第32話 王家との食事会

今日は天気が良い。

雲一つない快晴だ。

これは部屋の中より外での食事が良いだろう。

2階のテラスに長テーブルと人数分の椅子を出した。

日が沈んだ後のことも考えライトも準備した。


「サリー様とサンドラ様もお風呂はいかがですか? 今、ソフィア様とエリザベス様も入浴中ですので。」


「それは有難い。妹が臭くないか心配していたところだ。お前、何日も風呂に入っていないだろ?」


「止めてください、お姉さま。ちゃんとメイドにクリーンをかけてもらってますよ。恥ずかしいではないですか。」


「良いから来い。皆さんに失礼のないようにお風呂を頂こう。」


「だから、臭くないですって。えっ? 臭いですか? 姉さま、お風呂に行きましょう。」


会場の方の準備も完ぺきだ。

終わったところで両親とサラ母さん、メイド一行が来た。


「王様、既にお見えになっておられたのすね。これは失礼いたしました。」


「いや、アトム君と楽しく話していたから大丈夫だ。我が家の女性陣は今お風呂を頂いておるよ。すまないね。」


「いえいえ。寛いでいただければ何よりです。アトム、準備は良いのか?」


「はい。あとは料理を並べるだけです。皆さんが揃いましたらお出しします。」


サラ母さんを隅へ呼んで王様一行が宿泊するかもしれないので部屋の準備をお願いしておいた。

するとエリザベス様とソフィア様が風呂から戻ってきた。


「お風呂、とても気持ち良かったです。今でもポカポカしてます。それにこのお肌を見てください。ツルツルですよ。髪もサラサラ、ツヤツヤです。やはり私はこちらに住むことを決意しました。」


「これからはゲートを通っていつでも来れますし、お風呂だけでも入りに来てください。エリザベス様も遠慮なくどうぞ。」


エリザベス様が私もダメかしらと目で訴えていたので。


「そうですが、定住するのと偶に訪れるのは違うのです。アトム様と親しくなりたいのです。」


「そ、そうですか。僕よりもエミリンが先だと思いますよ。」


サリー様とサンドラ様も戻られた。


「姉さま。私は本当に臭くないですよね?」


「だから何度も言っているだろう? もう臭くないと。」


「ということは、さっきまでは臭かったのですね。ショックのあまり部屋に引きこもりそうです。」


「すでに引きこもっているだろ。だからこそ臭くなったのではないか。」


「・・・。もう泣いても良いですか?」


「お二人も席に着いてください。食事にしましょう。」


「風呂上がりなので風が気持ち良いですね。」


「たまには外での食事も良いでしょ?」


「外なのに上からの矢を警戒しなくて良いのは助かるな。」


テーブルにハンバーグとスープ、ライスとパン、サラダを並べていく。

ハンバーグには目玉焼きを乗せ、デミグラスソースをたっぷりかけてある。

甘く煮たニンジン、ブロッコリー、コーン、そして皮つきポテトフライを添えた。

スープは、野菜たっぷりのコンソメスープだ。

サラダは、工房で品種改良を済ませた生野菜のサラダだ。

個人的にはライスで食べて欲しいが、王家の皆さんは初めての食材なのでパンも用意しておいた。

我が家では定番のバターロールとクロワッサンだ。


「それでは皆様いただきましょう。」


「お、お、おいしい! こんなにおいしいものを食べたことがございませんわ。」


「なんだこの旨味は。溢れる肉汁におぼれそうだ。さらに添えてある野菜もうまい。」


「このスープのコクもたまりません。野菜の旨味も感じます。」


「生野菜が苦くないよ。どうしてかしら? しかも新鮮ね。」


「この白い穀物を煮たものも噛めば噛むほど甘くなるし、肉料理にあいますわ。」


「パンの柔らかいこと。それに香りが良いですわ。」


「料理長には悪いが今まで食べてきた料理で一番うまかった。明日からいつもの料理では物足りなくなりそうで怖いのだが。」


王家の方々に気に入ってもらえたようだ。

食後のデザートにはプリンアラモードを出した。

全員満足してくれて良かった。

すると第2王女のサンドラ様が近づいてきた。


「君の魔法に興味がある。私は魔法の才能は無いが魔法が好きで研究をしている。君の魔法をたくさん見せて欲しい。しかも、君は無詠唱だね。無詠唱の原理も知りたい。ということで、この家に私の研究室を作ってくれないか?」



「何を言っているのですか、サンドラ姉さま! 私とアトム様の愛の巣に土足で踏み込もうとしないでくださいませ。」


「ソフィア。聞き捨てならないことを言ったわね。」


おい! エミリン、呼び捨ては止めなさい。


「エミリンさん。今度、南地区にあるおまんじゅうというお菓子を買いに行きましょう。とっても甘いのですよ。」


「ん? ソフィアは友達。ここに住むことを許す。」


ちょろいとソフィア様も思っただろう。


「警護のために私も住んだ方が良いと思うのだが。」


「警護は不要ですよ。」


「そうだったな・・・。」


「皆さん、またいらしてください。歓迎しますよ。」


ここで王家の皆さんの職業をまとめておこう。


王様: カール・ハワード、統率者

王妃: エリザベス・ハワード、助言者

第1王女: サリー・ハワード、魔法剣士

第2王女: サンドラ・ハワード、研究者

第3王女: ソフィア・ハワード、算術者


第2王妃: マリアン・ハワード、黒魔術師(闇魔術特化)

第1王子: ジョンソン・ハワード、拳闘士(脳筋馬鹿)


夜が更けてきたが、やはり帰る気がないようだ。

一応、食後に〆の言葉のまたいらしてくださいと言ってみたのだが空振りのようだ。

おつまみを出し、酒も出したら宴会が始まってしまった。

まるでビアガーデン状態だ。


「ビールも捨てがたいが、ウィスキーが素晴らしい。」


王様は酒好きだったらしい。

父さんと意気投合し、サリーさんも加わり盛り上がっている。

母さん同士も仲良くなっているようだ。

ソフィア様とエミリン、カリンが部屋の隅で密談を始めた。

何か怖いのだが。

するとまたサンドラ様が近づいてきて研究所を作れとせがまれる。

そこで俺が全魔法に適正があると聞いて驚いていた。

伝説の大賢者様以来ではないかと言っていた。

でも、俺は魔法職ではなく生産職なんだけどな。

サンドラ様だけ渡さないのも可哀想なので王家のみなさんと同じ指輪を差し上げた。

ちなみにサリー様はサファイア、サンドラ様はアメジストが乗っている指輪だ。


「指輪のおかげて初めて魔法が使えた。嬉しい。」


クリーンとヒールなのだが。


「何か魔法を付与しますか?」


「え? 良いの? じゃあ、転移魔法が良いわ。」


「容量オーバーで無理でした。」


「残念。じゃあ、デオドラントでお願い。」


まだ、臭いを気にしているようだ。


「デオドラントとは、どういう魔法ですか? 初めて聞きました。」


「そうなのね。あまり持っている人がいないらしいから。生活魔法の派生魔法でね、臭いを消す魔法なの。」


『デオドラントを獲得しました。生活魔法に取り込みます。』


説明を聞いただけで魔法を獲得してしまった。

サンドラ様が研究してきた魔法を教えてもらえば魔法を増やすことができそうだ。


「サンドラ様。説明聞いたら魔法を獲得したので付与しておきますね。」


「君は本当に規格外だね。」


「それと庭に研究所を建てましょう。家が爆発したら困るのでね。それから新しい魔法を僕に教えてください。」


「良かった。実は城の者からクレームが絶えなくてね。非常に居心地が悪かったんだ。研究所が建ったら教えてくれ。すぐに引っ越す。」


利害関係が成立した。

そうなるとサリー様も可哀想かな。

サンドラ様とソフィア様の護衛という名目で住ませてあげるか。

我が家は護衛などいらないくらいに安全なのだが。

いつの間にかに王家とずぶずぶの関係になっていた。


宴は夜中まで続き、王家の皆さんは予想通りお泊りとなった。

翌日、家中のトイレにデオドラントを付与した。

消臭の次は芳香も欲しいな。

サンドラ様に芳香の魔法が存在するか聞いてみようと思う。

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