第51話
アランにプレゼントを預けて1ヶ月ほどした頃、エリーからお礼の手紙が届いた。
初めてのエリーからの手紙・・・
開ける前からわくわくする。
はやる気持ちを落ち着かせ、丁寧に手紙を開く。
ほのかに懐かしいエリーの香りがする。
中には1枚の手紙と・・・なんだ画用紙か?
『ルフラン元気に過ごしていますか?
私は元気ですよ~』
エリーらしい軽い文面に頬が緩む。
それにきれいな字だ。
『アランから聞いたと思いますが私は子犬を飼い始めました。
ルフランの瞳と同じ金色の瞳を見る度にあなたを思い出します。』
毎日俺を思い出してくれているってことだよな。
嬉しさが込み上げてくる。
俺も毎日エリーを思っているよ。
『ルフランから貰った髪留めは私のお気に入りです。とても素敵なプレゼントをありがとう』
気に入ってくれたんだな。
着けている姿を見てみたいな。
『ランにまでプレゼントをありがとう。でもね、今のランには合う首輪のサイズだけど、もう少ししたら合わなくなると思うの。だってランは大型犬なのよ?ルフランみたいに大きく育てる予定だからこのサイズより大きい首輪が必要になると思うの。』
大型犬・・・大きく育てると聞いていたが小型犬サイズしかイメージしていなかった。
でもこの文面は大型犬用の首輪を俺に催促してるんだよな?
なんだよ!この可愛い催促は!
またプレゼントできる!
『ランも日を追うごとに元気になってきて、今では走ることもできるようになったのよ。
それに食事の量も増えてきたの。いつも私の後ろをついてくるランはとっても可愛いの』
エリーが一生懸命世話をしたからだろう。
俺だって側にいたらついて行くよ。
『ルフランのように、大きく強く育てるわ』
ああ、俺も強くなるよ。
『大きいサイズの首輪をイメージしやすいように、今のランの絵を描きました。私の力作です。参考にしてね』
画用紙はランの絵だったのか。
画用紙を開いて固まった。
・・・・・・力・・作?
白い毛に金の瞳は分かった。
それにプレゼントした首輪をしている動物らしき絵が今のランだと?絶対違う!
馬?いやポニー?サイズだぞ!
なんでその背にエリーらしき人物?が乗っているんだ?
これでイメージしろと?
ははは・・・刺繍は苦手だと言っていたが、絵もダメだったんだな。
もうエリーの事なら何もかもが愛しい。
こんなに笑ったのは何時ぶりだ?
また1つエリーのことを知ることができた。
分かったよ。
エリーはポニーぐらいの大きさまで育てるつもりなんだよな。
特注サイズで首輪を注文するよ。
大型犬用とポニーサイズをな。
先に大型犬用の首輪を送ろう。
それなら2回渡せるもんな。
今度プレゼントを送る時には手紙を付けるよ。
新しい首輪をつけたランの絵も催促だ。
前と同じカードだけのプレゼントなんて味気無いよな。
エリーの上手くない絵でも俺は本当に嬉しい。
一生の宝物だ。
でも、メイドの目もある私室内にこの絵を飾ることはエリーの尊厳を損なうよな。
毎日俺だけが見れるようにそっと机の中に隠そう。
これでエリーの尊厳は守られる。
会えなくても、こんな幸せな気持ちになれるんだな。
ラン、早く大きく強くなってエリーを守ってくれよ。
幸せな気分に浸っていたのに、学園に到着した途端気分が急降下した。
毎朝、俺とゾルティーの乗る馬車が到着するとセルティ公爵令嬢が目の前に立っている。
後ろには取り巻きを引き連れて。
俺の婚約者気取りで隣を歩こうとするのも煩わしい。
この計算高い令嬢は昔から、俺に自分が選ばれるのは当然だと皆に触れ回っていたようだ。
俺とゾルティー、ゾルティーの側近候補2人の4人がまるでセルティ嬢を守っているように見えるとガルザークが言っていたな。
そう見えるように隣に並ぼうとする。
これもセルティ嬢の計算だろう。
勝手な思い込みが度が過ぎていて、気味の悪さを感じる。
俺の拒絶する態度すらセルティ嬢は別の解釈をする。『ルフラン殿下を癒せるのはわたくしだけなのです』そう言っているのをゾルティーが聞いたそうだ。
俺を癒せるのはエリーだけだ。
お前ではエリーの変わりは無理なんだよ!
俺の目から見るとセルティ嬢が何故そんなに自分に自信があるのか分からない。
同じ制服を着る学園では、セルティ嬢も普通の令嬢だ。
取り巻きといるとどれがセルティ嬢か分からない。
頭は優秀だと聞いていたが、エリーと比べると格段に落ちる。
そういえば昔から俺の婚約者にと、しつこく娘を勧めていたのはセルティ公爵だったな。
何のために王家主催でお茶会を開いていたのか親子で理解できてないのだろう。
『マイ』よりも別の意味で気持ち悪い。
あのお茶会で隠していた本性がバレてからは『マイ』も大人しくなったが、それもほとぼりが冷めるまでの演技だろう?
新学期そうそうアランを探し回っていたもんな。
ゾルティーにも側近候補たちに阻止されて近づけないんだよな。
あの女の中ではまだゲームが続いているようだ。
一年学園に通って学んだことなどあるのだろうか?
文字の読み書きは教会が教えたと聞いた。
その程度の頭で、高位貴族に嫁ぐことが無理なことすら理解していないだろう。
教会が世話をするのは学園を卒業するまでだ。
その後は自分の力で生きていかなければならない。
まあ行き着く先は娼館か、良くてどこかの貴族の妾ぐらいだな。
それもこれ以上何かをしでかさなかったらの話しだ。
自分の命が大事なら大人しくしている事だな。
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