第110話

エリーに渡された日記はエリーとレイの前世で使われていた文字で書かれていたそうだ。

日記の内容はいつものメンバーで共有した。


これで毒の出どころと、入手経路が分かった。

さすがに20年前の事件は時効だし、悪意があってセルティ夫人に渡した訳でないことも分かった。


それにしても父上の学園時代に転生者がいたとは思いもしなかった。


それをエリーに渡したという事は、ウェン嬢もその文字が読めたのだろうか?


それに何故エリーに渡したのか・・・疑問が残る。

まさか、ウェン嬢まで転生者なのか?


「私ウェン様に会ってお話ししたいわ。感想も聞いてもらいたいの」


「わたしもエリーと一緒に会うわよ」


「それは構わないが、会うなら俺たちも監視できるあの部屋を使用するのが条件だ」


何があるか分からないからな。




「あの~今は関係ない事で申し訳ないのですが・・・ずっと気になっていた事を聞いてもいいですか?」


いつものお前らしくないがどうしたんだ?


「どうしたのザック?」


エリーもザックの様子に疑問を持ったようだ。


「聞いてもいいのかどうか・・・」


「いいわよなんでも聞いて」


「では!エリー嬢とレイ嬢は前世で何歳で何が原因で亡くなったのでしょうか?」


それは俺も知らない。

気になっても聞けなかった。

もし、エリーが前世で恋人がいただとか、結婚していただとか聞きたくなかったからだ。


先に話したのはレイだった。


「わたしは20歳になる間際19歳の時に転んで頭をぶつけたのが原因よ」


それが死因って・・・お前意外とドジだったんだな。


ブフッ・・・アランが吹き出したような気がしたが、レイのひと睨みで慌てて真剣な表情を取り繕った。


グレイとザックも肩が震えている。




「次は私ね・・・・・・私はね18歳の時に殺されたの」


エリーはなんでもない事のようにそう言った。


殺された?

驚いているのは俺だけではなかった。

アランとレイを除く全員だ。



エリーは前世の世界を簡単に説明してくれた。

エリー達の生きていた世界には、文字を打つだけで何でも調べられ、離れている相手とも顔を見ながら話せる携帯という物があったこと。

車や、電車、何百人も乗せて空を飛ぶ飛行機という乗り物。

地上何百メートルの高さの建物を作れる技術。

貴族、平民の概念がないこと。

皆平等に学ぶ場が与えられること。


スゴい、そんな世界が本当にあるのか?

そんな夢のような世界で生きていたのか?


「ここからが私の死んだ原因よ」


エリーが死んだのは同じ学校の下級生に突き飛ばされてトラックという大きな乗り物に撥ねられた事が原因らしい。


その下級生はエリーの持ち物、服装、髪型何でも真似をする女だったらしい。


気持ち悪い女だな。


「わたしも偶然その現場にいたの。エリーが殺された後のことはわたしが話すわ」



犯行の動機は、下級生の好きな奴がエリーに想いを寄せていたから。

エリーの真似をしていたのもエリーのようになれば好きな奴が振り向いてくれると信じていたから。


エリーがいなくなれば自分を見てくれると思い込んだでいたと・・・


何だそれは!

そんな勝手な理由でエリーは殺されたというのか?


18歳・・・今の俺たちと同じ歳だぞ!


馬車よりも大きくてスピードも出るトラックに撥ねられたエリーの痛みはどれ程のものだったのだろう。


「大丈夫よ、撥ねられた時に痛みは感じなかったの。だからそんな顔しなくていいのよ」


エリーが俺の頬に手を添えて笑ってくれる。

俺はどんな顔をしていたんだ?

理不尽に命を奪われた恨みはないのか?


「あの時死んじゃったからルフィに出会えたの。だから悲しんだり恨んだりしていないわ」


感謝しているぐらいよ!って言って抱きしめてくれた。


「エリーってね今も美少女だけど、前世でもすっごく可愛い子だったのよ!あれはモテるわ」


なんだと?


「エリー?本当か?」


「レイ何を言ってるの?男の子に告白なんて1度もされたことないわよ?彼氏だって1人も出来なかったのに」


レイの言葉に不思議そうな顔をして否定しているが、俺には分かったぞ!

エリーが異性からの視線に鈍いのは前世からだったのか。

よかった!エリーが鈍くて!



「脱線しましたが話を元に戻しましょうか」


そうだった。

ウェン嬢と話の場を設けるんだったな。


「さっきも言ったけど話す時に部屋には私とレイとウェン様の3人だけにして欲しいの」


「あの部屋を使うならいいが・・・ランも連れて行けよ」


レイとランがいれば大丈夫だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る