第1話 霊感少女は迷っている

 私には霊感がある。小さい頃両親にその事を言って本気にされなかったから、それ以来誰にもこのことは話していない。

 だがいま私は迷っている。今隣りにいる幼稚園の頃からの幼馴染に霊が取り付いているのだ。それも、とても大きな。力が強力でないから私でも引き剥がせそうだけど引き剥がしたら確実に皆に不審がられる。だからといって放置しておくと幼馴染は死んでしまうだろう。うーん。どうすれば…

咲良さくら!」

 おばけが取り付いている幼馴染がいつの間にか近くまで来ていた。「咲良」というのは私の名前だ。

「ああ、朱莉あかりどうしたの?」

 幼馴染の名前は「朱莉」という。明るくて優しい子だ。

「『どうしたの?』じゃないよ!そっちが先にこっちを眺めてたくせに!」

 正確には朱莉ではなく朱莉に取り付いていた霊を見ていたのだが…とりあえず謝っておこう。

「ごめんごめん!ちょっとボーッとしててさ」

「まあ、話しかけた理由はもう一つあるんだけどね」

「え?」


👻👻👻


 今日の朝、学校で朱莉に話しかけられたが話しかけられた理由を聞く前にチャイムが鳴ってしまい、話の続きは昼休憩へと持ち越しになった。

「それで?話しかけた理由って?」

「ああ、それなんだけどね。実は、肩が重くて…肩こりとかそういうのじゃないの、なにかが肩の上に手をかけているような…」

 そのとおりだ。いま朱莉が行ったとおりおばけは明かりの肩に手をかけてぶら下がっている。

「朱莉の家って、代々長男が神主になってその奥さんが巫女になる神社でしょ?」

 正確に言うと少し違うが、そのとおりである。うちは神社、お母さんは巫女、お父さんは神主だった。私は一人っ子だから私は成人したら巫女になり、私の夫が神主になる。なのにどうして両親が私の霊感の話を信じないかは私も知らない

「いやまあそうなんだけどね、ふたりとも霊とか信じてないんだよ。」

「そっか…」

 その時の朱莉の顔を見て私は決断した。懐からナイフを出し朱莉の後ろに立つ。

「朱莉、覚悟は良いよね?」

「え…?」

 私はナイフを振り下ろした。

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