カナ『ゲーマーならだれでもするやろ』




『只今の戦闘経験によりレベルが13に上がりました』

『只今の戦闘経験により[カバーリング]を修得しました』

『只今の戦闘経験により[第六感]を修得しました』


『S2エリアボス初討伐報酬によりボーナスポイントが付与されます』

『S2エリアボスを全ワールドで初めて討伐した報酬によりボーナスポイントが付与されます』


 落ち着いたところで、色々と流れていたインフォを回復しながら確認する。

 まずはレベル。10だったものが一気に13になっていた。さすがボスってところかな?


[カバーリング]と[第六感]は技能っぽい。生えてきたのは久しぶりだね。


◆◆◆◆◆◆◆◆

 技能:カバーリング

 説明:半径1m以内の味方が次に攻撃を受けた時、受けるダメージを1度だけ肩代わりする。

    効果は重複しない。再使用時間30秒。

 条件:システムアシスト無しに味方への致命の一撃を一定回数連続で庇い続ける

◆◆◆◆◆◆◆◆


 ほーう。ダメージを肩代わりできるのは大きいね。

 正直なところ、範囲攻撃ってやつが来た時点で終わりだっていうのは、カナと2人で危惧していたところ。

 保険ができるのは助かる。


◆◆◆◆◆◆◆◆

 技能:第六感

 説明:直感が強化される。身を脅かす恐れのある攻撃の察知しやすさに上方補正

 条件:感覚の鋭さを垣間見せる行動をとる

◆◆◆◆◆◆◆◆


 こちらは随分と曖昧なものだ。効果も曖昧なら、条件に至ってはなかなかに謎が深い。

 感覚の鋭さ…………あれかな。スライムの奇襲に気付いた時とか。


「ん。ボーナスポイント?」


「ほら、レベルアップの時に貰えるポイントあるやろ?ボス倒したらそれ貰えるんや」


「へぇー!ボス一体につきレベル一個分か。有難いね!」


 初討伐で5P、ワールド全体での初討伐でまた5P。

 実質二レベルアップか。強い!


『こういうのって積み重ねが物を言うよね』

『エリアボス討伐ツアーが起こる』

『一エリアで必ず一レベル盛れるの強いよな』


「そうだねーー。強くなりたいならちゃんと各エリアのボス倒せってことか」


「せやなぁ。まぁそこまでガチらないにしても、ステータスは高いに越したことないから。気が向いたら倒しといた方がいいかもな」


 うんうんと頷く。第二エリアだけでも、あと三種あるもんね。

 それに、ゲームが進んだらもらえるポイントが増える可能性もあるのかな。


 あれ?そう言えば……


「フィールドボス……だっけ? あいつはポイントもらえるの?」


「ん? あーどうやったかな……結局β含めて倒されたことがなかったせいで不透明なところが多いかな」


「ふーん…………」


『なんか見えない?』

『奇遇だな』

『炎が見える』


「アハハ。負けず嫌いがでとる」


「あの猪さん、絶対私が倒すもん」


 キングボアと言ったか。あいつに完敗したのは、今も記憶に新しい。

 ……いや、昨日のことだから当たり前だけど。


「まぁユキのことやから諦めるわけないとは思っとったけど……どうする? 手伝おか?」


 含み笑いをもらしながら、そう聞いてくるカナ。

 確かに、彼女の火力があるだけでも難易度は全然違う。もう少し鍛えればすぐにでも倒せるだろう。

 でも、そうじゃないんだよね。


「もう。わかってて聞かないでよ」


「一応確認ってやつや。 ま、たしかに分かってたけどな」


 むぅ、と頬を膨らませる。

 カナの表情は、からかい半分、応援半分と言ったところか。


「キングボアは一人で倒してみせるよ。だいぶかかりそうだけどっ」


「レベルも段違いやしな。体力どのくらい要りそうなんやっけ」


「んーー……五桁あれば問題なく勝てそうって感じかなぁ」


 二千を超えていたHPで殴った時でさえ、削れたのは2割程度。

 倒しきるにはやはり一万以上は必要になってくるだろう。

 もちろん、これから手に入る技能とか次第でまた変わってくるんだろうけど。


『五桁ww』

『もはや世界がおかしい』

『目標5桁ってそういうこと?』

『ああ』


「ん? あーそれはまた別かなぁ。五桁乗せたいっていうのは、単純に桁数増やしたいなって」


「ユキと話しとると常識がぶっ壊れそうになるわ」


『わかる』

『わかるけど』

『大魔王様が言っていいセリフじゃない』


「あはは。大魔王様は言う資格ないって」


「よしそいつ処刑な」


『ぴいっ!?』

『密告いくない』

『今日だけで何人処されるんだ』


 話に花を咲かせているうちに、いつの間にか目の前にはワープポータルが展開されていた。

 さっきと違うのは、淵の色。


「今度は、緑?」


「普通の移動用が緑で、ボスフィールドに飛ぶのが赤ってところちゃうか?」


 なるほどねーと呟き、ゲートをくぐる。

 通り抜けた先は、さっきと同じ湿地帯だった。


「あ、また赤くなってるよ」


「ほほー…………」


 ここについた時と同じ、赤くふちどられたワープポータル。

 それを確認したカナの目が光った。


「なぁ、ユキ?」


「うーん……あと2時間くらいなら、いいよ?」


「センキュー!助かるわ!」


『二人の世界』

『暗号でもあるんですか』

『明らかに情報量が足りないw』

『探索続けるってこと?』


「あ、えーとね。そうじゃなくて…………よっと 」


『え』

『は?』

『入ったww』


 説明するより早いだろう。ボスのワープポータルを潜り直す。

 転移先は変わらず沼地。間もなく、カナも追って来た。


「お? なんや。今回はもう居るんか」


「ほんとだ。さっきのは初見殺しなのか、ランダムなのか」


 前方やや離れたところに、キングスライムがいる。

 レベルは15。サイズを考えても、先程と全く同じ相手と言ってよいだろう。


「とりあえず、連戦できるのは確定みたいやな」


「そうだねぇ。リポップ……っていうんだっけ。出てくる位置だけ変更があるのか、次よくみとかないと」


 流れるようにカナが炎を撃ち込むと、私はいつも通り『GAMAN』を展開。

 触手の薙ぎ払いが飛んでくるのに合わせて、二発目の火球がキングスライムの身体を焦がしていく。


「んーー。ステータスとか行動とかも特に変化はなしっぽいな」


「じゃ、問題なし?」


「寧ろ、大分短縮できるんちゃうか? 『ファイアボール』」


 カナの三発目の魔法。それは期待通りボスに大ダメージを与え、ようやくキングスライムの敵意が私から離れる。

 すぐさま『解放』してぶつけることで、ヘイトをこちらに向け直すことに成功した。


 怒りに任せた二本の触手による打撃が、襲い来る。

 非常に強力ではあるけれど、私を落とすには至らない。

 容赦なく放たれた火炎に飲み込まれたエリアボスは、そのまま姿を消した。


「はい、いっちょあがり」


「いま炎4発だった?」

 

「せやね。一回目の時かなり惜しかったから、魔力上がった今なら余裕かなって」


「なるほどねー。 それで、感想としては?」


 そう聞いてみると、カナはにやっと笑ってみせる。


「バッチリや。一周五分そこらやし、これはなかなかウマイで」


『なるほど』

『いや草』

『把握はしたが理解ができねぇ』

『どういうこと?』

『周回……?』


 カナのやりたいことに気付いたコメント欄が騒然としている。

 そう。ボスに連戦出来るなら、高速で倒せば効率良く経験値を得られるのではないか。

 カナが言いたいのは、そういったところだろう。


 実際問題、私のHPさえ回復してしまえば連戦に不安はない。

 とくに事故ることもなく、高速でキングなスライムを討伐し続けられるだろう。


「ほな、まだ行けるな?行くで!」


「目標は?」


「10!!」


「おーー!!」



『あたおか』

『10www』

『サービス2日目にエリアボス周回されるなんて想像できただろうか』

『運営は泣いていい』

 


 すぐさま回復だけを済ませると、再度ボスに挑戦。

 他にプレイヤーがいない事もあり、私たちの挑戦は迅速に、かつ円滑に繰り返された。

 相性が抜群に良いのもあって、ミスさえしなければ失敗することもない。


 哀しいかな。確かに、ほんの少し前の私たちはあいつに苦戦した。しかし、それはあくまで初見だから。

 種も全て割れてしまった今、もはや障害にはなり得ない。


 結局、キングスライムサンドバッグの会は、私が落ちるタイミングとなり解散するまで続いたのだった。







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