第38話 訓練場での死闘1
「本日の訓練はレイモンド様を交えて、実戦さながらの掛かり稽古を行う!」
と号令するのは副騎士団長のセーンズ・リーマン。俺は騎士らしい戦い方をしないので、周りの者達に悪影響を及ぼすから騎士団の訓練に出るなと言い出したのは此奴だ。だと言うのに1年ぶりに呼び出されて、俺は木剣ひとつ渡されず、訓練とは思えない程の重装備の兵達の中に並ばされている。
どいつも此奴も見た事の無い顔ばかりで、どうやら奴らの会話の様子から王都にあるセーンズの実家であるリーマン子爵家の兵共らしい。見慣れた領内の兵らしき者は只の一人も見当たらない。
訓練場の唯一の出入り口にもフルプレートにハルバードを持った5人が並んで塞いでいる。俺を訓練で殺すつもりなのだろうか?だが1年前にセーンズを訓練でズタボロにしたので恨みを買った覚えはあるが、それで普通は殺そうと迄するだろうか?仮にも主君の子息だぞ?……帝国?……今の状況でそれは無いな。……王位継承権を持つ誰かの命令か?辺境伯家の継承順位は公爵家よりも上位だからな。
……ざっと30人か、立ち振る舞いから見るに
魔法での戦いの経験はないが、意図せずに行っていた無手の型での魔力循環の修行の賜物か、他人の魔力の質は良く見える。強い魔力を纏う者は居ないので懸念はなさそうだ。魔法が飛んで来る気配も明確に分かるので、気合で受けるしか
「先ずはレイモンド様!……前へ!」
……おい?本当に俺に武器ひとつ渡そうともしないで始めるのかよ?これで殺意は明確だ。それならば心置きなく訓練ごっことやらを楽しむとするか。
「戦場の作法である名乗りは上げないのか?……実践訓練では通例だよな?」
……そんな通例があるかは知らんがな。
「我こそはコルドバ王国のグラバス騎士団副団長のセーンズ・リー……うっ!……」
名乗っている隙に素早く懐に入り、鎧のうえから
……馬鹿が騙されやがって。子供の放った程度の重ね打ちでは死なんだろうが、しっかりと手応えがあったので間違いなく戦闘不能だ。
鎧を着た相手に打撃を通す技だ。驚くなかれ、これでも基本技の一つだ。だから無手の型に組み込まれているので打ち損じる心配はない。
「知ってるわ!……今更お前が自己紹介してどうする!」
白々しくツッコミをいれる。後ろに整列した連中には、先程の右手の打撃は一瞬でしかも俺の体に隠れて見えなかっただろうから、胸の少し下の中央に子供の左手が軽く当てられている様にしか見えないだろう。
「……ぐぼっ………!」
少し遅れて目、鼻、口、耳から血を噴き出してセーンズが倒れる。その腰からこっそりとダガーを抜き取るのも忘れない。
……え?この程度で死んだ?……あ……魔力が込められてしまったのか。込め方を習って無いから加減なんか知らないしな。しかし困ったな。後で尋問するつもりだったんだが。
それよりも、幾ら何でも辞世の句があれではイカ臭い……じゃなくて
まあいいか。これで指揮官は潰した。
「……!?……セーンズ様!!」
「どうしたんだ?セーンズ様……」
「……セーンズ様!しっかりしてください!」
「急に倒れて如何したんだよセーンズ?」
俺も心配して駆け寄った兵士たちに紛れて参加していたが……。
「何言ってやがる!お前が何かやったんだろ……ぐっ!」
隣に居たうるさい兵士の鎧の首の隙間にダガーを差し込んで黙らせる。
……何でバレた?……いや、ちょっと無理があったかな。
「雑兵の分際で辺境伯の子息の俺をお前だと?不敬な!……お?……良い剣を持っているな?」
お馬鹿な坊ちゃん貴族風な口調で、不敬罪で処罰した事にしてロングソードを手に入れた。
だが俺はふざけている訳ではない。混乱させたり怒らせる程に集団は統制が取りにくくなる。少しでも有利に運びたいからだ。
辺りを見廻すと兵士たちが後ずさりして静まり返っていた。
……さあ来い!派手な乱戦の始まりだ!
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