メリー・オア・ノット!!!? ガテン系メイドは占いかぶれなボクっ子ご主人様の専属サンタをしたくないッッ ※アドベントカレンダーなのにクリスマスは消滅したようです
Tale 8 (Dec. 18) 占いについて
Tale 8 (Dec. 18) 占いについて
いい子・わるい子占い。
「じゃあたとえば、その……人にモノを投げるとかは?」
「当たればその人がケガをするので〝わるい子〟、当たらなければ〝いい子〟です」
「占いって言うんすか、それ……なんでまたそんなしちめんどいこと……」
「わたくしめも正確な理由までは」
うめくヒタキにフリフリエプロン姿の
「タチが悪すぎるっしょ……!?」
「実際、わたくし以外の使用人はみな自主退職を」
どうりで、とヒタキは声には出さずこの広い屋敷を紅菜ひとりで切り盛りしていた理由に苦い顔をしながら胸の内でひとりごちていた。ただでさえモノにあふれていて安全に気を使う上にいつ自分狙いのモアイ像が階段を転がってくるか気が気でない職場で、たとえ時給がよくても働きたくはない――と納得しかけたところで、ヒタキは不意に自分がここまで来た経緯に気がついた。
「あれ? ……もしかして、日給三万って、危険手当も込みって意味……?」
神妙な顔で紅菜はヒタキを見つめている。否定されないことでヒタキは顔をひきつらせた。
「警告を
紅菜は気落ちしたように一度目を閉じて、またひらいた。「
「いや、まぁ……」
手をそろえて腰を折った紅菜を見て、ヒタキはお好み焼きに使っていたフォークで頬をかく真似をする。筋としてはヒタキは憤然として退職の意を叩きつけるところなのだろうが、異例なことばかり重なって自分がいまどんな気持ちなのかもわからなくなってしまっていた。しいて言えば釈然としない。あの妖精にもクリスマスにも気を使ってやるつもりは一切ないが、本当に金だけもらって帰るべきか……と、気もそぞろに意味もなく視線を横に流したところで、厨房の入り口のかげで動くものに目がとまった。
ヒタキの目の動きに向こうが先に気づいたらしく、丈の長い上着の裾がひるがえって廊下に消える。ただ、髪かかぶりものか、一瞬見えた青いリボン付きの真っ白な後頭部は、ヒタキが思っていたよりもずいぶんと小ぢんまりとして、そして低い位置にあって、それを見たヒタキの頭の隅にはピンと来るものがあった。
「紅菜さん」
自然と口角が持ちあがるのを感じながら、ヒタキは紅菜に頭をあげさせる。「ヒタキでいいっすよ。ハナガシワって呼びにくいっしょ?」
フォークを調理台に置いて丸椅子から立ちあがる。「ごっそさんでしたっ」両手を合わせたあとに片目をあけて改めて紅菜を見ると、今度ばかりは期待したとおりに右の緑も左の紫もキョトンとさせたキレイな顔があった。
「さすがに昼飯と風呂までもらっといて申しわけないんで、もちっとだけやらせてもらえないっすかね? ちょぉーっと考えもあるんすけど」
★ ★ ★
女性にしてはかと訊かれがちだが、そんじょそこらのたいして鍛えてもいない男性とでは勝負にならない。高校時代は文化祭のアームレスリング大会で武道系運動部からの並みいる参加者たちをも
使用人も体力仕事だろうがこんな真似ができたのはあとにも先にもヒタキ以外では数えるほどしかいなかっただろう。勝手口前の倉庫になぜかいたニッセは口をあんぐり開けて固まっていたし、承諾した紅菜もこの
当然だろう。いまのヒタキは全身に
「いまのは〝わるい子〟かぁ? ケガどころか痛くもねーんだが?」
天辺からつま先までガシャガシャ言わせながらヒタキはのしのしと屋根の下から地面のあるところまで出ていく。ひさしの外にひっかけた眼鏡ごしに、まだ丈の高いままの
「来いよお嬢様ァ! ヒタキチくんと占いっこしようぜぇ?」
【クリスマスまであと7話!】
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