遠藤正明③

閉園後の夜

業務は終わったはずだが俺はミッチーの姿のままある場所へ向かっていた

カメラで管理しているスタッフから連絡が入りまだ残っているゲストを迎えに行くのだ

たまにこういう事が起こる

閉園時に身動きが取れずにいたり

騒音でアナウンスが届かなかったりした場合なんかがそうだ

到着すると一人困った様子の女性がいた

俺はさっそく駆けより対応する

遠藤「お嬢さん」

井上「ミッチー?」

遠藤「道に迷ったのかい?

 安心して

 僕がエスコートするよ」

井上「でも」

遠藤「大丈夫

 さあ、僕の手を取って」

もちろん声に出して会話をいる訳ではない

身体の動作や仕草でコミュニケーションを取っている

俺の演技力にかかれば喜怒哀楽の表現はもちろん

遠くにいるお客様に御手洗の場所をさりげなく諭す事も可能なのだ

遠藤「さあ行くよ」


スタッフ「こちら本部より各員に通達

 遠藤ミッチーがゲストと接触

 これより作戦を実行する

 ゲストは現在ミッチーと共にアドベンチャーゾーンを正門ゲードに向かって進行中

 どうぞ」

「こちらチームファイアフライ

 ターゲットを確認した

 これより作戦行動に移る」

「こちらチームハニービー

 了解した

 これよりポイントAに移動する」


彼女の手を引いて歩く

既に灯りは街灯を残して消えていた

だが進むに連れて二人を導くように再びディスティニーランドは輝きを取り戻す

もうとっくに閉園時刻は過ぎているがここは素敵な運命と隣合うディスティニーランド

ちょっと時間を巻き戻すくらいわけないのさ

正面ゲート前の大通りに着けばオープンカーがお出迎え

運転手が回り込み扉を開ける

タイミングばっちり

ゲストと共に乗り込むとあとはゲートまで一直線

到着するとキャストとスタッフが見送るために並んでいた

さすがは我がディスティニーランドの誇る精鋭達

見事なチームワークだ

俺は車を下り見送るために再びゲストの手を取る

「ありがとう

 ミッチー!」

彼女の目には純粋な輝きで満ちていた

俺はこのためにこの仕事をやってるんだと喜びを噛み締める

「キャッ」

彼女が体勢を崩し後ろに倒れそうなり思わず抱きかかえる

彼女は咄嗟にミッチーの頭掴んでしまい落としてしまった

彼女の目の前にミッチーよりディテールが細かい野獣の顔が突然現れた事だろう

「キャーーー!!」

彼女は悲鳴をあげると共に失神した

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