第13話
アトラニア王国に来てから1ヶ月経ったが、私とアランの礼儀作法やこの国の言葉にも問題がないことから教育そっちのけで私たちを連れ回す、連れ回す。
伯父夫婦に子供がいたら、一緒にやりたかったと言われると無碍にもできず、買い物やピクニックと毎日お出かけだ。
それはそれで私たちも楽しんでいる。
ウインティア王国では邸から出なくてもなんでも揃っていたから不便を感じなかった。
でもこうして外に連れ出されるとアレもコレもと気になる物が街には溢れている。
伯父様にとっては可愛い妹の、伯母様にとっては親友の子供になる私とアランを我が子のように大切にしてくれているのが分かる。
私もアランもほとんど邸から出ることがなかったから、ここでの生活は新しい発見もあり有意義に過ごせてはいる。
でも気になることがある。
伯父様仕事は?
この国の宰相だったよね?
毎日、毎日私たちと遊んでいて大丈夫なの?
どうしても気になって聞いてみた。
「私の部下は優秀な人材ばかりなんだよ。私が少々休暇を取っても大丈夫なんだ。だから明日は遠出に行こう」
少々?既に1ヶ月は休んでいるはずだが?
だから遠出?
意味が分かりませんが?
ニッコリ笑って大丈夫、大丈夫と夫婦揃って言われると、それならいいのか?と納得は出来ないが遠出は行くことにした。
さすが母の親友だ。
1人で馬に騎乗するようだ。
もちろんアランも乗馬はできる。
私も1人で乗ろうとしたがアランに猛反対されて止められた。
「ダメだ!エリーは大人しく伯父上に乗せてもらいなさい。本当は僕が乗せたいところだけどまだ自信がないからね。」
なんでだ?
昔、ポニーで練習しいた時に簡単に乗りこなせたことから調子に乗って、誰も見ていない隙にポニーの背中に立って手を振ったんだよね。『見て見て!凄いでしょ?このまま走らせてみるよ』って言った途端、落馬しちゃったけど、擦り傷とタンコブで軽傷だったのに、祖父母とアランは慌てて医者を呼んだんだよね。それから乗馬禁止令が出たんだよ。
あれから5年は経っているのに、まだ禁止令は解かれてないのね。残念。
伯父様は嬉しそうに私を前に乗せると、「私の夢の1つが叶った」と涙目になってしまった。
こんなことで喜ぶなら、次も伯父様に乗せてもらおう。
私は高いところもスピードも平気なので馬を早く走らせてもらった。
アランも伯母様もついてこられるのはさすがだ。
頬にあたる風が気持ちいい。
森の中に入るとスピードも落とした。木々の間からこぼれる陽が幻想的で別世界にいるようだ。
森をぬけた途端、目の前には美しいエメラルドグリーン色の湖があった。
透明度が高く底まで見える。
縁に近づこうとするとアランに止められた。
「エリーダメだよ。忘れたの?『私泳げるのよ見てて』と言って止める間もなく池に飛び込んで溺れたことがあったでしょ?」
そんなこともあったわね。
「あれはドレスが水を吸収して重くなりすぎたから溺れただけよ?それにここでは見るだけだから大丈夫よ?」
それでもアランから許可は降りなかった。
すると、伯父様が抱き上げて湖の側まで連れて行ってくれた。
「伯父様、私11歳よ?子供じゃないわ」
恥ずかしくて抗議するが「子供を抱き上げることのできる期間はとても短いからね。私の我儘に付き合って」とウインクされた。
それを言われると嫌とは言えなくなるわ。
それにしても伯父様の言葉は不思議と素直に受け入れられる。
母に似た伯父様は紫がかった銀髪に赤みがかっ紫の瞳が私たちと同じ。
知らない人が見たら親子に見えるだろう。
キツめの顔だけど、間違いなくイケメンだ。そして若々しく引き締まった身体。
まだ20代にしか見えない。
伯母様の方はふわふわの金髪にロイヤルブルーの瞳の可愛らしい顔立ち。まるで絵本の中のお姫様みたい。
見た目だけならまだ美少女で通りそうだ。
ただ見た目だけなんだよね。
こんなに可愛い顔なのに、伯父様に言わせるとお転婆のまま歳をとったと言っていた。
(伯父様と伯母様は幼馴染みらしい)
性格もサバサバしていて、頼りになる姉御的存在だ。
そして猪突猛進らしい。
ストッパーの役目は昔は母もいたが、今は伯父様にしか出来ないそうだ。
そんな2人も実家と同じく私たちに甘い。
甘えることも孝行になると、つい先日思ったところなので、遠慮なく甘えさせてもらっている。
もちろん我儘は言わないわよ。
楽しい時間は早く過ぎるもので、滞在期間もあっという間に終わって帰る日がきた。
今回の滞在中は遊んでばかりだったな。
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