自称親友が俺の幼馴染を寝取ったと煽って来たけど、そもそも好きじゃないからNTRは成立しない件
無尾猫
幼馴染=幼い頃から仲の良い友人、あるいは物心ついた時からの顔馴染み
「悪いな
ある日の昼休み。
購買から昼飯のパンとジュースを買って教室に戻ろうとしてたら、教室前の廊下で自称俺の親友の
「お前が悪いんだぜ?こんなかわいい子を放って置くからよ~」
茶髪に染めた三嶋は嫌味たらしい口調で喋り続け、ハルカはセミロングボブの頭を下げたまま顔を赤らめてた。
どうやら嘘や冗談では無さそうだ。
なるほど。高校二年に入ってからやっと距離感が離れて来たなー、と思ったらそういう事だったのか。
空いた時間でゲームにハマってたから気付かなかった。
「で、どんな気分だ?親友に好きな幼馴染を寝取られた気分はよ?」
三嶋は得意気に言うが、どうやら色々勘違いしてる様だ。
このまま煽られるのも癪なので、訂正するとしよう。
「お前、何を勘違いしているんだ?」
「は?」
俺の言葉が予想外だったのか、三嶋はぽかんとなって聞き返した。
「そもそも、お前は俺の友達ではあったが親友じゃない。お前が勝手に自称してただけだ。それと、ハル……上坂とは交際してもいなければ、好きでもない。ただ付き合いが長いだけの
「え?」
説明すると、上坂までも唖然として俺を見返した。
呼び方を変えたのは、まあ下の名前で呼び続けたらいい顔しないだろうと思っての配慮だ。
「はっ、負け惜しみか?今更何言っても響かないな~」
三嶋はまたも勘違いして俺を見下して来る。もう相手するのも面倒だな。
「そう思うなら勝手に思え。ただ、今回お前が俺への悪意を持って上坂を口説いたのはよく分かったから、今から絶交な。もう話しかけて来るなよ。……どけ」
言い切って、俺は答えを待たないまま二人の横を通り抜けて教室へ戻って行った。
「おい、長岡!さっき三嶋と上坂さんが付き合ってるって聞いたんだけど!」
二年のクラス教室に入ってすぐ、クラスメイトの友達が慌てた様子で話しかけて来た。
「らしいな」
「らしいなって、お前悔しくは無いのかよ?!」
「ふぅ……、まあ聞け」
このまま放って置いたらおかしな勘違いが出回り兼ねないと思った俺は、その友達と一緒に席に座る。
上坂と三嶋の交際はさっき聞いて、そもそも上坂は恋愛的な感情が無いただの友達だから誰と付き合うかは気にしないが、三嶋は俺への悪意を持って上坂を口説いた様子だったので絶交を宣言したとクラスメイトに説明した。
「マジか……マジかよ……」
友達は何が信じられないのか同じ言葉を繰り返した。
「三嶋はまあクズだったと片づけるとして、上坂さんは一年の頃から分かりやすくお前にベタベタしてたじゃん」
「なまじ付き合いが長かったから距離感が狂ってたんだろ。まあ向こうも彼氏が出来たんだしこれで落ち着くんじゃないか?」
そこまで言って、俺は買って来たパンの袋を空けて昼飯を食べ始める。
そろそろ昼休みの時間がやばいんだ。
「……本当に上坂さんの一方通行で、それを乗り換えたのかよ」
俺の様子を見て友達はやっと俺の言葉を信じて、その上で信じられないといった顔で呟いた。
その傍ら、他のクラスメイトたちが俺たちの話を盗み聞きして色々噂し始めるのが見えたが、特に気にしなかった。
放課後になって帰り支度をする。
高校一年までは毎日上坂が俺に時間を合わせて一緒に帰ってたが、高校二年になってからはそれも途絶えてた。
思えばその頃から三嶋と仲良くなってたんだろう。
「長岡君、帰り道一緒にいい?」
声を掛けられ顔を回すと、長い髪のクラスメイト
「いいよ」
そのまま俺は高山さんと一緒に家路に就く。
俺は徒歩で、高山さんは電車通学なので途中で別れるが、ちょっとした話をする分には問題ない。
「実は昨日、やっとゲームのメインストーリーをクリアしたの。よかったら通信で図鑑完成を手伝ってくれない?」
そして出たのはゲームの話。
高山さんとは、俺が上坂から解放されて空いた時間でやり込むゲームを探してた所、高山さんもゲームが趣味だったのでよく話したり協力マルチで遊ぶ様になったのだ。
「分かった、後でレインする?」
「うん、いつも通りにね」
そして俺の家と駅の方向が分かれる所で解散し、俺はそのまま家に帰る。
途中でイチャつきながら歩く上坂と三嶋を見かけたが、仲良くやってるな~くらいの感想でスルーした。
高校の知り合いたちからすれば俺と上坂は両片思いに見えた様だが、俺は上坂を付き合いの長い友達としか思ってなかったし、上坂も上坂で距離感が近い期間が長かったから勘違いしてたんだろう。
そもそも幼馴染が両想いとかフィクションの話なのだ。
家に着いた俺は母さんにただいまを告げて、軽くシャワーだけ浴びてから部屋着に着替え、部屋でチャットアプリのレインを起動した。
『今準備出来た。通信ついでに協力マルチも回る?』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「勝った……」
電車に揺られながら私、高山ユリはほくそ笑んだ。
私は入学してすぐ、クラスメイトでちょっとしたイケメンの長岡君を狙っていたが、同じくクラスメイトだった上坂ハルミに邪魔をされていた。
上坂さんはクラスで上位に入るくらいに可愛い子で、クラスメイトと話す時には毎回、
「私とゆいとは幼稚園の頃から一緒でラブラブなのよ!」
と、十に九の頻度で惚気てたのだ。
好き好きアピールはいつも上坂さんからだったが長岡君も拒絶しなくて、お互い釣り合うカップルに見えた。
なので、その分かりやすい牽制に私を含む多くの女子が長岡君と上坂さんが友達以上で恋人未満な距離感の両想いだと勘違いして長岡君を諦めていた。
ところが二年になって長岡君とは同じクラスのままだったのに上坂さんだけ別のクラスになると、上坂さんが長岡君に纏わりつくのがピタリと止んだ。
私はこれをチャンスだと思い、まずはゲームという共通の趣味を持つ友達として長岡君と距離を詰めた。
今時、二人きりにならなくてもお互い自分の家で通話しながら一緒にゲームが出来る。
友達の距離感のままで仲良く出来るのだ。
「ハルは本気でやり込むゲームが苦手で、いつも他の事で遊んで欲しいとせがんだから、落ち着いてゲームも出来なかったし、他の友達と遊ぶ時間も無かったから、こうして友達とゲームするのは嬉しいな」
どうやら上坂さんの牽制は女子だけでなく男子にまで及んでたらしい。
そのおかげでゲーム友達作戦の効果はてき面で、長岡君は私というゲーム友達が出来た事を喜んでいた。
そしてつい前の週末。
買い物で街中を歩いていたら、上坂さんが三嶋という男子と腕を組んで歩くのを見かけた。
どう見てもデートだった。
「一体どういう事?あんた長岡君と三嶋で二股してる訳!?」
私は月曜の学校ですぐ上坂さんを空き教室に連れ出し、どういう事か、長岡君や三嶋との関係は何なのかを問い詰めた。
「違うよぉ……、私は大吾君とだけ付き合ってるもん……」
責められたと思ったのか、上坂さんは鳴き声で答える。
二年になってすぐ、長岡君の親友だと言う一年から連続で同じクラスだった三嶋が、長岡君との関係で相談に乗ると言って放課後の教室で二人きりで話し合った事。
その際、三嶋が不意打ちで上坂さんのファーストキスを奪ったと。
その日は驚いたまま逃げ帰り、次の日にこっそり呼び出して泣きながら文句を言ったら、謝罪といってファミレスやスイーツ店に連れ回されたと。
ファーストキスを他の男に奪われた事を長岡君にバレたくない気持ちから、長岡君には内緒で謝罪とは名ばかりのデートに何度も連れ回され口説かれたと。
それを繰り返す間に、いつまでも告白して来ない長岡君より、積極的にアプローチして来る三嶋の方に気持ちが頷き、付き合う様になったと。
上坂さんはぽろぽろと三嶋と交際に至った経緯を自白した。
つまり、まとめると、
こいつは私たちをさんざん牽制しておいて、本当のところ長岡君はキープ扱いで、結局は他の男に乗り換えたクソアマという事だった。
一瞬ブチ切れて髪の毛を引き千切ってやろうかと思ったが、深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
上坂……への怒りを鎮めると、残ったのは失望と軽蔑だけ。もうどうでもいい。
「そう。じゃああんたは三嶋とよろしくやっていればいいわ」
私は自分でも驚く低い声でそれだけを言って、上坂と別れた。
変に心変わりをされたら藪蛇でしかないので、あえて長岡君の名前は出さなかった。
上坂の乗り換えはいずれ皆に知られるだろうが、現在完全フリーな長岡君に一番近づいているのはゲーム友達として仲が良い私。
つまり長岡君と付き合える勝率が高いのも私だ。幼馴染の立場に胡座をかいてから乗り換える様な女などでは無い。
所詮、幼馴染など勝ちフラグにもならない踏み台なのだ。
「夏休みが始まる前までは決めないとね」
家に着いて準備を済ませた私は、勝利への確信に鼻歌混じりにレインを起動する。
『私も今準備出来たよ。マルチオッケー!』
今日も私は長岡君の好感度上げに勤しんだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれからしばらく、三嶋が上坂と仲良くやってる自撮りを送って煽って来たので、ブロックした。
そうすると今度は上坂のアドレスを使って送って来たので、上坂もブロックした。
それでも三嶋は懲りずに学校で直接煽って来たから、放課後に人気のない帰り道で襲撃して絞めてやったらやっと大人しくなってくれた。
昔から上坂の事で嫉妬されて絡まれる事も多かったから、喧嘩にはそれなりに自信があるのだ。
そうして三嶋とハッキリ絶交し、期末テストも好成績で終わり夏休みが目前となった放課後の帰り道。
「ねえ長岡君。私、あなたの事が好きよ。私たち、付き合わない?」
いつもの様に高山さんと一緒に歩いてると、突然高山さんから告白された。
告白を聞いて、俺は高山さんとの関係を振り返る。
最初はネットで一緒にゲームをするだけの仲だったが、今はネットでゲームするだけで無く、一緒にゲームを買って帰り道に飯を食べたり、テスト前には一緒に勉強したり、夏休みには一緒にゲームのイベントに行く約束もした。
同性ならともかく、異性の友達としてはかなり近い距離だ。
高山さんは上坂みたいに幼馴染だからと気持ちを勘違いしてる訳でもないだろうし、俺も高山さんと一緒にいるのは楽しいと思ってた。
「俺も高山さんの事が好きなんだ。付き合おう」
「嬉しいな」
俺の答えに高山さんが笑ってくれて、どちらから言うまでも無く一緒に手を繋いだ。
そうして夏休みは高山さん……もといユリと一緒にデートして遊んだり、夏休みの宿題をしたり、進学先を決めて勉強するなど、とても充実した物になった。
ところが二学期の始業式が三日前の日。突然上坂が家に訪れて来た。
今、家には俺しかいないので、俺が出迎えた。
「ゆいと、久しぶり」
そういえば夏休みになってから一度も上坂の顔を見てなかったな。
一か月も経って無いのに、こんな顔だったなって思うくらい久しぶりな感じだった。
それだけユリとの時間が充実してたんだろう。
「おう、どうした?」
「ちょっと話があるけど、入れて貰える?」
「……いいけど」
俺は上坂を居間に案内しながら、浮気と誤解されないようにレインでユリにメッセージを送っておく。
「部屋には入れてくれないの?」
昔はいつも俺の部屋で遊んでたからか、上坂はそういう事を言う。
「もうそんな仲じゃないだろ。三嶋に浮気だと思われるぞ」
俺は適当に入れたコーヒーを出しながら答えた。
「だい……三嶋君とは一昨日別れたよ」
「そうか?」
「うん、あのね……」
生返事で聞き返すと、上坂は今までの三嶋との事を聞いてもいないのに喋り出す。
まあ、他に話題も無いし構わないけど。
上坂は夏休みになってから毎日のように三嶋とデートし、出掛けない日は家デートで遊んでたが、最近になって性交渉で三嶋がゴムを付けるのを拒否し始め、一昨日ついに無理やりゴム無しでやられてしまい、それが原因で喧嘩別れしたと。
あいつも猿だなー
話を聞いた感想としては、三嶋に呆れるだけだった。
「それでね?もう彼氏とかいないから、昔みたいに仲良くしない?それと……こんな事を言って悪いけど、夏休みの宿題を見せて欲しいの。その……全然出来てなくて……」
上坂は恥ずかしそうにどもる。
大方、三嶋と遊ぶのに夢中で宿題に手を付けられなかったんだろう。
「宿題は後でコピーを貸すけど、昔みたいに仲良くするのは無理」
「えっ?どうして?」
「だって、今度は俺に彼女が出来たからな」
意外そうに聞く上坂に、俺はありのままの理由を答えた。
ブロックはしてたけど、三嶋はともかく上坂とまで絶交した訳ではないから、宿題くらいは見せてやれる。
恋人と別れたから、異性の友達と距離感を戻そうとするのも分かる。
ただ今度は俺に恋人がいるから昔みたいには無理なのだ。
だって、昔みたいな距離感だと絶対浮気判定に入るからな。
「こい……びと……?誰と?」
上坂は信じられなさそうに聞き返す。
「一年から同じクラスだったユ……高山さんと」
さすがに上坂相手にユリを下の名前で呼ぶのもアレだったので苗字で呼んだ。
「高山さん?どうして……?」
「どうしてって、好きだからに決まってるだろ」
「私には好きって言ってくれなかったじゃない!」
上坂が急に声を荒げた。
三嶋と別れたばかりで情緒不安定か?
「言っただろ?お前は恋愛的には好きじゃないって」
「……本当だったの?」
何だ、まだ強がりだったと思ってたのか。
「今更どう思おうが勝手だが、とにかく俺は今高山さんと付き合ってるから、昔みたいに仲良くは出来ない。友達でいるのは構わないけど、適切な距離感を保とう」
「いやよ!私が先に!昔から!ゆいとの事好きだったもん!」
上坂の口からちょっと信じられない言葉が出て来た。
「俺が好きだった?俺より後で知り合った三嶋と先に付き合ったんだろ?」
本当に信じられなかったので、確かめる為に尋ねる。
そもそもこれまで仲良しアピールはされてたが、異性として好きだとハッキリ言われた事は無かったのだ。
だから上坂は昔からの距離感を勘違いしてるんだと思った。
上坂は何故か涙目になった。
「だって……、ゆいとが私の事好きって言ってくれないのに、大吾君は好きって言ってくれたから!」
「まあ、俺は好きじゃなかったからな。……だから好きって言ってくれる三嶋に心変わりするのも当然と言えば当然か」
自分で言って自分で納得した。
三嶋の奴は俺から上坂を寝取ったとか煽って来たが、そもそも俺の気持ちが上坂に向かなかった以上寝取られは成立しないし、上坂の心変わりも当然の帰結だったんだろう。
俺が思ったままをつい口にした事を聞いて、上坂の顔が曇った。
「私……ずっと待ってたのに、待ってる間にだい……三嶋君に初めてだって奪われてしまったのに!」
「待ちぼうけになる前に、三嶋とでも付き合えてよかったじゃないか」
俺は自分から告白するつもりは微塵もなかったが、もしも上坂が告白して来たら俺は断ったら気まずくなるだろうと思って受け入れたかも知れなかった。が、もう過ぎた話。
上坂は報われない待ちを選び、そこを三嶋につけ込まれて心変わりした。
さすがに今更好きと言われてもユリという恋人もいるし、昔から知り合ってた女の子の初めての経験は後から出て来た他の男で自分はその次だとか、独占欲も真っ盛りな思春期男子としてはちょっと受け入れられない。
結果を見て言えば、俺と上坂はそういう関係になる縁じゃなかったという事だろう。
「まあ、三嶋と付き合えたって事は、別に俺じゃなければダメだったという訳でも無いだろうから、次はもっとまともな男と付き合えればいいな。宿題のコビーは後で届けるから、取りあえず帰れ」
とは言っても自分では帰らなさそうな様子だから、俺は上坂を無理やり起き上がらせようとした。
しかし上坂は激しく抵抗した。
「いや!ゆいとに好きって言ってくれるまで帰らない!」
お前……そういうところだぞ
「お邪魔しまーす!あ!この泥棒猫!やっぱりまだいたわね!」
その時、ユリが家に入って来た。俺のレインメッセージ見て来たんだろうか。
鍵は……そう言えば上坂を上げた時に鍵を閉めた覚えが無いな。ユリが家に来るのも慣れたからいいけど。
「ユリ、いい所に来てくれた。上坂を追い出すのを手伝ってくれ」
「オッケー。ほら、起きなさいこの泥棒猫!」
ユリはすぐ俺とは反対側から上坂を持ち上げようとする。
こういう時に浮気だと疑わずに協力してくれる所、ユリは本当にいい彼女だと思う。
「いやよ!ねえゆいと、何で高山さんだけ名前で呼ぶの!?私の事もハルミって呼んで!」
しかし上坂は抵抗し続けた。
ハルミって……ああ、上坂の下の名前か。
呼ぶ時はハルって呼んでて、いつからかド忘れしてハルカだと思ってたわ。
でもユリは恋人で上坂は
「それに泥棒猫はあんたの方じゃない!私から寝取ったゆいとを返して!!」
「寝取ったって何よ!あんたが先に乗り換えたじゃない!」
それはそう
もしかして俺、キープ扱いされてたのか?
「この……!」
「やめろって」
怒りが我慢のラインを越えたのか上坂がユリに殴りかかろうとしたので、俺は上坂の拳がユリに届く前に、上坂を後ろから羽交い絞めにして押さえつけた。
これはそろそろ手に負えないな。
「ユリ、もう警察呼んで!ここまで来たらもう近所迷惑とかいいから」
「分かった!」
結局俺が上坂を抑えてる間にユリがお巡りさんをコールした。
連鎖して上坂んちのおじさんとおばさんもコールされて大騒ぎになったが、最終的に上坂はお巡りさんとおじさん、おばさんに連れ出された。
それから夕方になって帰って来た俺の両親を含め、長岡家と上坂家(娘さん抜き)の話し合いが行われ、おじさん、おばさんは謝りながら上坂が俺たちに接近しない様に躾ける事を約束した。
そう言えば、宿題のコピーを用意出来なかったな。
まあ、あんな事があった後だし渡さなくてもいいか。
夏休みが明けて二学期の途中。
本当に厳しく躾けられたのか、上坂が接触して来る事は無かった。……がその上坂の噂で学校が大騒ぎになった。
俺とは関わり合いの無い事だが、上坂が妊娠したらしい。
どうやら三嶋とヤった時の避妊を失敗したとか。
何やってんだ……
俺はただあの二人に呆れてしまった。
多分喧嘩別れした原因だったいうあれだな。ピル飲まなかったんか。
その続きは親ネットワーク経由で聞いた。
上坂の両親と三嶋の両親が顔を揃えて話し合いをしたが、誰が悪いかで荒れたとか。
最後には三嶋が避妊を拒否して無理やり上坂との性交渉に及んだという最大の原因が暴かれた事で形勢が頷き、三嶋家が上坂家に慰謝料を支払って子供はおろす事で決着したそうだ。
この話は学校にも伝わり、不純異性交遊の処罰として三嶋は退学、上坂は留年も危ぶまれるくらいの長期停学になり、気まずくなったからか上坂もそのまま転校した。
三嶋は《寝取り孕ませクズ野郎》と、上坂は《イケメンをキープしてから乗り換えて妊娠したゆる股ビッチ》という悪評が出回ったから、逃げる気持ちも分からなくは無い。
いや、寝取られじゃ無いつってんだろうが。
どうしても周りにはそう映るらしい。
上坂にキープされてたからか?
今はユリと付き合ってるからもういいけどよ。
ともかく、今後俺から上坂に連絡するのも気まずいので、もう関わる事も無いだろう。
幼馴染と呼ばれる程に長かった上坂との付き合いもこれで終わりかと思うと、少しだけ虚しく感じた。
切れる時は一瞬なのは幼馴染も普通の友達も変わらないんだな。
あと、婚前交渉の避妊はしっかりするべきだと、上坂と三嶋はいい反面教師になってくれた。
それからずっと先の話。
俺とユリは無事高校を卒業し、同じ大学に進学し、大学を卒業した後はお互いに無事就職した。
上坂と三嶋はどうしてるかマジでわからんし、今更調べるつもりも無い。
ユリとは大学生の時に一度、社会人の時に一度ずつ喧嘩別れした事もあったが、喧嘩の理由がゲームアイテムの取り合いとか下らない物だったので結局はすぐ仲直りして元鞘。
同棲を経てお互い収入が安定してから結婚し、子供も生まれた。
ある日。
「おじさん!コナツは大きくなったらユウキくんと結婚しますので、よろしくお願いします!」
息子のユウキと一緒に家に来た、幼稚園の友達である右川さんちのコナツちゃんがそう言って来た。
その隣にいるユウキは真っ赤な顔で照れている。
「そうか。なれるといいな」
俺は笑顔を作りながら、空世辞で答えた。
「そうだね~」
妻のユリも笑顔で相槌を打つが、こっちも空世辞だと見て取れた。
さすがに子供たちは気付かないが。
この子たちが幼馴染になって結ばれるとか期待していないが、子供の時に「パパと結婚する」みたいな絵空事を言うくらいは自由だろうと思う。
その時になって、俺の両親も子供の頃の上坂と似たような会話をしてたと思い出したのだった。
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