スライムむすめの転生日記~そのスライム娘は実質無限再生と吸収能力、打撃も斬撃も効かない身体etcでビビリながら無双する~
東山統星
な なんと スライムが むすめに なっていく……
001 我が名はタイラント(スライム娘)
体内時計によると現時刻は月曜日の22時34分。そろそろ動くべきだろう。
月曜日、夜中のロスト・エンジェルス。もぞもぞ動く粘り気のある水、もとい、おれ。
目指す場所は公園。公園には草がたくさんある。草は立派な食物。草生えるとか書き込んでいたときに戻りたい。生える草があるのならば、日中ほしい。
公園にたどり着く。ひと気は薄い。むしゃむしゃ草を食べる。まずい。まずいが、食べないと死ぬ。本能がそう語りかけてくる。でもなんでこんなまずいものを? ……まともな草が食べたい。
夜中の公園にいつまでも居座っていたら通報される。そのまま塩でもかけられてゲーム・オーバー。そんな死に方はごめんだね。だって一度死んでいるから。
……誰かがタバコらしきものをポイ捨てしていった。
ポイ捨てとは許せぬ。おれは単純なスライムであった。かたつむりの4倍ほどの速度でそのタバコ(?)に近づく。
なんだ、これ。見た目はタバコだが、中身はまるで違う。おれの本能がそう語りかけてくる。本能くん、いつもご苦労さまです。
もしかして→大麻。
どういう国だよ、ここ。見上げりゃビル郡の摩天楼。スマートフォン無しでは生きていけない者だらけ。シミュレーション・ゲームでつくったような街並み。21世紀日本と違いあるのか? いや、21世紀日本より発展しているか。
月曜日、22時58分。おれは大麻を食べる。むしゃむしゃ。
…………これをつくったシェフを呼べ。感謝を伝えたい。
まさか異世界で大麻を経験するとは思わなかった。これって捕まるのかね? まあでも、逮捕されるのは吸引した場合か。それとも所持していたら? 分からんが、不幸だ。
最後に少量の水を目当てに蛇口へ向かう。粘り気は水がないと維持できないし、維持できなければおれは死ぬ。そう本能が語りかけてく──。
*
「…………我が名はタイラント」
異世界に来てから数ヶ月。自分の見た目が『スライム』なのは痛いほど分かっていた。RPGにおける雑魚モンスター。意思を持っているのかも分からない、序盤のレベル上げ要員。
そんなタイラントことおれは、人間の身体……じゃないな、やや人間の身体に似ている姿になれた。
腕は紫色で、指らしき部分は3つしかない。しかもそれらは頻繁にくっつく。
歩行もできる。かたつむりの何十倍だ? でも足に枯れ葉とかくっついて鬱陶しい。
しかし重大な利点がひとつある。ついに喋れるようになった。
「この世界を粛清する者だ……!!」
とまあ冗談言っていないで、ヒトとコミュニケーションを取るべきだ。体内時計は朝の4時55分。ロスト・エンジェルスという国はいつも寒いので、公園内をウォーキングだったりランニングだったりをしているヒトはほとんどいない。
「お主、何者じゃ?」
そんな中、背後から話しかけられた。
「タイラントです」
名乗りがひどすぎるだろう。最弱モンスターが最強モンスター(ゲームタイトルが違うとはいえ)を名乗って良いのかよ。
「人間に
「いつかはそうなりたいですね」
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