@yokonoyama

第1話

 ごみを焼却炉で燃やすのが、私に与えられた仕事だった。

 両親を列車事故で失い、それから親戚のところで世話になっている。見晴らしのいい、山の上にある大きな家。あと半年で卒業だったというのに小学校の友達とも離されて、最小限の荷物を持って連れてこられた。泣いてばかりいた。

 泣く暇があるなら、手伝っておくれ。役に立たない子は追い出すよ。おばさんはいつもそう言っていた。おばさんには、すでに三人の子どもと、介護をしないといけない祖父がいて、私をかまう余裕はなかった。

 何をしても怒られてばかりだった。何もしなくても怒鳴られるので、ずっとびくびくしていた。その姿がよけいに癪にさわるのだろう。あんたなんか、このごみと同じ。何の役にも立ちはしない。ほら、さっさと燃やしに行っておいで、と追い払われた。

 ここには街のようにごみ収集車が頻繁に来ない。だから、焼却炉がある。灰は取り出して、前もって穴を掘ってある場所に捨てる。私は、早く火がつくように丸めた新聞紙を焼却炉に入れて、マッチを擦る。焼却炉の扉を閉めると、カラになったごみ箱を抱えた。そして、空気を取り込むためにある扉の隙間から炎を見つめた。

 ある日、私は焼却炉のそばに建てられた物置へ行った。車一台が停められそうなそこには、古い本がたくさんあった。初めのうちは一冊ずつ、こっそり自室に持ち込んでいた。けれども、それでは読み足りなくなって、自室を抜け出し物置で夜を明かすようになった。

 しばらくの間は楽しかった。おばさんに見つかるまでは。

 くだらない本は、全部、処分してしまおう。いいかい、あんたがやるんだよ。そう言って、おばさんは愉快そうだった。何日もかけて、私はそれを燃やした。様子を見に来たおばさんは、最後の本が火に包まれると満足して行ってしまった。

 灰を穴に捨てながら私は思う。どうして、両親とともに逝けなかったのか。どうして、二人は私をかばったのか。一緒に連れていって欲しかったのに。

 一冊だけ自室に隠していた本を持って、再び焼却炉へ行った。体が成長しきっていない、今なら入れる。窮屈な状態で私は持っていた本のページを破り、マッチを擦った。

 その炎は、これまで見たなかで一番美しかった。

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