第47話
~マイ・ツルギ視点~
もうこの世界に来て一年になるのね。
去年のこのお茶会に前の世界から転移してきたのよね。
すぐに私がヒロインだと気付いたのは良かったけれど、全然ゲーム通りの展開にはならないのよね。
学園に入学してもルフランとアランはいなかったし、すぐにガルザークとレックスとは寝たけれど今は2人とも私が誘っても断られてばっかり!
やっとルフランが出てきたと思ったら怖くて近づけないし、あと2年で攻略対象者と私のハッピーエンドを迎えることって出来るの?
まぁ、私はヒロインだからどこかで軌道修正があると思うのよね。
だからそこまで心配はしていないんだけど、今の私に攻略対象者が1人も側にいない事が面白くないんだよね。
4月からゾルティーも入学するし、このお茶会でしっかりアピールしないとね。
この世界に来て初めてドレスを着たけれど、フリルのたくさん付いたピンクのドレスはヒロインの私のために、男たちが用意してくれて本当に私によく似合っているの。
ネックレスとイヤリングも買ってくれたし、今度サービスしてあげないとね。
周りを見渡しても、私より綺麗な子も可愛い子もいないから、男たちの視線を独り占めしてるのは気分がいいわ。
女達なんて自分に魅力がないから私のことを妬んで聞こえるように陰口言ってるけれど、あんた達が何を言おうと私とはレベルが違うのよ。
似合いもしないドレスでめかしこんでゾルティーに色目を使うつもりなんでしょうけれど、お生憎様彼は私に夢中になるのよ。
一応次のターゲットも探さないとね。
私が歩き出した時、女たちの悲鳴が上がった。
なんなの?
女たちの視線の先にはアランがいた。
間違いない!
ルフランよりずっといいじゃない!
去年見た時も超絶イケメンだったけど、この一年でさらにカッコよくなってる!
他の女より先にアピールしないと!
私のドレス姿を一目見たらアランだってメロメロになるわよ!
重いドレスの前を持ってアランに向かって走っていたら慣れないヒールのせいで転びそうになった。
ラッキー!目の前はアラン!きっと私を抱き止めてくれるわ!
なのに抱き止めるどころか、避けられた?
実際転びはしなかったけれどなんで?
なんで私が避けられるの?
私お得意の上目遣いでアランを見上げると冷めた目で『僕には婚約者がいるんだ、彼女以外の女性、特に君には触れられたくないね』
そう言って去っていった。
アランに婚約者がいるですって?
ゲームのアランに婚約者なんていなかったわよ!
なんでゲームと違うのよ!
それに、私に触れられたくない?
なんで?
会うのは今日で2回目よ?
まだ話しもしていないのにヒロインの私が嫌われている?
有り得ない!
何かの間違いよ!
パニックになりそうなのを抑えて、冷静に考えたいのに私を嘲笑う声が聞こえた。
一瞬で頭に血が登った。
嘲笑った女たちに殴りかかろうとする私を男たちが止めに入るがキレてる私には関係ない。
離して!殴らないと気がおさまらない!
「何を騒いでいるんだ!」
その威圧的な声に驚いて振り向くとルフランが私を睨んでいた。
「騒ぎを起こすなら退場してもらおうか、ここは男漁りする場ではない」
怖い・・・気の所為なんかじゃない。
ルフランは私を憎んでいる。
それに男漁り?何言ってるの?
私と目が合うだけで、男の方から声をかけてくるのよ!
このままじゃ帰れない。
おとなしく席に着いても、アランから目が離せ すことができない。
あのルフランの目を見たあとでは、アランの優しそうな顔が私の心を落ち着かせてくれる。
アランと次にいつ会えるか分からないもの何とかして接触しないと。
だって、ゲームではアランはずっとヒロインに優しかったわ。
ゾルティーも気になるけど、ルフランの弟だと思うと今は近づかない方がよさそう。
隙を見てアランに近づきたいのに、ルフラン、ゾルティー、ガルザークが側にいて近づけない。
4人のイケメンが揃うと圧巻ね。
周りの女も4人に見蕩れている。
あんた達みたいなブスじゃ無理よ。
高望みし過ぎよ。
本当なら今だってヒロインの私が彼らに囲まれているはずなのに・・・
ここまでゲームの内容と違うなんておかしい!
エリザベート!
悪役令嬢のエリザベートだけが、まだ登場していない。
そうよ!
エリザベートがいないから、ルフランがあんなに怖いのよ。
何をしでかしたら学園にも通わせてもらえない程ルフランを怒らせるのよ!
悪役令嬢のエリザベートがいないせいでゲームの展開通りにいかなくてヒロインの私が困っているのよ。
アランだって、婚約者なんて本当はいないのに嘘までつかせたのもエリザベートよ。
悪魔のような腐った性根の女だもの、アランに命令したに違いないわ。
どこまでも最低の女だわ。
攻略対象者が全員登場したもの、エリザベートだって出てくるわ。
エリザベートが登場さえすれば、ゲーム通りに進むはずよ。
その時はエリザベートを嵌めてでも悪役令嬢を演じてもらうわ。
まだ、会ったこともないエリザベート。
残念だけどヒロインの私のために犠牲になってね。
どんな断罪にするか考えるだけでわくわくするわ。
早く現れてねエリザベート。
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