アイドル夕焼ちぎりの蹂躙

鳳ひより

プロローグ

ライブハウスが燃えるのを忘れられない。


あたしは何よりも輝いていて、何よりも熱くて、何よりも生きていた。

目が眩む照明も、箱を揺らす音楽も、あたし達のステップに合わせて震えるステージも、全てあたしという炎を煽る材料に過ぎない。

あたしが燃えている。

みんなに引火する。

それが、なにより、きもちいい。


だからもっと燃えていなくちゃ。

もっともっと燃えていなくちゃ。


手を伸ばす。指の関節ひとつひとつを意識してゆっくり曲げる。みんなの心臓を捻りつぶす。

脚を曲げる。自在にスカートが揺れる。みんなの内臓を絡め捕る。

喉を震わせる。歌は分厚い扉を超えて地上にまで届く。みんなのぜんぶを抱きしめる。

まだまだ終わらない。あたしの欲望は満たされない。みんなの欲望も満たさない。

あたしの渇きに愛するみんなを巻き込んでやる。


だからもっと燃えていなくちゃ。

もっともっと燃えていなくちゃ。

永遠に燃えていなくちゃ、あたしはあたしでいられないのに。

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