武器屋無双〜どんな武器でも作れる【武器屋】の俺、勇者パーティーを追放されたのでやけに明るい最強ヒロインとパーティー組んで無双してしまった!?
水定ゆう
1章
第1話 【武器屋】追放される
俺の名前はブキヤ・カイ。一応ここでは武器商人だ。
武器商人はあくまでも武器を売ることが仕事。
あくまでもそれが普通だ。
しかし俺は少し違う。武器を売ることがメインではなく、武器を保管することが仕事になる。そこから俺は武器倉庫やら武器商人と呼ばれるようになった経緯がある。
そんな俺は今唐突な活動の危機に迫られていた。
普通ならそう思うことのはずだ。
「追放? 俺が?」
「そうだ、君は要らない。少なくともこのパーティーに必要な枠はない」
冒険者ギルドの隅っこで、俺はパーティーのリーダーである【勇者】リオン・カレイユから宣告された。
あまりに突飛な現実に一瞬戸惑った俺だが、訳を聞く前に話を切り出された。
「どうして俺が? とか思っているんだろね。そんなの当たり前に思うことだよね。君はこの半年、僕たちのパーティーを影ながら支え続けてくれていた。本当に感謝しているよ」
「そうか。ありがとう」
「だけどね、この際本意ではないんだけど君には僕たちのパーティーから出て言って貰わないといけない理由ができたんだ」
「理由? それは今度討伐しに行く、黒竜の件だな」
「うん」
リオンは優しい。
【勇者】である前のことを少しだけ俺に話してくれたが、村一番の牛飼いだったらしい。
にもかかわらず【勇者】に選ばれてからは苦労の連続だ。
今回もどうせこの女のせいだろう。
「まあ当然の判断ですね。【勇者】であるリオン様と【聖女】であるこの私。そこに付け合わせが群がるのは仕方ありませんが、少なくとも貴方のような薄汚い男は要らないのです」
「おいおい、流石に酷いな」
俺は顔を覆った布の隙間から彼女の姿を一目見た。
いつになく捲し立てている高慢ちきな女だ。おそらくリオンはこいつに言われて仕方なく告げたのだろう。
もっと言えば俺の追放は、この女の苦悩から逃がすために判断したことだと容易に想像できた。全く、勝手に婚約者に仕立て上げられただけでなく勇者の権威を盾にされている。強欲で傲慢な女だと素直に思った。
「それに顔もろくに晒さないような奴、しかも大してこともできないような下級冒険者はわたくしたちのパーティーには要らないのですよ」
「ちょっと、マーリィ。それはあんまりじゃないの!」
「そうだぞ。カイのおかげで俺たちがどれだけ……」
「ふん。貴方達にはまだ価値がありますからね。仕方なく置いてあげていること感謝してくださいね」
「「くっ……」」
【魔女】のフレア・ソーサラーと【拳王】のバレット・サバスは苦汁を舐めさせられていた。2人もこの女には手を焼いている。
ずっと見てきたからわかるが、家柄的に仕方なく従っているだけだった。
「2人はどう思う?」
「私は居てもいいと思うわ。だけど……ねっ」
「そうだな。カイはこのパーティーの中で一番の非力。正直言って足手纏いだ」
「ほら見なさい! これでわかりましたね。貴方はこのパーティーには必要ないのよ」
誰が一番必要ないのか。この女は一番わかっていない。
本当は全員マーリィがいなくなれば上手く行っていたのにと思うはずだ。
けれど【聖女】である前に王家とも太いパイプのある家柄の人間なため下手に手出しができない。だから黙って従っていた。
「はぁ、わかった。今日限りでパーティーを抜けるよ」
「そうか。なら……」
「現金は全ておいて言って貰えるかしら。それと貴方が持っている私たちが集めた素材の全て」
「おいおい、流石にそれは……」
「黙りなさい。私に逆らうのなら……」
「くっ」
バレットは反発してくれた。
しかし奥歯を噛んでここは押し黙ると、俺は仕方ないと思い持っていたアイテムをテーブルの上に置いた。どれもこれも貴重な代物でなかなか手に入らない。
そんな中リオンから遠回しに受け取っていたフレイはアイテムを回収素振りをして、俺に袋を差し出す。
「これ、受け取って」
「フレア……」
俺は急いで巾着袋を布の中に仕舞いこむ。
ずっしりと思体感癪が指先に伝わり、俺は苦い汁を舐めた。
本当にいい仲間だった。そこからこうして突き放されるのは流石に心に来る。
だけどここに居場所はない。俺はリオンの本意ではないとわかっていながらも、その足はあいつらを避けるように冒険者ギルドの外に向かっていた。
もう関係のない話だ。だから俺は俺がしたいことをすることに決めた。
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