第29話 個人面談

明日も来いと言われたので今日も王城にいます。

家族は昨日のパーティで疲れたと言って俺一人で控室で待っているところです。

すると昨日案内してくれた団長さんが来た。


「今日は公ではなく、プライベートで話しがしたいということだから王族の暮らすエリアに案内する。基本、王族の者以外は入れない場所だ。失礼の無いようにな。」


帰りたくなってきたのだが。

でも、ここで帰ったら失礼になるよね。

仕方ないので団長に着いていく。

王城を出て裏庭をさらに進み、別棟の入口に向かった。


「ここから先は私の侵入も許されていない。一人で向かってくれ。」


気が重い。

玄関の扉をノックすると可愛らしい声がした。


「いらっしゃいませ、アトム様。どうぞ、こちらに。」


ソフィア様に案内されてリビングへ。

そこには王様と王妃様が寛いでいた。


「よく来たな、アトム君。今日はプライベートだから堅苦しいことは無しだ。君も寛いでくれ。」


余計に寛げないのだが。


「それでだ。ここに呼んだのは君の秘密をいろいろ教えてもらいたいからなのだ。特に錬金術とはどういうものなのか教えてほしい。」


そういうことか。

後ろ盾になるにしても得体の知れない者ではどうフォローしたら良いのか分からない。

それに人目を気にしてくれてプライベートエリアに呼んでくれたんだな。

王様への信頼ポイントUP。


「そうですね。ご存知の通り、ポーションなどのアイテムを錬金術で作製できます。さらに分解、抽出、合成などの機能もございます。スキルをお見せした方が早いですかね。では、王妃様の指輪をお借りしてもよろしいですか?」


「ええ、構いませんよ。」


*鑑定

 名称: 守りの指輪

 ランク: B

 特徴: 防御力が上昇する指輪。ダンジョンドロップアイテム。

 付与: DEF+100


「それでは、この指輪の性能を追加します。今は防御力が上がる指輪ですが、私の錬金ボックスに収納し、スキルを発動すると、はい完成です。」


「こんなに早いのか。」


「え? 何の変哲もない指輪だったのに宝石が着いていますわ。キラキラして綺麗。」


ミスリルコーティングしてダイヤモンドを乗せてみました。



*鑑定

 名称: 守りの指輪(改)

 ランク: S

 特徴: 防御力が上昇する指輪。

     亜空間(各2mの立方体)に収納可能。時間経過半減。重量不感。

     状態異常に強くなる。簡易的な物の鑑定ができる。

     念話、クリーン、ヒールが使える。

     エリザベス・ハワード専用。アトム作。

 付与: DEF+100、アイテムボックス、全状態異常耐性、簡易鑑定、

     念話、クリーン、ヒール



「また呪いをかけられないように状態異常耐性を付与しました。あと、簡易鑑定もできますので指輪に魔力を込めて鑑定と唱えてみてください。」


「えっ?! ちょっと待ちなさい、アトム君。あなた、こんな国宝級、いやアーティファクト級のアイテムを簡単に作らないでちょうだい。あまりのショックに意識を失いそうになったじゃないの。せっかく助かったのに死にかけたわよ。」


「エリザベス、どういうことなんだ?」


「この指輪は防御力が上がるだけの指輪だったのよ。それが今はアイテムボックスや鑑定、念話、クリーン、ヒールが付与されているの。さらに状態異常耐性も着いているわ。しかも、呪いだけじゃないわよ。全状態異常耐性なのよ。毒も麻痺も効かないってことなの。」


「これが錬金術の付与という機能です。」


「とにかく、錬金術の凄さが分かった。ありがとう。」


呆れ気味に王様から感謝の言葉をもらった。

ついでに王様とソフィア様のアクセサリーにも同じ付与をしておいた。

ソフィア様の指輪にはダイヤモンドではなく、ルビーを乗せてみました。


「アトム様。これは婚約指輪と思っても良いですよね?」


「その指輪は元々ソフィア様のもので僕が贈ったものではありませんよ。」


相変わらず、グイグイくるな。

ソフィア様は肉食系らしい。


「そうだ。ダンジョンで拾ったものなのですが、扱いに困っているものがあるのです。献上いたしますので国宝として管理していただけませんか? そして、しかるべき者が現れた時に授けてください。」


「ああ、構わないが何かな?」


「聖剣エクスカリバーです!」


収納してあった聖剣を取り出した。


「はぁ? まさか、伝説の聖剣じゃないか!」


「そうなんです。僕も持て余していまして管理をお願いします。」


「わかった。預かろう。君には驚かされてばかりだな。喉が渇いてしまった。エリザベス、お茶を頼む。」


「ごめんなさい。うっかりしてましたわ。お茶を入れますね。」


「では、僕がお茶請けを準備します。」


皿に盛ったクッキーの盛り合わせと一人ずつにショートケーキを出した。


「アトム様。焼き菓子はわかるのですが、この果実が乗ったパン?のようなものは何ですか?」


「焼き菓子はクッキーというものです。そして、こちらはショートケーキです。甘くてフワフワで美味しいですよ。どうぞ、召し上がってください。」


「甘い! 甘いです。すっごくおいしいです。これはどちらでお買い求めになったのですか?」


「本当ね。美味しいわ。」


「えっと、僕のスキルです。料理もできるんです。」


「本当に錬金術とは万能なのだな。」


「はい。ちなみに鍛冶もできますし、裁縫もできます。私の冒険者の時の装備もこの服も自分で作りました。」


「お母様、このクッキーもおいしいですわ。って、アトム様? 今、お洋服も作れるとおっしゃいました? もしかして、昨夜のエミリンさんやカリンさんのドレスもですか?」


「そうですね。両親とジャスミンのものも私のスキルです。」


「本当にあなたには驚かされてばかりですね。でも、全て吞み込んで納得することにします。アトム様の秘密を教えて頂いたので私も正直にお伝えします。確かにあなたは国のためにも必要なお方だと思います。そのため、政治的な目論見もございます。ですが、わたくしはお母様の命の恩人でもあるあなたを純粋にお慕いしております。わたくしと婚約してください。」


「昨日、婚約に関してはお断りしたはずです。私だけでは決められない問題ですし、2人の婚約者と仲良くできることが前提です。」


「ということは、アトム様自身はわたくしをお嫌いではないということですね。お父様、お母様! わたくし、頑張ります。」


んーん。困ったな。

王族とはできるだけ関わりたくないんだけどな。

でも、ソフィア様は美人さんだし、スタイル抜群なんだよね。

年齢的にも1つ下だし、問題ないし。

悩むなあ。でも、エミリンが許さないだろうな。


「そんなに焦るでないぞ。まだソフィアは成人もしていないのだからゆっくりアトム君に気に入ってもらいなさい。」


「はい、お父様。」


「それと報酬の屋敷が決まったから後で兵士に案内してもらいなさい。先日不正を働いたものから取り上げた屋敷だが、城から近く一等地だぞ。建て直しても良いし、好きにして構わない。」


「ありがとうございます。この後、行ってみます。」


「他に欲しいものは無いか?」


「そうですね。オリハルコンの鉱石がありましたら少しだけ分けていただきたいですね。」


「確かまだ残っていたはずだから渡そう。それで良いのか?」


「はい。一度鑑定すれば後は魔力を糧に召喚できますので。」


「伝説級の鉱物もアトム君に掛かれば鉄と同等レベルなのだな。今日、いろいろと話してくれた君の秘密は公にはしないと誓おう。エリザベル、ソフィアも良いな。」


「「はい。」」


「それでは、頂いたお屋敷を見てから帰ります。」


「わたくしもご一緒してもよろしいですか? わたくしも住むことになるお家かもしれませんし。」


「急なお出かけは護衛の準備とか大変なのではないですか?」


「アトム様が守って下されば良いのでは?」


「せめて団長は連れていってくれ。」


「お父様は、私たちの恋路を邪魔するおつもりですか?」


「そういうわけではないのだが・・・。」


「何かあった時には遅いのです。護衛は着けるべきだと思います。」


「アトム様がおっしゃるなら仕方ありませんね。」


いつもの騎士団長と部下数名が護衛として着いていくことになった。

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