第59話 世界樹と邪神の関係

「ただいま。聖女オリビア様だ。」


「初めまして、オリビアです。仲良くしてくださいね。」


どうしてこうなったという顔をしてますね、エミリンさん。

はい、説明させていただきます。


「聖女様は、俺たちが今日ここを通ることを神託で知り、待っていたそうだ(昼寝しながら)。それで世界の危機を救うため俺たちに同行し、手伝ってくれるらしい。仲良くするように。」


「うちのパーティにはアトムがいるし、今更回復役は必要ないんじゃない?」


良いところをつくね。今日は冴えてるよ、エミリン。


「聖女様は戦えるのですか? お荷物になるようでしたら遠慮して頂けますか?」


何か、今日のカリンさんは言葉にトゲがあるな。


「私は中級光魔法が使えます!」


聖女様がドヤ顔で言い放った。


「アトムは上級魔法が使えたよね? それに聖魔法も使えるよね? 聖女様は?」


エミリン、聖女様が泣きそうだろ。

それ以上、攻めるな。


「あはは。聖女様は成長段階なんだ。すぐに上級魔法を覚えるさ。」


あーあ。泣いちゃったよ。

聖女なのに、私は聖女なのにって連呼してる。


「僕が教えますよ。世界樹まであと3日はかかるでしょうし、甘い物を食べて落ち着いてください。」


聖女はケーキを一口食べると目を見開き、一気に平らげた。


「お気に召したようですね。」


「これ何? 今まで食べた中で一番おいしいんだけど。どこで買ったの?」


「アトムが作った。アトムは天才。お菓子の神様。」


甘い物好きとは心が通じるらしく、すぐに仲良くなるエミリンだ。


「それにこの馬車、揺れないわね。それにもの凄く涼しい。」


「アトムが作った。アトムは天才。世界で一人の錬金術師。」


何故かドヤ顔のエミリン。

マイペースに紅茶のお替りを入れてくれるカリン。


「アトム様は、もしや隣の国でポーションを人の力で作ったという幻の錬金術師様なのですか?」


「まあ、そうですが。聖女様は僕のステータスを見たのではないのですか?」


「見れませんけど? 勘です。生まれつき勘が良いのです。私のスキルは光魔法と神託です。神託が使えるので聖女と言われて崇められているだけです。」


どうやら聖女様は苦労しているようだ。


「それから私を聖女ではなく、オリビアと呼んでいただけますか? あなた達とは仲良くなりたいのです。」


「わかった。じゃあ、オリビア。聞かせてくれるか、神託の詳細を。」


「わかったわ。」


この大陸には4本の世界樹がある。

その世界樹はお互いに通信ができ、さらに結界を張ることができる。

その結界で邪神の封印しているそうだ。

だが、西の世界樹が切り倒され封印が弱まり、さらに北の世界樹が燃やされ封印が解除されそうになった。

その影響で邪神の力が漏れ、魔物が活性化されてしまった。

森のボスのサーベルタイガーもその影響で暴れ回っていたのだろう。

西も北も新たな世界樹が育ってきているので徐々に封印が強くなり、邪神の影響も弱まるだろう。

東の世界樹はダンジョンを崩壊させたからもう大丈夫。

しかし、こうなると南の世界樹も邪神の復活を目論む何かが動いている可能性が高い。

最後の戦いになるかもしれない。

邪神が復活すれば神託通り、この世界が滅びることは避けられないと考える。

最後の戦いに備えて装備を新調しておこうと思う。


「聖女様の法衣には何か付与がされているのですか?」


「オリビアと呼んでください! 恐らく何か付与があると思います。」


ああ、忘れてた。


「オリビア、鑑定しても良い?」


「鑑定を持っているのですね。もちろん、どうぞ。私自身を確認して頂いて大丈夫ですよ。」


法衣には魔力回復(小)のみの付与しかされていなかった。

この国にとって聖女様は象徴であり、お飾りのような扱いなのかもしれない。

しかし、オリビアは良い扱いはされていないようだ。


*ステータス

 名前: オリビア

 称号: 神の言葉を聞ける者

 職業: 聖女

 性別: 女

 年齢: 17歳

 レベル: 5


 スキル

  初級光魔法、中級光魔法


 ユニークスキル

  神託、聖域サンクチュアリ【封印中】


確かに職業は聖女だ。

しかし、Lv.5ってことは魔物を全く狩ったことが無いことが予想される。

さらに光魔法もあまり使っていないだろうな。

聖女だからたくさんの人を癒していたのだろうと思っていたが、やはりお飾りのようだ。


「オリビアは魔物を狩ったことが無いよね?」


「はい。ずっと女神像の前で祈り、神託がくるのを待ってます。たまに信者の皆さまにご挨拶するために部屋を出ますが、それ以外は祈りを捧げていますね。今回は神託でアトム様に会わなければならなかったのでお部屋を出ることが許されました。」


「なるほど、それで無理やり僕たちに着いてきたと。」


「だって、帰ったらまた部屋に閉じ込められてしまうし。私をこのまま攫って頂けませんか?」


「いやいや、それは国際問題になるだろう。ハワード国に聖女を返せと戦争をしかけくるぞ。」


「でしょうね。ハワード国へ行くように神からお告げあったと嘘をつこうかしら? それともアトム様に嫁に行くの方が良いかしら? でも、神託のスキルの影響で私は嘘をつくとお腹が痛くなるのよ。」


「確かに聖女が噓つきじゃ、神託の信憑性がなくなるからな。でも、お腹が痛くなる程度の罰なんだな。アハハ。」


「笑いごとじゃありませんわよ。脂汗が出るほど痛いのですから!」


「それじゃ、装備も作りたいし、一旦我が家へ帰るか。オリビアも来るよね?」


「え? もちろん、どこでも着いて行きますけど、サウザンカローナにもお家があるのですか?」


「いや、ハワード国の王都だよ。じゃあ、行くね。」


馬車ごと我が家へ転移した。


「着いたよ。カリンはオリビアをお風呂に案内してくれ。トイレの使い方も教えてあげてね。エミリンは俺とダンジョンね。装備用の鉱石を採掘しに行く。」


前回怒られたので反省している。

まずはリビングへ向かいソフィアに挨拶だ。


「ただいま、ソフィア。何か問題はあったかい?」


「お帰りなさい、アトム君。特に問題は無いわ。そうね、お姉さまが未だにダンジョンに通っていて団員が困っていることぐらいかしら。」


「ところでソフィアもダンジョンで狩りをしているの?」


「はい。Lv.20になりました。おかげで並行思考と転写のスキルを覚えました。凄いんですよ。並行思考で今までの2倍の仕事を処理できますし、転写で手書きせずに書類を作ることができるのです。」


おお、ソフィアのドヤ顔が可愛い。


「ソフィアは戦闘系スキルは持ってなかったよね?」


「幼いころから剣を教わっておりましたので、魔物を狩ったらすぐに剣術を覚えました。」


「なるほど。Lv.20ならオークは狩れるよね? もう自衛できるかな?」


「はい。でも、もう少し強くなろうと思います。できればアトム様と一緒に狩りに行けるくらいになりたいですね。」


「あはは。そうか、でも無理しないでね。」


「何で私には話しかけてこないのよ? 私だって凄いのよ? 中級火魔法が使えるようになったんだから!」


「それは凄いね、シャナ。」


「もっと褒めても良いのよ。えへへ。」


おっと、オリビアが戻って来たようだ。


「ちょっと! ちゃんと説明してから転移しなさいよ! 何が起こったか分からず混乱して固まっているうちに服を脱がされ、身体を洗われ、風呂に投げ捨てられたじゃないの。カリンが酷いのよ。嫌われているのかしら?」


「急に嫁にくるとかいうからだよ。カリンは俺の婚約者だからね。」


「えっ? そうなの? それは謝らなきゃ。冗談でも言ってはいけなかったわね。ごめんなさい。」


「ところで、風呂はどうだった?」


「気持ち良かったわ。それにお肌はスベスベ、髪はサラサラよ。本気であなたの嫁にしてもらおうかと思っちゃったわ。あっ! また言っちゃった。ごめんなさい。」


「フフフ。それは聞き捨てならないですわね、聖女オリビア様。」


「え? あなたはどこかでお会いしたことがありますわね?」


「ハワード国第3王女ソフィア・ハワードですわ。お久しぶりですわね。」


「お久しぶりですわね、ソフィア様。って、何故此方に? ここはアトム様のお家ですわよね?」


「ウフフ。そうですよ。わたくしもアトム君の婚約者ですの。」


「え? ええええ! アトム様はいったい何者なの?」


「ちなみにエミリンも婚約者だ。」


「あなた3人も婚約者が居たのね。」


「いいえ。私も含めて5人ですよ。オリビア様も6人目を希望されているのですか?」


「えっと。私は先程会ったばかりなのでまだそこまでは考えておりませんわ。」


「では、お気持ちが固まったらご連絡くださいね。」


「先に言っておくけど、この家には第1王女と第2王女も住んでる。それにたまに王様夫婦も遊びに来るから驚かないように。これからの事なんだが、1週間ほど滞在して装備を新調する予定だから。オリビアはダンジョンでレベル上げしていてくれ。」


「私、魔物を狩ったことが無いって言ったわよね? いきなりダンジョンなんて死にに行くようなものよ?」


「うちのダンジョンは安全だから死ぬことはない。それじゃ、お子様3人を付けてやるから真面目に狩るんだぞ。カリン、マリーを呼んでくれ。」


「うちのダンジョンって何? まさかダンジョンまで持っているの? もう驚きを通り越して呆れているわよ。」


すぐにマリーがやってきて俺に抱きついてきた。


「アトム兄ちゃん、お帰り。」


「今日もマリーは可愛いね。それじゃ、マリーにお仕事だ。このお姉ちゃんにダンジョンで魔物の狩り方を教えてくれ。出来るかな?」


「もちろん、できるよ! お姉ちゃん、マリーと狩りに行くよ!」


マリーに手を引かれてダンジョンに連れていかれるオリビア。

お風呂に入ったばかりなのにと聞こえた気がした。

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