第18話 好きでしょ

「ごめんね~、付き添い頼んじゃってぇ~」


「私は全然いいけど……」


 鹿野ちゃんに押されてトイレまで付いてきてしまった。

 なんだかんだ気まずいんだよなー。だって、幼馴染の彼女だし。その幼馴染、私の好きな人だし。


 しかも、学校で話すことも特にないから雑談というものが出来ない。

 話す内容があるとしても南のことくらいだ。これがまた話にくい内容。

 仲良くするって言っても、どうやってライバルと仲良くするの? まぁライバルと思ってるのは私だけだと思うけど。


「いやぁ~、まさか綺海ちゃんがあそこまでペンギンが好きだとは思わなかったよー」


 私の顔を覗きながら、クスっと笑う鹿野ちゃん。


「鹿野ちゃんだって、クラゲめちゃくちゃ好きじゃん」


「まぁね~、ならお互い様だぁ」


「しかも、私の動画勝手に撮るし」


「あれは綺海ちゃんがかわいかったからつい」


「だからって勝手に撮るのは人権問題だからやめた方がいいよ~」


「綺海ちゃん硬いなぁ~、もっとフランクに行こうよぉ~」


 と、鹿野ちゃんはいきなり私に抱きついてくる。


「ちょ、何してるの⁉」


 動揺した私は、目を見開く。


「え~、女子だったらこれくらい普通じゃない~?」


「別に普通じゃないからね⁉」


 ビックリしたぁ~。いきなり抱きついてくるのは心臓に悪すぎる。

 鹿野ちゃんスキンシップ激しすぎない? 行動もちょっと謎な所あるし。


 私が変なだけなのかな? 今のJKってこんな感じなの? 私もれっきとしたJKだけどあんま関わりのない人にすることじゃないよね?

 るちだったらよく私に抱きついて胸とかも揉んでくるけど、仲がいいから出来ることであって彼氏の幼馴染にすることではないよね⁇


「綺海ちゃんは恥ずかしがり屋だなぁ」


 私から離れると、一歩離れる。


「多分普通の反応だからね?」


 はぁっとため息を吐きながら、鹿野ちゃんについて行く。

 トイレ前まで来たはいいものの、鹿野ちゃんは見向きもせずに素通りする。


「鹿野ちゃん、トイレは?」


 女子トイレを指さしながら言う私に、


「ん~、ちょっとこっち来て」


 手招きをする。

 本当に行動が謎だ。トイレに行かずにどこに行こうというのだろうか。

 不審に思い首を傾げながらも、鹿野ちゃんの後を付いて行く。

 徐々に人気のない方向に移動し、遂には全く人気のないスタッフ入口の前に到着した。


「鹿野ちゃん、どうした――」


「綺海ちゃん、南くんの事好きでしょ」


 私が口を開くと、それを止めるかの様に鹿野ちゃんは私に壁ドンしながら言う。


「……えぇ?」


 壁ドンと南の事を指摘されたことに、私の顔は一気に赤くなる。


 えぇ………えぇぇえっぇ⁉ バレてる⁉ なんで鹿野ちゃんに私が南の好きなことがバレてるわけぇぇぇ⁉ 意味わかんないんだけど! なにもボロ出してないよね出さないように注意して生活してたよね⁉


「その反応、当たりだね」


 小悪魔な笑みを浮かべながら言う鹿野ちゃん。

 もうこれは逃れようがない。

 今の反応で確実にバレたし、鹿野ちゃん自信満々に言ってるもん。


「な、なんでそれが分かったの……」


 目を逸らしながら、恐る恐る聞く。

 すると、ププッと吹き出して笑いながら、


「バレないとでも思ったの? だって綺海ちゃん南くんの前だと明らかに顔真っ赤だし行動とか言動も少しおかしいよ?」


「嘘だ、そんな事は……」


「あるある~! 多分私だけじゃなくてみんな気付いてると思うけど」


「マジか……」


 どうやらバレバレであった。


 私が原因じゃねーか! 自分では抑えてたつもりだったのに全然筒抜けだったよ⁉

 しかも一番バレたくない相手にバレてるし!


 これはマズい状況だ……どうにかしてこの場を切り抜けなければ………





「やっと綺海ちゃんと2人になれた……よし! ここからは私のターンだ!」



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