タクシー運転手ですが、異世界で領主になりました

三芝フィード

異世界領都誕生編 第1話 ここはどこだろう


「……やってしまった」


 タクシーの車内にて、俺は悲観に暮れていた。

 人らしきものを跳ねてしまったのだ。

 一瞬しか見えなかったが、確かに人のような存在だった。

 すぐに救護しようと運転席のドアを開けて、車の後ろまで行って確認する。


「……なんだこれは。人か?」


 よく見るとそれは、人では無かった。

 全身が緑色の肌で、背丈は子供くらいの大きさか。

 人のような存在ではあるが、人では無いだろう。

 外国人でもこんな肌は見たことが無い。そう、例えるならば――


「ゴブリンか?」


 漫画やアニメで出てくるようなモンスターにそっくりなのだ。

 勢いよく撥ねてしまったのかゴブリンはピクリとも動かないが、さてこの現状をどうするのが適切なのか。救急車は違うだろうし、警察に連絡するのが正解だろうか。

 動揺してまともに考えられずにゴブリンを見ていると、ふと気づいた事がある。

 そういえば道路が舗装されていないのだ。

 良く見ると、さっきまで運転した車両の後ろには並木道が続いている。

 わけが分からない。ここに来るまではガードレールに沿って山道を走っていたのに。コンクリートで出来た国道を走っていたので、間違いなくこんな場所では無かったはずだ。

 辺りの景色を見回すと、どうやら森林の中に居るみたいだけど――おかしいな。

 ……ここは一体どこなんだ?

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