第22話

やはりヒロインは登場したみたい。


よかった!逃げといて!


あとはそっちで勝手にやってくれ!


私はアランとレイと楽しい学院生活を送るんだ~。


そして、今日は待ちに待った入学式だ。

朝、アランと一緒にレイを迎えに行ったの。


清楚で可憐なレイに学院の制服はとても似合っていた。

私より背が低いのに出るとこ出ているレイを僻んだりはしない!

私は成長途中なのだ!


横でアランがレイに見惚れている。

最近はアランが赤面することは少なくなったが、たまにこうなるのよね。


私だって伯父様と伯母様、それに公爵家のみんなに褒めてもらったわよ?



さて、入学式の会場に行きましょう。


学院に到着しアランが差し出した手に手を添えてレイから降りた。次に私が馬車から降りると既に注目されていた。


まあ、アラン程の美形にお目にかかることもないでしょうし、そこに第三王子の婚約者が手を引かれて降りてきたんだもんね。

そりゃ目立つよ。


でも、私を忘れないで!

この学院ではモブでも、アランのお姉ちゃんでレイの親友なんだからね!


私を挟んでアランを右にレイは左、視線が痛いが入学式が行われる会場に向かう。


新入生代表はこの国の第三王子だった。

まあ?確かに見た目はいいわね。

金髪碧眼で優しそうな顔は乙女ゲームではありがちだ。

アランの方が素敵だけどね!


なんて思っていたら、バンって扉が開いた。

「遅れて申し訳ありません」

やっぱり出たよ。ピンクの髪の女の子。このゲームのヒロインだ。


あ~イヤだイヤだ。

よくある乙女ゲームのヒロイン登場場面そのまんまだよ。


普通に考えたら、遅れたなら静かに入ってくるか、終わるまで外で待機、または先に教室で待っているだろう。



壇上で王子が目を見開いてヒロインを見つめている。


本当にここから始まるんだ。

あのふざけた名前のゲームが。


アランとレイと頷き合う。



教室まで移動する間も、チラチラとこっちを見てくる令息令嬢がいた。

しつこいが2人は目立つのだ。


この学院はA~Dクラスで成績順に分けられている。1クラス30人ほどだ。

当然私たち3人はAクラスだ。


教室に入ってからもこっちを見てコソコソ話す令嬢たちに嫌気がさす。

アランへの賛美は分かる。

彼女たちは聞こえるようにレイを蔑んでいたんだ。


「レイ大丈夫だよ。1人になんてしないから」そう言ってレイに微笑んでみせる。


一瞬教室が静かになった。アランとレイが呆れた顔で見てくる。


なんでだ?


ザワついていた教室も担任が入ってくると収まった。

担任は数学を担当している知的な印象のギャラン・パトローダ先生だ。


今日は席を決めることと、自己紹介だけで終わるそうだ。


まず今座っている席の左端から自己紹介が始まった。

「アラン・ウォルシュです。ウインティア王国からの留学生です。」


「レイチェル・ビジョップです。」


「エリザベート・ウォルシュです。アランとは双子でウインティア王国からの留学生です。」


アランの時には小さな悲鳴が、レイの時にはクスクス嘲笑う声が、私の時は無音だった。

だってモブだもんね。

そりゃ眼中にないよ。


そのまま自己紹介が進んでいくと最後の男子生徒は「ルフランです」と一言で済ませた。


家名がないのは平民だ。

また、バカにしたようにクスクス嘲笑う声が聞こえる。

顔は覚えた。

彼女たちとは仲良くなれそうにないわね。


次は席替えだ。


「席の交換はなしだ。目の悪いヤツは先に言ってこい」


意外と口の悪い先生に当たったようだ。


「それと1年間席替えはしないからな」


順番に担任の持っている箱からくじを引いていく。


ラッキー!

左端の窓際1番後ろの席だ!

前にはアラン、アランの隣はレイ。

出来すぎだろう。


私の隣の席は自己紹介でルフランと名乗った男子生徒だった。



赤い髪にルフランという名前、ウインティア王国の第一王子を思い出す。

記憶にある第一王子は私よりも背が低かったし、華奢だったな。


1度の攻略でゲームを売っちゃったから、成長した第一王子の顔も朧げだ。

彼も今頃はヒロインと出会っている頃だろうか?


今思えば彼の言動には驚いてはいたが、嫌いになるほど何かされたわけでもないんだよね。

断罪が怖くて自分の為に近付きたくなかっただけなんだ。



ルフランと名乗った彼は髪はボサボサだけど制服の上からも分かる、長身で引き締まった身体をしている。

それにスゴく姿勢がいい。

長めの前髪と分厚いメガネで目はよく分からないが鼻筋は通っているし、シャープな顎のラインは私好みだ。彼はイケメンの部類に入るのではないだろうか?


「よろしくね。エリーと呼んでくれたら嬉しいわ。仲良くしてね。」


笑顔で手を差し出して握手を求めた。


ルフラン君の肩がビックと動いた。彼が驚いたことに気づいたが何に驚いているんだ?

あ!私の怖顔か?


申し訳なくて手を引こうとした時、優しく手を包まれた。


「ル、ルフランだ。俺もルフランと呼んでくれ。エ・・エリー」


顔はメガネのせいで見えないが口の端が少し上がったのを見て笑ってくれたのだと、ホっとして微笑んだ。


彼とも仲良くなれそうだ。


そのやり取りをアランとレイが驚愕の表情で見ていることには気づかなかった。

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