第121話

子供たちが可愛い。

可愛くて仕方がない。


俺の執務室には子供たちの似顔絵が一面に飾られている。


これは、フェリクスとアディリアが生まれてすぐの頃、執務中にガルが鼻歌を歌いながらご機嫌で何やら書いていると思えば双子の寝顔だったんだ。

それが意外なことにとても上手かったんだよな。

それ以来ガルを我が子の専属絵師に任命した。

側近で執務もこなし、護衛騎士でもあり、絵も上手い、ガル器用すぎるだろ。



俺はエリーが子供たちに乳を与える姿を見るのが好きだ。

子供たちの顔を見ながら乳を与えるエリーは聖母のように美しい。


フェリクスとアディリアの後に生まれた双子は男の子だった。

さすが一卵性の双子だ。

2人ともエリーにそっくりなのに、髪と瞳の色は俺と同じだ。

名前はレオとリオ。

第2王子がレオ。第3王子がリオだ。


2人ともとても愛らしい顔で甘え、周りの大人たちを魅了しているが性格はゾルティーに似たのか、アランに似たのか5歳にして腹黒い面を持っている。

父様には隠していてもバレているからな。


そして1年前に生まれた娘は、髪と瞳の色はエリーと同じだが・・・顔は俺にとても似ている。

名前はヴィクトリア。


あの『とーた、とーた』と言って俺に手を伸ばしていたフェイとアディも8歳になり、家庭教師の授業のおかげと、俺たちの教育の賜物か、王族の責務と責任をよく理解しているようだ。

その合間には弟たちの面倒をよく見てくれる。


フェイは王族の自覚を持って周りをよく見ている。

優しい性格で従兄弟のウォルシュ5兄弟や、グレイとザックが未婚のまま姉妹から養子にした子供にも慕われている。


アディは・・・男3兄弟と5人の男従兄弟とグレイやザックの養子達に囲まれて育ったからな。


王女としての教育は出来ているんだ。

だが、強いんだよ。

我儘でも傲慢でもなく正義感が強いんだ。

弱いものいじめは許さない。

これは親からしたら嬉しい限りだが、やんちゃな男たちに囲まれて育ったのが原因か、元々の気質だったのか口は達者だし手が出るんだよ。



恒例の子供たちの婚約者候補や、側近候補、お友達候補を見つけるお茶会でもアディの正義感が炸裂してしまったんだ。


去年の参加はフェイとアディだけだったが、今年はレオとリオも参加したんだ。


4人とも見目はいいし、身分も王族だから異性に囲まれるのは仕方がない。

俺とゾルティーの時もそうだった。

アディも途中までは王女らしく微笑んでいたんだが・・・会場の端で仲良く2人でお茶を楽しんでいる令嬢と子息を『何しに来てるんだか』『お前ら帰れよ』とか言いながら7、8人の男女が囲んでお茶を令嬢にかけたのを見るなり、お茶をかけた子息の手を叩いたんだよ。


『あなた達とはお友達にもなりません。そんな意地悪な人達に私たちの婚約者になる資格もありません』


アディの横にいた、フェイ達も頷いていたし俺の隣にいたエリーなんて『偉いわ!アディ』なんて言っていたな。


これはまだいいんだ。

叩いたといっても手だからな。


フェイとアディが10歳の時に、アトラニア王国の王太子夫妻と、その息子の第1王子イーサン殿下11歳と、第2王子ローガン殿下9歳がこの国に訪問していた時にやっちまったんだ。


まあアディへの婚約の打診だったんだが・・・

第1王子がアディを見て真っ赤になった。

そりゃエリーにそっくりなアディだ、一目惚れされても仕方がない。


だがイーサン殿下はアディを指さして『お前が泣いて頼むなら俺の婚約者にしてやるぞ』とぬかしやがったのだ。


過去の俺もこんな感じだったのか?


アディのこめかみに青筋が立ったが、まだ微笑みは崩さなかった。


何も返事をしないアディに苛立ったのか『お前みたいなブスは俺が貰ってやるよ』とイーサン殿下が言ったのだ。


俺もエリーも次の展開が読めたが止めなかった。


イーサン殿下の頬を平手打ちしたのだ。


『私、あなたのような横暴な人って大嫌いだわ。あなたの婚約者なんてごめんよ』


涙目になったイーサン殿下を庇う者も、アディを諌める者もいなかった。


アトラニア王国の王太子夫妻も俺たち夫婦もこの話は無かったことで穏便に済ませた。


俺もエリーもイーサン殿下が不器用なことは分かったが、可愛い可愛い娘をブスと言われたんだ。


誰がそんな奴に渡すものか!


だいたい俺は国外にアディもヴィクトリアも嫁がせるつもりは無い!


相手が国内だろうが嫁に行かず、ずっと俺の側にいればいいと本気で思っている。


だがイーサン殿下はめげずに毎年我が国に視察を理由にして訪問してくるんだよな。

その度にアディに謝ろうとしているのも分かるのだが、余計なことを言ってまたアディを怒らせるんだ。

そして、頬を腫らして帰国するのが5年続いた。


ついにはアディの学園入学に合わせて、留学までしてきてしまったんだ。


本当に過去の俺を見ているようだ。


イーサン殿下も悪いヤツではないんだ。

いつも冷静なフェリクスがこっそりイーサン殿下にアドバイスしているのも知っているが、こればっかりはアディの気持ち次第だからな。


それでも俺はアディを嫁になんかやりたくないんだ!




まあ、それでも子供たちが幸せになってくれるなら相手が誰だろうがいいかな。


最愛の我が子たちが俺の手を離れても俺には愛するエリーが傍にいてくれるからな。


俺は幸せだ。


この幸せを子供たちにも知って欲しいと思う。


お前たちも幸せになれ!


父様はいつもお前たちの幸せを願っているからな!











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あと1話で完結です。

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