第17話 子供扱いしないでくれる!?
「ペペペンギーン」
「思った以上に多いなペンギン」
ペンギンコーナへ行くと、小さい声で呟きながら水槽に釘付けの綺海に俺は言う。
「なんか前より多くない⁉ しかもみんな可愛いし最高なんだけど‼」
俺の肩を揺さぶり、鹿野以上に興奮して目にハートを浮かべる綺海。
「お前、興奮するのはいいけど、他のお客さんに迷惑ならない程度にしろよ?」
「迷惑なんてかけてないじゃん! 私は純粋にガラスの向こう側にいるペンギンちゃんを見てるだけなんだけど?」
「ほら、よく子供とかが水槽の間ではしゃいでる時あるじゃん? それも大声でジャンプしながら」
「私をその子供だと思ってるわけ⁉」
「いやそこまで言ってないけど、おんなじ雰囲気だからさ」
「子供扱いしないでくれる? 私そこまではしゃいでないから」
「えぇ~、綺海ちゃんこんな感じだったけどぉ~?」
クスクスと笑う鹿野は、横からにょっとスマホを出してくる。
そこに写されていたのは、水槽の前でペンギンを見てはしゃぐ綺海の動画であった。
「―――――っ‼」
その動画を見た綺海は、羞恥に顔を染め金切り声を上げる。
「これのどこが子供じゃないのかなぁ~、可愛いから許せるけど~」
「ちょ、その動画消しなさいよ!」
「なんで~? これもいい思い出じゃぁ~ん!」
「私にとっては悪い思い出なの!」
と、綺海は鹿野からスマホを取り上げると、すぐさま動画を削除する。
自分のはしゃいでる動画見てそこまで恥ずかしがるか? 別に時間が経てば笑い話になるし俺が綺海をイジる材料になるから保存しておいていいと思うんだけど。
まぁ、あれだけ言い張っといて現実を突きつけられると消したくもなるか。
「あーあ、消されちゃった」
スマホを見ながらしょんぼりとする鹿野。
「また後で隠し撮りすればいいじゃん」
「それもそうだね!」
「私の目の前で堂々と盗撮宣告しないの!」
「大丈夫だ。こっそり撮るから」
「うんうん、バレないように撮るから安心していいよぉ」
「逆に安心できなくなるわ!」
シャーと俺達に威嚇してくる。
また綺海がペンギンにム夢中にのタイミングでこっそりと撮るか。釘付けになってこっちには見向きもしないだろうから。
「あ、私トイレ行きたいかも!」
そう思っていると、鹿野は辺りをキョロキョロとしながら言う。
「おー近くにあるか?」
「さっき通った場所に看板出てたから大丈夫!」
「なら早く行ってきなー」
「うん! 綺海ちゃんも一緒に行こ~」
「え? 私も?」
突然鹿野に手を掴まれた綺海は、キョトンとした顔になる。
「ほら、仲いい女子はよく一緒にトイレ行くでしょ? あと一人だとなんか寂しい」
「私達まだそこまで親しくないのでは?」
「なら仲良くなるためにも、ね!」
両手を合わせて頼む鹿野に、
「分かった。一緒に行きましょ」
渋々綺海は承諾した。
「じゃ、南くん行っててね~」
「まだこっから移動しないでね! 私ペンギン見てる途中だから!」
「お、おう」
手を引かれながらも言い残す綺海に、俺は苦笑いを浮かべながら見送る。
あれだけ写真も撮ったのにまだ見るつもりなのかあいつ。
どんだけペンギン愛に溢れてるんだよ。
「なんで鹿野ちゃんは私の動画撮るわけぇぇぇ⁉ それにトイレにまで誘ってくるしぃぃぃぃ! なんなの悪女なの⁉ なにか企んでるのかぁぁぁぁ⁉」
*企んでます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます