第10話

「まずエリーがカトルズ公爵家に行くのはアトラニア王国の学院に入学する年齢になってから。それまではウォルシュ家で生活すること。養子になるのは学院を卒業した後。」


皆んなが頷く。


「これが大事なことなんだけど、エリーがアトラニア王国の学院に入学する時は僕も留学して一緒に通うこと。」



なんですって!

アラン!その提案はサイコーよ!



攻略対象者のアランがこの国の学園に通わないなんて思いつきもしなかったわ。


そうよね。

私たち二人がこの国にいなくてもゲーム通りなら、ほっといてもヒロインはどこかのタイミングで登場するし、攻略対象者たちは彼女に惹かれていくワケだし、この国にいなければアランが巻き込まれることがなくなる。

私もこの国にいないから悪役令嬢になることもない。


そして2人でアトラニア王国で平和な学生生活を送ることが出来る。

一石二鳥!いや一石三鳥だ!


完璧だわ!


「アラン!嬉しい大好きよ!」


思わずアランに抱きついてしまう。


「エリー、僕は卒業後にはウォルシュ家に戻ることになるんだよ?分かっているの?」


困った顔で私に言い聞かせるように言うアランに笑顔で頷く。


「もちろん分かっているわ!」


これなら残していくアランの心配はしなくていいし、攻略対象者ともヒロインとも関わらずにすむ。

アランがゲーム期間をアトラニア王国で過ごすなら私も心置きなく学生生活を楽しめるわ。

それに友達だって出来るかもしれない。


「それなら養子縁組の話を進めても大丈夫だな」


アランの提案に両親と祖父母も寂しそうな顔をしているが納得できたようだ。


伯父夫婦もお互いの顔を見て嬉しそうに頷いている。


養子に行くまでは、伯父夫婦と交流を深めるためにアランと一緒にウインティア王国とアトラニア王国を行き来することで話しがまとまった。


それにしてもアラン恐るべし!

まだ11歳なのに大人たちを納得させて、短時間で難しい問題を解決させるなんて!


アランの性格は穏やかで優しい子なんだよね。

そして、頭の回転も早く常に冷静な判断ができるんだよ。

普段の私に甘えるアランは最高に可愛いが、今回のようにキリッとしたアランの時はやっぱり男の子なんだと頼りになる。



これが悪役令嬢になるか、ならないかの分岐点ではないだろうか。




伯父夫婦の滞在中は私たち双子の1日のルーティーンを側で観察していたが、まだ11歳の私たちの学習内容や外国語に海外の礼儀作法まで学んでいることに驚き、どこに出しても自慢の甥っ子と、姪っ子だ!と大絶賛してくれた。


伯父様、伯母様の人柄も良く2人に馴染むまでに時間はかからなかった。


1年に2回、半年の内、約4ヶ月間をウォルシュ侯爵家で過ごし、2ヶ月間をカトルズ公爵家で過ごしながらアトラニア王国の事や、次期当主になるべく教育を学んでいくことになると決まった。


伯父夫婦は3日間滞在してから4ヶ月後に会えることを楽しみにしていると言って帰って行った。





この4ヶ月間、祖父母やたまに帰ってくる両親からの甘やかしと言う名の愛情を受け入れながら、毎日を穏やかに過ごしてきた。


そして明日はアトラニア王国へ出発だ!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る