転校先の学校に居る聖女様が何故か僕にだけぎこちない態度を取る理由を僕は密かに知ってしまう
ALC
第1話聖女様とのラブコメ
それが僕。
本日より父の転勤により生まれ育った街を離れて別の街へと引っ越しを果たすことになった。
学校にも通えない距離になってしまい高校生の僕を一人暮らしさせてくれるほど放任主義な親でもない。
当然のように僕も引越し先の公立校に転校することとなった。
そして現在は自己紹介の最中。
「廣木蔵馬です。高校二年生からの転入ですが皆さんと仲良くなれたら嬉しいです。よろしくおねがいします」
温かい拍手に包まれて担任の先生の指示に従い席に案内される。
「じゃあ廣木は
一つだけ空席の机に向かうと隣の清野と呼ばれる女子生徒に挨拶を交わす。
「よろしくおねがいします」
軽くお辞儀をすると席に腰掛けた。
「よろしく」
簡易的な挨拶を軽く交わすとHRは終わりに向かい転校生あるあるの時間がやってくる。
「なんで転校してきたの?」
「廣木くんは何処から来たの〜?」
「前の学校に恋人居た?」
「ってか聖女様の隣とか初日からラッキーかよ」
「ギフトカードやるから席交換してくれ」
その質問やら意味不明な願望やらに一つ一つ答えていくと気になるワードをが引っかかる。
「聖女様って何?」
それにクラスメートは答えてくれる。
「隣の席の
それに何度か頷くと一限目の予鈴が鳴り響きクラスメートは席に戻っていく。
清野も席に戻ってきて、突然の転入だったのでまだ教科書が揃っていなかった。
それなので隣の清野に見せてもらうことを決める。
「すみません。教科書がまだ揃って無くて…良かったら一緒に見せてもらってもいいですか?」
その言葉に彼女は少しだけ視線を外して席をくっつけてきた。
お互いの机の中心に教科書を広げて授業に望む。
(あれ?想像していた聖女様像と違うな…。普通に冷たいような?僕が転校生だからかな…?)
そんな事を軽く思考しながら授業を終える。
四限目までその調子が続き昼休みがやってくる。
「清野さん。食堂に案内してほしいんですけど」
「この学校に食堂はないよ。お弁当持参か登校中にコンビニとかで買うかだよ。もしかしてお昼持ってきてない?」
それを耳にして僕は絶望感を覚える。
前の学校では食堂はもちろんのこと移動販売のパン屋さんまで学校に訪れていた。
(食堂のない学校とかってあるんだ…)
その絶望感が態度に出ていたのか彼女は僕に提案をする。
「よかったら…私のお弁当…半分あげようか…?」
明らかに嫌そうに思える彼女の態度を目にして僕の心は完全に傷つく。
「いや、大丈夫。水でも飲んで腹を満たします。気を使ってくれてありがとうね…」
それだけ言い残すと彼女は廊下に向かう僕に向けてなにか言い掛けて口を噤んだ。
水道の水をたらふく飲むと廊下のベンチに腰掛ける。
昼休みには転校生に興味が失せているクラスメートに少しだけ嫌気が差したが、きっとそんなものだろうとも思える自分もいるわけで…。
イヤホンをして時間を潰し午後の授業を迎える。
午後の授業も終わり帰りのHRも過ぎていく。
清野に初日に世話になったお礼を口にして別れを告げる。
クラスメートも委員会や部活、アルバイトに向かうらしく足早にクラスを出ていった。
その波に乗っかるように僕もクラスを抜けるのだが…。
学校を抜けた辺りで忘れ物をしていることに気づく。
(やべ…。スマホを机の中に入れっぱなしだ…)
それを思い出して学校から出ていく生徒の波に逆らってクラスに戻ると…。
教室にはただ一人、清野白夢の姿があり彼女は独り言を口にしていた。
「待って…!待って…!どうしよう…!廣木くんのスマホが机に入ってる!家まで届けようかな…そうしたらそのまま家に入れてもらえたりするかな…?私とだけ特別に仲良くしてくれるかな?凄くタイプだったんだけど…!緊張しすぎて皆と話すみたいに上手く話せない…冷たくしちゃって嫌われてないかな…明日からどうしよう…」
彼女は誰も居ないと思い込んでいるらしく独り言にしては大きな声で悶ていて、僕は目の前の現実が嘘なのではないかと疑った。
このまま教室に入りスマホを受け取ることも出来る。
だが彼女が家までスマホを届けてくれたらという下心や願望もあって…。
なので僕はそのまま帰路に着く事を決める。
結果から言えば彼女は家に来なかったのだが翌日のこと。
「スマホ忘れてたよ。あと、今日はお弁当持ってきた?念の為にお弁当二つ作ってきたから良かったら食べる?それと連絡先教えてほしいな…」
転校先の聖女様のストライクゾーンに偶然入った僕の甘々でぎこちないラブコメは今日からスタートする。
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