第36話 閑話:勇者候補たち 

* 閑話:勇者候補たち


あいつ、本当に脱走しやがったぜ〜 打ち合わせなんか要らなかったじゃないか。まさか、あそこで「助けてくれ〜」なんて声を聞くなんてな。そんなの聞いたら、俺は駆けつけるよ、勇者だし〜

他の2人も、それに教会の連中まで俺を追いかけてきてたから、あのスキを見て逃げたんだろう? でも、よく逃げれたよな。あの後すぐ、教会総動員で、かなり探しまくっていたんだよ。まあ、おそらく王都にはもう居ないだろ?

呪いがどうのこうの、っていつも言ってたけど、あいつこそ、何か?呪われてるんじゃないのか? 

まあ、これで今では俺のレベルが一番! 良い気分だ、って思っていたのに・・・ミドリの代わりに、って教会魔道士の女が俺達のチームに入ってきたんだけど、レベル60だってよ! ちくしょ〜また負けてる?のか?

俺が一番でいられたのに〜 

でも頑張って訓練してんだけど、あまり上がってこないんだよな・・・俺、今58。


しかも、こいつこの教会魔道士、何か違うんだよな〜 気持ちが合わないというか、なんというか、チームメンバーじゃなくて、やっぱ!俺達の監視役なんだろうな?

俺達のこと、いきなりやってきて、「あんたたち!」呼ばわりなんだぜ。参ったね。しかも、魔法が強力だからな〜歯向かうことさえできない。レベルはミドリと同じくらいなんだけど、きっと、あの、付けている腕輪や魔道士の杖が魔法を強化しているんだろう、と思っている。



ミドリさん居なくなっちゃいました。女子二人だったのに〜 

ミク、現在57レベル。


へへへ、もうそろそろヒロさんを抜けるぜ〜、俺タロ、レベルは現在57。

ミドリさん、美人さんだったよな〜、居なくなったけど。

でも、代わりに俺達勇者チームの中に、教会魔道士から選出された女性が入ってくれたんだよ。この人も美人さんだ〜 ちょっと冷たい感じ、クールビューティ? 俺なんか相手にされないだろうけど、まあ、近くに居てくれると良いな〜

変な?夢をみるんだよな〜。そういえば、最初に召喚された時って10人以上いたよな?他のみんなはどこにいるんだ? 居たよな〜 



私は、キャビン、教会魔道士の端くれ、まだ22歳よ。

何でも、召喚勇者候補者たちのお目付け役?を仰せつかったけど、何?この弱さ!これで、本当に勇者になれるの?

ヒロは、まだ、聖剣召喚もできないし、勇者魔法どころか、他の魔法効果も弱いし・・

単純、盲信? 聖剣も使えないなら勇者失格よね? しかも剣術では、タロくんの方が勝っているし・・・


ミク、聖女候補? 確かに回復のスキルは大したものだけど、まだ、全然使いこなせていない。きっと、こっちを鍛えたほうが、ヒロよりはレベルが上がっていくんじゃないかしら?

タロ君は、まあ、普通の剣士? でも、あれ、きっと私の魅力にクタクタよね?

私を見つめる目が違うわ。勇者候補のお給料っていくらくらいかしら? 今度、いろいろねだってみよう!



今日は、俺達、教会から出て、馬車で、東の山に向かっている。オークでも狩ってこい!って暗黙の指示だな、まあ、食材確保ってことこか。

今の俺達にとっちゃ、オークなんぞ敵じゃないし、まあ、良いけどね。

それにしても、乗り心地の悪い馬車だよ、サスペンション?そんなもの無いし、座席のクッションシートも無いしな〜

身体強化して走ったほうが楽かもしれないな、ってキャビンさんに言ったら、

「あんた、走って向こうに着いて、すぐに動けるの?」って言われた。確かに、でも・・・ちょっとくらいは休み、あるんだろ? 

「敵は、待ってはくれないのよ? 解ってる? 生きるか死ぬか?なんだからね!」

はい、そうですね〜 ご尤もです。「すみません・・・」


キャビンから説明があった。

「今、向かっているのは、オークの目撃情報が教会に入ったもので、まだ、冒険者ギルドには情報がいっていませんから、我々のやりたい放題です。良いですか、気を引き締めて食材を確保しましょう!」


と、到着、確かに! いきなりオーク3体の気配がある。馬車は、危険回避の為、かなり離れていって、俺達は置き去りにされたよ。

まあ、だれがどうしようが関係ないね!やればいいんだろ? 完膚なきまで狩り尽くしてやるよ〜

「ヒロ! あんたねぇ、食材なんだからね、あまり、オークに傷をつけないでよね〜」

「はいはい、解ってますって!、なあ、タロ?」

「おう、ともよ〜」


「あれ?ミクさん? マジックバッグは?」

「あああ〜、馬車の中に置いたままでした〜」

「ああ、良いよ、俺の収納に入れてやるから・・・」


それで、浅い林を抜けて開けた場所に出た。さきほど気配を感じた3体の他にもう2体、合計5体のオークがいるな、見回りか?

と、打ち合わせも無しにヒロが飛び出していったよ、聖剣じゃなくて魔剣でもなくて、普通の鉄剣を振り回して、タロも追いかけていった。

あわてて、ミクが支援魔法を掛けているけど、届くのか? 

なんだ?こいつら、連携無しかよ〜 相変わらず、ひどいね〜

ここは、私、キャビンの力を見せておきましょう〜


空に向けて火弾を何発か打ち上げた。上空で分裂して数を増やした火弾がオークたちに降りかかる。2体は火弾が頭に当たって仕留めたけど、3体残ってしまった。

ヒロとタロの力任せの切りつけで、2体を狩ったが、最後の1対は、なかなかしぶといようだ。まあ、私が火槍を飛ばして心臓直撃! これで、終わりだ!


ヒロがオークの死体を収納に回収して馬車に向かおうとした時、林の奥から土煙が巻き上がっている。オークの集団10体以上が走って迫ってきてる。

これは・・・ヤバいね。撤退!って呼び戻すと、走って戻ってくるようだけど、一人遅れてるな、ミク、聖女候補が遅れてる。あっ転んだ・・・

あっと言う間にオークたちに取り囲まれて、気絶して尻もちを着いている。

と、向かえに戻ってきた馬車にヒロとタロが乗り込んだけど、あいつら、もうミクのことなど見てもいないな・・・・

私も、馬車に急ごう。ミク、さよなら! 私の初仕事が、コレなの?


***


嫌な気配が強くて思わず来てしまったけど、なんだ?あいつら、ひどいね〜 聖女候補様は、置き去り?で、オークたちにくれてやるのか〜

まあ、義理も感情も何も無いけど、ちょっと手出ししようか。

聖女を手元の木の枝の上に転送して回収。オークたちには気絶をかけて、まずは、魔石回収。残りの遺体を全部収納して回収、14体か。

さて、この聖女、どうしようか? 呪い、かかってるな。

とりあえず、解呪、浄化、解毒、を掛けて、催眠で眠らせて、ミヤビの屋敷まで、連れて行こう、転移。

空いている物置に入れて結界に閉じ込めておいた。


ミヤビに念話したら、飛行して遊んでいるけど、もうすぐ帰れるっていうから、「急げ!緊急案件発生!」って言ったら、あいつ、そのまま転移して戻ってきたよ、うん、良いじゃないか!?

それで、勇者候補一行の聖女候補をワケあって拉致してきた。ってまあ、詳しく話したんだけどね・・・・

なら、リンネはその娘を逃さないように見てて、って、転移していったな、まあ、バンスのところだろう?


しばらくして戻ってきて、今、馬車が向かえにくるから、もう少し眠らせておくということになったよ。

あまり深く催眠かけてもね〜 目覚めないかもしれないし・・・


ケントさんが運転する馬車が来たので、聖女候補を渡して連れて帰ってもらった。

事情は、すでにバンスさんに伝えたし、呪いも解除してあるからと言ってあるからね。しかも連中は、彼女をオークの群れの中に放置して逃げ帰った。まあ、彼女は死んだことになっているんだろうな。あとは、すべて、バンスさんに、お任せ、だよ。これも、教会案件?だよね〜 



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