第22話
駅の外の温泉街は、とても賑わっていた。
日本でいえば熱海とか草津とか、そんな温泉街のイメージに近いが、大きなホテルは建っていなくて、在っても駅の建物と同様か、それよりちょっと小さい木造の建物だが、それといったって日本の温泉街とは全然違う。
「少し歩くと寺院とか在りましてな、大体其処に泊まるのです」
「お寺すか?」
佐藤が、ちょっと嫌な顔をする。
お寺=火の玉or霊……佐藤のイメージだ。
「大浴場なる温泉場も、昨今では増えておりますが、古より寺とか神社に風呂がございまして、民衆はそこに行っておりましたので、その名残があるのです。寺社の風呂場は、好い香りの致す香木を使っておりまするえ、疲れが取れ眠りも深く、翌朝には元気にお役を全う致せます」
「………じゃぁ、お寺に宿泊すか?」
気乗りしない佐藤が、しおしおと聞いた。
「寺社には、予約が必要でして………ただ客人様とならば、何処の寺社も喜んでお泊めするかと存じますが………」
諸福さんは、ちょっと佐藤の顔色を伺いながら言う。
「昨今流行りの、大浴場とやらに参ろう」
二人の会話を聞いていた、根入さんが言った。
「大浴場すか?」
佐藤の顔が、パッと明るく輝いた。
「………では、私が聞いて参ります」
使用人が慌てて、駅舎の次に大きな建物に走って行った。
「………実の所私も寺社に宿泊するのが多くて、余り大浴場とやらには行かぬのです」
根入さんが、小さな声で言った。
「はぁ……私も大概、家の者と来ましても、寺社に宿泊致します」
諸福さんも言った。
「やはり官人であるから、大浴場は………」
「………さようで………」
役所の職員って、出入りする場所には気を使うらしい。
神社仏閣なら、一番安全な健全な場所だな。徳も積める感じで……ハッ!お寺の朝のお勤めとか、やっぱ参加するんだろうなぁ………。
座禅して舟漕いで〝か〜ツ〟って、長い棒で肩をピシャリ……なんて肩を叩かれて………。
とか妄想していたら、使用人がやって来て、大浴場のある温泉宿に促したから、一行は後について行くがその足取りは軽い。
温泉場と言われていた建物は、大きくて大衆浴場というよりも、娯楽施設として馴染み深い、スーパー銭湯の様な感じで、物凄く大きくて岩風呂の様な大浴場や、小さな薬湯もあって、フローリングの休憩所や、平べったい布団の貸し出しもあるし、長いテーブルで食事もできる。まるで佐藤が気に入っていた、スーパー銭湯その物という感じだが、男女問わず裸で湯に浸かっているのは予想外だけど。
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