第2話

お茶会から帰るなり私は両親と祖父母に泣きついた。


おねがい!

王子様と婚約したくない!

候補にもなりたくない!

うわーん


いつも我儘も言わない娘が涙を流して嫌がっているんだ、心配した両親と祖父母は何があっても王家には嫁がせない!と約束してくれた。


ふふっ もちろん嘘泣きだ。


これで婚約者候補にならずにすむ。

ゲームの内容も変わる。

一石二鳥ね。





我が侯爵家は祖父の代から領地経営の他に商売を始め、父の商才により今では近隣の諸外国にまで店舗を構える大商会となっている。

当然大金持ちだ。


この国の財政の1/4は我が侯爵家が納める税だ。

そのため王家とはいえウォルシュ家に無茶な要求を押し通すことはできないのだ。



父が爵位を引き継いだ後、祖父母は領地でのんびりと暮らしいてたが、私たち双子が生まれるなり引っ込んでいた領地から舞い戻り、初孫フィーバーでそのまま居着いた。


そう、侯爵家の離れで今も住んで毎日会いに来る。



そして、私は前世の記憶を持ったまま3歳までは周りの様子を観察した。


4歳からは家庭教師から勉強とマナーを学び始めた。


5歳からは、邸の図書室でこの世界の事を理解する為にさまざまな書物を読み漁った。


もちろん全て弟のアランも付き合わせた。


熱心に勉強だけをする子供は変に怪しまれると思い、遊ぶこともアランを連れてやっていたのだが、幼い身体に精神が引き摺られるのか、可愛いアランの喜ぶ顔が見たいがためか、全力で遊んだ。

かくれんぼや、鬼ごっこでは祖父母や使用人まで巻き込んだ。



前世はひとりっ子だったこともあり、姉弟の存在が嬉しくて仕方がなかった。

それはもうアランが可愛くて可愛くて両親や祖父母、使用人よりも私が甘やかしていた。


シスコンになるのは当たり前だわ。


でも甘やかすだけでなく、物事の善悪だけはしっかり教え込んだ。


5歳にしてかなり優秀な双子になっていたと思う。


両親、祖父母の甘やかしは継続中だが、生まれた時からある、嫌な予感が消えないため我儘も言わず謙虚に過ごしていた。



そして、6歳であのお茶会に招待されたんだ。







前世の私は大学受験を目前に猛勉強をしていた時期に死んだ。いや殺された。


塾の帰り横断歩道で信号待ちしている時に、後ろからドンと背中を押された。

目の前にはトラックが・・・跳ねられたと理解したが体が動かないだけで痛みは感じなかった。


女の人の悲鳴や、男の人の救急車を呼んだから頑張れと言っている声も聞こえた。

意識が途切れようとした時、あの子が笑って見ていた。

ああ彼女が押したのだと理解した。


1学年下のいつも私の持ち物、服装、髪型なんでも真似をする話したこともない、気持ちの悪い子。


私の友人たちも彼女の存在には気づいていた。

理由を聞こうと近づくと逃げてしまう。


気味が悪くて担任にも相談したが、口頭での注意はできるが、被害がない為それ以上は無理だと言われた。



あの子が誰かと一緒にいるところは見たことがなかった。

視線を感じた時にはいつもあの子が私を見ていた。


じっと見てくるだけのあの子が怖かった。

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