマエが組めば警察だってそう簡単に手出しできねェだろうし」
「まあ終わったことだからもう責めないけど……ミリットは?」
どうやらすでに姉との合流を果たしているようだった。おれと小粋も彼女のもとへ向かっていく。
「──親を止めてほしい」
「──私の一存で止めるのも難しい」
「──じゃあどうすれば良いの?」
「──一旦身を隠せば? おカネがないんならお姉ちゃんが出してあげるから」
……どうにも棒読み気味な会話だ。ただし聴こえてきた話的に、やっぱりミリットにとって一番頼りになる家族は姉だったようだ。
「ありがとう……」
「あのヒトたちもしばらくの間熱病にうなされてるだけ。奇跡がそう何度も起きたらひどい末路をたどることになる」
ここでミリットの姉メリットとおれは出会う。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
愛想がまったくない。なんなら敵だと思われていそうな雰囲気だ。
「というわけで、うちの妹をよろしくお願いします」
メリットは深々と頭を下げた。
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