第9話

両親、祖父母、私たち双子の顔を見回して伯父夫婦が話し出した。


「これは強制ではなく提案なのだが、私たち二人には子供がいない。カトルズ公爵家には跡継ぎが必要だ。遠縁の親戚から養子も考えたが出来るなら実妹の子供たちのどちらかに養子になって欲しい。一度考えてもらえないだろうか?」


「必ず大切にするわ。親友のロキシーの子供たちですもの。ウインティア王国にだって馬車で5日もあれば帰ることができるの。アランとエリザベートの意見も聞かせて欲しいわ。」


貴族が爵位を継続する為に遠縁の子供と養子縁組することは珍しいことでは無い。

両親も祖父母も理解しているだけに、真剣な面持ちで聞いている。



アランはウォルシュ侯爵家の後継者だ。

そうなると私がカトルズ公爵家に養子に行くのがいいだろう。



だってよく考えて?


この国に残るよりアトラニア王国に行った方が確実に乙女ゲームに巻き込まれることはなくなるよね?


大好きな家族と頻繁に会えなくなっても馬車で5日なら休暇のたびに帰ることは出来るし、海外を飛び回る両親とは会う機会もあるよね?


それに何れアランだって商会を継いでアトラニア王国に来ることもあるだろし、いいんじゃない?


うん!決めた!


「私が養子になります!」


「アランは侯爵家の跡継ぎですし、私も跡継が教育をアランと一緒に受けてきました。それにアトラニア語も学んでいます。」



即断した私に、両親と祖父母が慌てだした。もちろん伯父夫婦もだ。


祖父「考える時間ならまだある。」


祖母「まだエリーと一緒にいたいわ」


父「急な話なんだ、じっくり考えよう。」


母「信用しているお兄様とクラリスとはいえ、まだ11歳の娘を手放すことなんて出来ないわ。」


伯父「返事はゆっくりでいいんだよ」



アランだけは黙って何か考え込んでいるようだ。


「反対している訳では無いんだ。貴族には義務も責任もある。エリーの考えも尊重したいがそんなに簡単に決めてもいいのか?」


「はい、家族と離れ離れになるのは寂しいですが、私は王子にも嫌われていますしこの先この国で嫁ぐことも難しそうですから」


目を伏せて悲しそうに言ってみた。


両親も祖父母もそんなことは気にしなくていいと言いながらも、「確かにそれはあるかもしれない」と静かに言った。


伯父夫婦にも、これまでの第一王子の言動を伝えると「なる程、王子殿下にも困ったものだね」と笑っている。


あの攻略対象者である王子達から逃げて平民になることも視野に入れていた私としては、彼らと繋がりが切れるならば、有り難い提案だ。




「エリーが養子に行くのは反対しないけど、僕にも条件があります。」


今まで無言で話を聞いていたアランからの提案に私は歓喜した。

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