第18話

お茶会から帰ってきてもアランは心ここに在らず状態だ。


伯母様もいつも冷静沈着なアランの様子を見て「安心したわ。普通に恋が出来て。アランはエリーの心配ばかりして自分のことは後回しなところがあるからね」


マジ?私アランに心配させてたの?

どんなところが?


「初恋の相手が婚約者持ちなのが可哀想ね。しかも相手は王族。」


その言葉に悲しくなった。


「可哀想なのはレイチェルちゃんも同じよ。彼女のアランを見る目は恋する乙女の目だったわ」


「アランを応援したいのに、婚約者のいる子に恋をするなんて」

アランの気持ちを思うと涙が浮かんでくる。


「まだ12歳だもの、これからも好きな子はできるわ」


そう言いながら優しく抱きしめてくれる伯母様。





今、私にできることはレイチェル様に手紙を書いてカトルズ公爵家に遊びに来てもらうことよね。


アランだってバカじゃない。

今は無理でも、きっと割り切って友達として付き合えるようになるよね。

まずは私と友達になってもらわないと!



手紙を書いた次の日にレイチェル様から返事が来た。


1枚目には挨拶とお茶会に来てくれたお礼。

そして、明後日なら1日空いていることが書かれていた。


2枚目には日本語で『世界を超えた乙女の愛と友情』について2人で話しましょう。


驚きすぎて心臓がうるさい。


レイチェル様も転生者?

しかもゲームの内容まで知っているの?


すぐにレイチェル様に返事を書く。

話したいことが沢山あるから朝からきてもらたいって、昼食も一緒に取りましょうと書いてから最後に日本語で会える日を楽しみにしています。と締めくくった。



アランはレイチェル様からの手紙にそわそわ落ち着きがない。

こんなアランを見るのも初めてだ。


アランにはレイチェル様の手紙の1枚目だけを見せた。

頬を染めて何度も読み返しているのが微笑ましいと思うのと、結果の見えた初恋の行方に悲しくもなる。






~アラン視点~


僕はずっと自分のことを、どんな時も冷静な判断ができる人間だと思ってきた。


それが、あのお茶会で僕はただの凡人だったと思い知った。


一目惚れなんて小説の中だけだと思っていた。

外見だけで恋に落ちるなんて有り得ないとまで思っていたんだ。


それなのにレイチェル嬢を見た瞬間から、目が離せなくなった。

確かに綺麗な令嬢だったが、それだけが理由で惹かれたとは思えない。


僕と彼女との間に見えない何かに引っ張られているかのように心が惹かれた。


心の隙間を埋める何か大切なものが戻ってきたような気がしたんだ。


彼女も僕に同じような何かを感じていたのではないだろうか?


理由は分からないが彼女に出会ったのは偶然ではなく必然だったように思う。


彼女に婚約者がいようが関係ない。


この気持ちは、そんな理由で無くなるものじゃない。


僕にこんなに激しい感情があることも彼女に出会ったことで気付かされた。


明後日には彼女に会える。

今から楽しみだ。

次に会う時には、お茶会の時よりかは冷静になれるはずだ。









~レイチェル視点~


エリザベート様から返事がきた。


やはり彼女も転生者だった。


ゲームの裏モードの内容をどこまで話すべきか・・・

王子の気持ちまで話すのは早すぎる気がする。

だから誰と幸せになったかも話さない方がいいだろう。


もし、転移してくるヒロインがゲームの内容を知っていたら?・・・それは別にいい。

自分がハッピーエンドになると思っているから。


ゲームの内容をまったく知らない場合は?

それも気にしなくて大丈夫だろう。

勝手に自滅する。


ヒロインが裏モードを知っていた場合なんだよね。

結果を知りながらエリザベート様に冤罪をかけるだろうか?


ここで1人で考えても仕方のないことね。



わたしが悪役令嬢であるゲームの話しも聞いて欲しい。


今まで1人で考えて回避しようと頑張ってきた。


逃げ出すことも選択の1つに考えていた。


転生者だと話せる信用のできる人なんて周りにはいなかった。


同じ立場の彼女ならきっと相談に乗ってくれる。


裏モードで腹黒の部分も見せたアラン様ならこんな信じられないような話しを受け入れて相談にのってくれるかもしれない。

拒絶されたら悲しいけど・・・




明日、2人に会えるのが楽しみだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る