カラースライムの湿地帯
湿地帯を進むことしばらく。
あちらこちらに小さな池が散見されるようになり、どこか水っ気が増えてきた。
「あ! みて! なんか違うやつがいるよ!」
「ほんまや……色違いか?」
前方のに見えてきたのは、先程までのスライムより一回りほど大きいもの。
何より目立つのが、その体色。なんと、黄色に染まっている。
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:イエロースライム
LV:7
状態:平常
◆◆◆◆◆◆◆◆
「ほほう。イエロースライム……どう見ますか? プロゲーマーのカナさん」
「プロゲーマーじゃなくてプロストリーマーだって言ってるやろうに…………
えーとアレやな。上位個体ってところちゃいます? レベルもサイズもでかい」
ああそっか、なんだっけ。企業と契約しているのは同じでも、選手として大会に出る形と、あくまで配信者としてだけ所属するのとで違うんだって前に言ってたね。
「ふむふむなるほど。上位個体ですか」
「せや。スライム系は色や大きさが変わるのが常道。色に合わせた属性を持つのも多いな。今回は雷でも撃ってくるんちゃうか?」
なるほど、雷ねぇ。
魔法を使ってくるとなると、これまでみたいにカナが前に出続けるわけにもいかない……かな?
すっと、カナの前に立つ。言葉を交わすこともなく、彼女も後ろに下がった。
『すっと入れ替わったな』
『言葉はいらない』
『本当にゲーム初心者?』
『ゲーム力以前に親友力が段違いな件』
ふふふ。カナとの呼吸に感心されるのは素直に嬉しいね。
さて、相手はどうくるか。
「とりあえず……『GAMAN』」
イエロースライムを見据えて、仁王立ち。どんな攻撃でも、私は揺らぎはしない。
それに対して奴の行動は、果たして魔法だった。
ふるふると震えた流線型ボディから、黄色の球体が飛んでくる。
明らかにバチバチとしているけれど、もう使っちゃったから避けることも出来ない!
「っ……あれ?」
「ん、どした? 『ファイアボール』」
身構える私に、雷撃のボールが直撃…………したんだけど。
……あれぇ? 思ったよりも、全然痛くない。
「いや、思ってた衝撃が来なかったというか、なんというか…………あ、燃えた」
「そりゃ当たり前でしょ。あんたの体力いくつあんのよ」
釈然としない想いを伝えている内に、イエロースライムはあっさり燃え尽きていた。
体力を見てみる。 減ったのは……3パーセントってとこ?
……ああ、なるほど。
「3パーセントくらいしか減ってない」
「やろ? たかだか30分の1程度の攻撃をくらった程度で揺らいでたまるかいな」
確かに。これまで受けた攻撃、どれもそれなり以上には重かったもんね。弱いのだとこんなものか。
『おかしい』
『カラースライムの魔法、結構痛いはずでは……?』
『弱い攻撃扱いしている顔ですよこれは』
『ま、まあ単発単体だからね』
『うーーーん』
「因みに、数値としてはどのくらいやった?」
「んーと、100いかないくらい」
「ああ、ウチが受けたらワンパンやわ」
『100は普通に痛い』
『三桁が既に痛くないってなんなの?』
『カナは一撃なのかww』
『レベル1桁なのに既にもうHPに30倍の差がある親友ズ』
『極端がすぎる』
ほえー。もうそんなに差がついてたのか。
まぁ、こちとらHPに全振り。カナは聞いたわけじゃないけど多分1も振ってないだろうからね。
「ま、そういう訳やから……護ってや?」
「ふふっ。任せなさい。後ろにいてね」
どんと胸を叩いて、任せろとアピール。
大丈夫。攻撃は一本も通さないよ!
『あー尊い』
『小さい方が大きい方を背中に庇うのって、凄くロマンあるよな』
『わかる』
『わかる』
『(胸が)小さいほう』
「はいそこギルティ。神の裁きね?」
『ひぃ』
『自業自得』
『言葉、気にいってて草なんだが』
『まさかの正式採用』
『光栄すぎるw』
どうやって無礼者を処してやろうか考えている内に、前方にまた敵影がみえた。
今度は3匹。青、黄、赤の三色……って。
「信号機かいっ!!」
背中のほうから、痛烈なツッコミが飛んできた。
あはは、早いね。
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:ブルースライム
LV:7
状態:平常
◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:レッドスライム
LV:7
状態:平常
◆◆◆◆◆◆◆◆
初見の2匹は、そんな感じ。多分だけど、水担当と炎担当かな?
しっかりとカナの前に出て、スライムたちを牽制する。
「……来い。 【GAMAN】」
仁王立ち。使った瞬間に、三体の敵意が一気に向けられたのを感じた。
三色のスライムから、一斉に魔法が飛んでくる。
大丈夫。どれもまっすぐに私狙いだ。
「とっ……カナ!」
「はいよっと……【ファイアブレス】」
三つとも、確実に受け止めた。
同時に背後から火炎が放射され、青と黄色のスライムを燃やし尽くす。
「チッ! やっぱ赤は火耐性もちかい!」
「【解放】 任せて。 天罰!!」
生き残っていた赤のスライムを、光線が貫いた。
無事に倒しきれたようで、後には何も残っていない。
「やったね!」
「ナイス連携!」
三体とも支障なく処理出来たことを喜び合い、ハイタッチする。
えへへ。楽しいね。
[只今の戦闘経験によりレベルが9に上がりました]
「お、レベル上がったよ?」
「ウチもこれで7やわ」
「順調だね!」
『レベルアップおめでと』
『鮮やかだった』
『お互いが求める頃には既に動いているの凄いよね』
『ほんそれ』
「みんなもありがとー。どんどん行くよ!」
「このままエリアボスまで行くで!」
おー、と小さく右手を突き上げる。
少し歩くと、また前方にスライムが見えてきた。
今度は、黄色が2匹と、緑、青、赤の総じて5匹。
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:ウィンドスライム
LV:7
状態:平常
◆◆◆◆◆◆◆◆
「おー。けっこう多いね?」
「それがこのエリアの特徴や。気を付けんと属性スライムの波に飲まれてまう」
「なるほどー。まぁでも?」
「問題なしってな!」
即座に『GAMAN』を使用。
スライムの攻撃は直線的でしかないようで。立ち位置さえ気をつければ、問題なく私がすべての攻撃を受け持てる。
そうして出来た隙を、うちの大魔女が逃さず燃やし尽くし。
最後に残る赤いスライムは、聖属性のカウンターで消し去った。
「完璧や!」
「流石カナ!」
「ユキも抜群やで!」
「えへへー」
一切の危なげなく、五体のスライムも処理。
この分なら、このエリアは全く問題ないね。
『この二人、盤石すぎる』
『本当に2人か?』
『怖いもんないな』
『相性良いのもあるけど、凄いわ』
コメント欄の盛り上がりが、また私にさらなる元気をくれる。
これは本当に、エリアボスまで届いちゃうかもしれない。
さあ、この調子でいけるところまで行ってみようか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます