加地と広瀬の関係
広瀬と加地の出会いは小学生の時。二人は同じ地域に住み、同じ小学校に通っていた。
その頃から加地は活発で、男女問わず大勢と遊ぶことを好んでいた。スポーツが得意で、女の子からわりとモテていた。
一方、広瀬は人付き合いが苦手だった。周りの女子たちはお揃いを好み、髪型も服装も持っている物までもお揃いだった。広瀬にはそれが気味悪く感じた。
友達と遊ぶことよりも本を好み、その頃から放課後は図書室に入り浸っていた。
加地が時々、図書室に来ていたことを広瀬は知っていた。加地は怪談物の小説をよく借りていた。好みが似ていると感じたが、広瀬から話しかけることはなかった。
ある時、広瀬が借りていた長編のホラー小説を休み時間に教室で読んでいると、加地が話しかけてきた。
「その本、借りようと思っていたんだ。終わったら俺に貸してくれよ」
目を輝かせながら加地はそう言った。
「どこまで読んだ。怖くて面白いらしいじゃん! すげー、そんな分厚い本をもうそんなに読んだのか? 俺、漢字苦手だから読むの遅いんだ」
加地は一方的に話しかけた。
「読み終わったら、声をかけてくれな! ネタばれはすんなよ! 楽しみなんだから」
そう言って、加地はまた男子グループの中に戻っていった。
「広瀬に話しかけるなんて変わってるな。根暗が移るぞ」
茶化す男子に、加地は頭を叩きながら怒っていた。それをきっかけに、広瀬は加地と図書室で話すようになった。
とはいえ、加地の方が一方的に話していることが多かった。それもホラー小説やホラー映画、心霊スポットや幽霊話などのオカルト話ばかり。映画には興味がなかった広瀬に、加地は何度も勧めていた。広瀬はそれでも映画は見なかったが、広瀬が面白かったという小説を加地は喜んで読んでいた。
いつしか加地とは、よく話すようになっていた。
だが小学五年生の時、広瀬は両親の都合で引っ越しをした。学校も変わり、それ以来加地と会うこともなかった。
時は流れて高校生になった時、入学式で加地を見かけた広瀬は驚いた。加地も広瀬を覚えていたようだった。
加地が高校に通うために引っ越したアパートは、広瀬が暮らす同じ地域だった。初めての土地で戸惑う加地に、広瀬が色々とアドバイスをしていた。
ある時、加地はホラースポット特集が載った雑誌を本屋で見つけた。中を見ると、どれも加地が知っている場所ばかり。唯一知らないのが、とある商店街にあるというレンタルビデオ屋だけだった。しかし、それはどこなのかは具体的に書かれていなかった。そんな中、加地はユキと付き合うようになった。
遊園地のお化け屋敷で、加地の腕にしがみ付きながら怖がるユキを愛おしく思った加地は、またユキを怖がらせてやろうといたずら心に火がついた。
加地は広瀬に、呪いの映画を知らないかと尋ねた。
広瀬は「知らない」と答えた。
「噂程度でいい。それほど怖い映画を探しているんだ。よく聞くだろ。その映画を見ると怪奇現象が起こるとか、幽霊が出るとかさ」
広瀬が何度知らないと答えても、加地はしつこく何度も聞いてきた。我慢の限界に達した広瀬は、引っ越した後に地元の同級生から聞いた噂を加地に話した。
それがあの怪しげな店が並ぶおばけ横丁のレンタルビデオ屋。
そこには呪いのDVDが何本も存在するというものだった。だが映画のタイトルまではわからないと加地に伝えた。
その噂を聞いて、加地は喜んでいた。
広瀬は呪いについては半信半疑。どちらかと言えば信じていなかった。ホラーは娯楽であると。
けれど、映画を見たことで起こった出来事。
ユキが死んだとき、加地は呪いのせいで死んだと嘆いたが、
「呪いなんて実際に存在するわけないでしょ」
と広瀬は言った。
だが、加地も不審な死を遂げた。
「もしも本当に二人が呪いで死んだのなら、私にも責任がある」
私も報いを受けるべきだと、広瀬は言った。
そんな広瀬に、松田は言った。
「広瀬のせいじゃない」
元々、加地が無理矢理に聞き出したもの。
本当に呪いがあるとは、加地も思っていなかったはずだと。
何より、今はこうして自分に協力してくれていることを、広瀬に感謝する松田だった。
「そろそろ出発するぞ」
そう言いながら広瀬の横を通り過ぎた広瀬の兄は、両手にご当地キャラのぬいぐるみを抱え、ポスターらしき筒状のものを小脇に挟んでいた。その姿を唖然と見ている松田の横で、広瀬は呆れていた。
車に戻る途中、松田は茜に電話を掛けた。
「お客様がおかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません」
もう一度掛けたが繋がらず、松田は諦めて車に乗り込んだ。そして、茜に買ったお土産をリュックの中に入れた。
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