第34話

「帝には天の大神の血が受け継がれていて、その血ゆえに天の大神と地の大神の加護がある、つまり大物である大神が護る帝がいる限り、楯突くもの達はいないという事で、この国は豊かな国で住み易いんだ」


「ああ……ここに来る迄に、黄金に輝く稲穂を見ました」


「地の大神が在わすから、大地は物凄く肥えてる。そして地の大神と稲荷大明神は親しいから、特に穀物は良くできる」


「それで、めちゃくちゃ美味いんだ?」


「………………」


 佐藤の発言に、宮部が合点がいかない視線を向ける。


「いや〜飯が………」


「飯?」


「ええ。ちょっと固めの、白米じゃなくて………」


「佐藤君は、アレが美味いのか?」


「極上物っす」


「極上ねぇ?…………」


 宮部の沈黙が、ちょっと怖かったりする。


「佐藤君は、ここに来て何を食べたんだろう?」


 なんか宮部が独り言の様な、呟く様な言い方をする。


「えっ?鮑粥に……激うました……鮑のステーキとか、うな丼とか?」


「………ああ、佐藤君は、海辺に行き倒れていたそうだよね?」


「漁師さんが、郡司の諸福さんの所に、連れて行ってくれたんす。なんかマニュアルに、そう書いてあるらしくて………そうそう。そのマニュアルには、見つけたままで参内する様になってるらしく?風呂にも入れず、着替えもさせてもらえ無いすから、ちょっと酷くないっすか?」


 佐藤が温泉街の一件があるので、恨めしげに愚痴る。


「はっ?いやいや、全然風呂に入っても、着替えてもいいんだけど」


「ええ?だって諸福さんや根入さんが………」


「いや〜だから佐藤君、そのままの格好だったのか?やっ、その方が、分かり易くて良いんだけどね………何となく日本人って分かるし………」


「えーーー風呂とかよかったんすか?俺温泉街でも、入れてもらえなかったんすよぉ〜?」


「その………服とか持ち物は、全て持って来てもらいたいけど、着の身着のままとは………気の毒だったね」


 宮部は、ちょっと気の毒そうに言うものの、笑いを堪えてる感もあって、佐藤はちょっとイラッとした。


「先にも言ったけど、今上帝は近代化に興味を持ってるからね、服装やら持ち物にも興味津々なんだよ。だから着てくるのは有り難いけどね………」


「近代化すか?」


「………とは言っても、ある時代で日本の文化を取り入れず、独自の文化を確立している。それどころか、他国との交流は途絶えている。これにはきっと理由がありそうだ。だから今上帝も、今の日本や諸外国の様な、近代化を望んではいない」

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