浄化祭り!

 




『只今の戦闘経験によりレベルが17になりました』

『只今の戦闘経験により[アンデッドキラー]を修得しました』

『只今の戦闘経験により[浄化の担い手]を修得しました』

『只今の戦闘経験により[不屈]を修得しました』

『只今の戦闘経験により[背水]を修得しました』


 ほっと息を吐いたのもつかの間、立て続けにインフォが鳴り響く。

 今回は不屈と背水が技能で、のこり二つが称号っぽい。確認しようか。



◆◆◆◆◆◆◆◆

 技能:不屈

 効果:自身のHPが少なければ少ないほど、ノックバック耐性と防御力が上昇する。

 条件:一定割合以上HPが減った状況で攻撃を繰り返す

◆◆◆◆◆◆◆◆


◆◆◆◆◆◆◆◆

 技能:背水

 効果:自身のHPが少なければ少ないほど、自身の攻撃力が上昇する。反面、最大時の攻撃力が少し下降する。

 条件:一定割合以上自身のHPが減ってから、敵に大ダメージを与える

◆◆◆◆◆◆◆◆


 なるほどなるほど。攻撃をGAMANに依存している私は、自ずとダメージを与えられる状況が低いHPの時に限られる。

 結果、こういうものが生えてきたってわけね。


「えっとねー。パッシブのスキルが二つもらえたみたい。HPが減るほど強くなれる感じ」


『へぇ』

『ええやん』

『そんなのもあるんだ』

『ユキの場合はHP削りまくるから強い?』


「そうだねーー…………ん?」


 一見便利そうなスキルだけど…………待って。

 私の攻撃力って、物理が0、魔法が3。防御力も一桁だ。


「このスキル、攻撃力や防御力自体が上がるみたいなんだよねぇ……」


『ほう』

『あ』

『え』

『あーーw』

『はいここでユキ選手の攻撃力と防御力の数値を見てみましょう』

『察したw』


「この二つのスキル、ぜんっぜん意味ないんだけど!!」


『わろた』

『涙拭けよ』

『固定値上昇……無いだろうなぁ』

『どんまいw』


 かなしい。あまりにもかなしすぎる。

 ま、まぁ、仕方ない。全てを捨ててHPに振ってるんだ。こういうことは今後もちょくちょくあるだろう。


「気を取り直して、称号みてみるよー」


 ウィンドウを操作して、先ほど手に入れた称号二つを確認してみる。

 今度こそ効果ある類のものでありますように……



◆◆◆◆◆◆◆◆

 称号:アンデッドキラー

 効果:不死属性を持つ相手への与ダメージを5%増加させる

 説明:不死者を多く討伐し、その弱点を知りえたものの証

◆◆◆◆◆◆◆◆


 お、これは普通に有能なのでは。

 こういう、常時発動の系統特攻は沢山持てるに越したことは無いって話だったよね。


◆◆◆◆◆◆◆◆

 称号:浄化の担い手

 効果:[浄化]を使えるようになる

 説明:迷える魂の救済を任されしものの証

◆◆◆◆◆◆◆◆


「ほーー」


『どうやったん?』

『良さげ?』


「えーっとね。一つはアンデッドへのダメージ増加。もう一つは[浄化]ってのが使えるようになるらしい」


『ほう?』

『パッシブの特効スキルはつよい』

『有能だね』

『浄化?』

『スキルが増える物もあるんか』

『どんなん?』


「えーーっと。表示させちゃうね」



◆◆◆◆◆◆◆◆

 技能:浄化

 効果:任意の量のHPもしくはMPを利用して発動。威力がHPを上回っていた場合、対象を浄化する。

    不死属性を持っている相手に対してのみ効果があるが、一部の存在には無効化される。聖属性。

◆◆◆◆◆◆◆◆


 ふーむ? とりあえず対アンデット用の攻撃手段ってことで良いんだろうか。

 一部ってのはボスとかそういう系統で、その辺に湧いてくるアンデットなら成仏させられるって感じかな。

 HPで代用できるのは、私にとっては最高だね。


『はえーこんなのもあるのか』

『おもしろい……けど』

『これ、実用性低すぎんか』

『↑わかる』

『実質ユキ専用スキル』

『HPの暴力w』


「んー私もちょっと思ってた。だいぶ効率悪いよね?」


『せやな』

『ユキだってぶっちゃけGAMANでいいもんな』

『しかもアンデッド限定』

『用途さんどこ……?』

『まぁでもこういう技能ちょこちょこあるよ』

『↑詳しく』

『もう一つの世界がコンセプトなのもあって、ロールプレイ性能の方を重視した技能も多いってだけの話』


「あーーなるほどね。戦闘として便利ってよりも、世界を生きていく上で使うって位置付けの技能とかも多いのか」


 考えながらもコメントを眺めていると、疑問が氷解した。

 そっかそっか。この世界での聖職者の人とかがメインで使うのかな。


「ふーむ……」


 ロールプレイ用の技能、ねぇ。

 ということは使い続けることで開ける道もあるかもしれないってこと?

 それこそ、浄化を使い続けることで称号がもらえるとか!


「んーーしばらく使ってみる? 意味ある気がするんだよね」


『ありだと思う』

『なんだかんだ何かありそうだよな』

『聖騎士とか上位神官の条件に浄化数ってありそうじゃね?』

『あーー』

『あるねそれ』


「わかるー。私も同意見!」


 このゲーム内に存在し、プレイヤー達もなれると噂されている、上級職。

 それになるための条件の一つに……というのは大いに考えられる。


 それじゃあ、今日の残りの方針としてはガンガンに浄化を使うって感じで行こうかな。


「夏の浄化祭り。期間は私のHPリソースが無くなるまで。それじゃあ行ってみよーー!」


『おー』

『888』

『ごーー』


 ノリの良い視聴者さんたちと盛り上がりながら、浄化に挑戦。

 最初は、どれくらい使えばそもそも浄化できるかというところから。

 200では足りず、400では行ける。250でいけたかと思えばつぎは足りない……と色々試してみたところ、300使って浄化を使えば安定して成功することがわかった。


 同時に検証もできた。浄化に失敗すると光るだけで何も起こらず、使ったHPはそのまま無駄になってしまう。

 また、成功した場合は光に呑み込まれるようにしてそのまま消えていった。


 一体一体相手取って浄化しているつもりが気付いたら囲まれ、結局GAMANで蹴散らしたり死に戻りしかけたりすること数時間。

 そろそろ切り上げて終わろうかという矢先に、そのインフォは鳴り響いた。


『只今の戦闘経験によりレベルが18に上がりました』


「いや、そっちかい!! 嬉しいけどさ!」


『笑う』

『おめでとうって言いづらいw』

『違うそうじゃないw』

『ドンマイ』


 思わず突っ込んでしまった。くそう。浄化関連は何も無いのかな。

 うーーん! 今日は切り上げようか。そろそろ寝ないと行けないし。


「今日はもうおわろっかなーって思うよ」


『おけ』

『おつ』

『もう日付変わるもんね』


 ログアウトのため、S2エリアの方へ戻る。ゲートまで着けばログアウトできるからね。


「そうねー。あんまりリズム崩したくないし……ん。邪魔ぁ」


 あと数歩というところで、カタカタと浮かび上がってきたスケルトン。

 ほんのちょっとだけ むっとしながら、[浄化]を使う。


 ──ポーン


『条件を満たしたため、[魂の救済者]を獲得しました』


「おおおっ!?」


 来たんじゃない!?

 一気に気分が高まるのを感じながら、ボスゲートの周辺へ。

 今更だけど、この安全圏はセーフティエリアと呼ばれている。いや、前いったかな? 忘れちゃった。

 無事にログアウトが可能になったことを確認して、ウィンドウを開いた。


◆◆◆◆◆◆◆◆

 称号:魂の救済者

 効果:浄化の威力が10パーセント上昇。一部のNPCからの好感度に大幅補正。

 説明:浄化の腕に長け、数多のさまよえる者を天に導いた者への尊称。 上位の聖職者になる第一の条件とも言われている

◆◆◆◆◆◆◆◆


「来たーーー!!」


『お』

『これは?』

『来たか??』

『ワイらにも見せてもらってええ?』


「あ、ごめんね。いいよー見せちゃう!」


 ウィンドウを操作して、可視化。相も変わらず、配信している人には安心のプライベート設定だよね。

 選んだものだけ配信で映せるっていうのはとても便利。


『おおおお』

『きた!!』

『おめ』

『まさに狙い通りじゃん』

『上級職への道が見えましたね』

『早速なれるん?』


「んーそれはまだっぽい。条件が足りないのかなぁ」


『そか』

『まァまだレベル18だし』

『レベルは大事そうだよね』

『ステータス条件だったら?』

『↑それは……うん。祈ろう』


「レベルありそー。20とか30に期待かな。ステータスは……うん。祈るよ」


 コメントに指摘された可能性に、思わず苦笑い。

 ステータス条件にされたら実質詰みだけど……まぁ、そこはだいじょうぶだと信じよう!


「さてじゃあ、狙いの称号も貰えたところで。 今日は終わろうかな」


『おつー』

『楽しかった』

『明日もやるん?』

『最後に1枚下さい!』

『視聴者にサービスを』


「明日もやるよー! 多分昼以降かな。 えーっとなに? んーー」


 サービスと言われてもって感じなんだけど!

 ちょっと考える。そうだなぁ。やっぱり素直な気持ちが一番か。


 ちょいちょいとカメラに手招き。すっと顔の前まで飛んできて、私を正面から映してくれた。


「みんな今日もありがとう!良かったら明日も見てね。おやすみ!」


 感謝の気持ちも込めて、心から笑みを浮かべる。

 改まってやると、ちょっと恥ずかしいものがあるね。


 溢れるコメントに温かくなるのを感じながら、配信を終了。そのままログアウトした。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る