第37話 月明かりの下で

……暢気のんきに眠ってるなミレイユ。焦っても仕方が無いか。先ずは深呼吸だ……ふう……。


 空には丸い月。月明かりに照らされて眠るミレイユが美しく見える。


「気持ち良さそうだな。俺の気も知らないで……」


……おとぎ話では眠り姫を起こすには王子様のキスが定番なんだがな。俺は未だカトリーヌの事が忘れられないと、筋金入りの堅物のお前は思っているんだろうな。

 だから慰める気持ちで俺に忠義を尽くしてくれているんだよな。……まあいいさ。子供の頃から文武で切磋琢磨してきた幼馴染おさななじみで親友だしな。


……そういえば最近色々と忙しくて、こうしてゆっくりと二人きりになるのも久しぶりだよな。語らえないのは残念だが。


 王子様になれない俺は、眠り姫が起きるまで寄り添い。静寂で美しい月影の風景を眺めて過ごす事にした。









「……ずずず~~……そうですか。それで邪龍公とやらは、城ごと消滅したので心配は要らないのですね?」


「……ああ……眷属と思われる物達が灰になっていたのが確認されたので、間違いは無いかと……ずずず~~……旨い茶だな……この煎餅とやらも。おかわりを貰えないだろうか?」


 藁の様な物を奇麗に編み込んだ床の広間。そこに置かれた大きいが足の短い、古木こぼくを削り出して磨かれた重厚なテーブルを囲み、床に置かれたザブトンと言う四角く小さなふかふかの敷布団に各々が座っている。


「……ぱりっ……ぽりっ……随分と気に入ったようだなテオバルド!……私も好物なので嬉しいゾ!新しく入れ替えて来ル!……お煎餅も追加だナ!」


 広間の庭に面する一面が全て、木枠に紙が貼られた引き戸で占められていて、今はそれが開け放たれている。

 月明かりに照らされ、自然を生かしたおもむきのある素朴な庭園が幻想的に美しい。眺めていると先程迄の出来事、いや世俗の全ての争い事などこそが夢幻ゆめまぼろしなのではないかと思えてくる。


「どうやら貴方は本当に心の奇麗な方の様ですね。テオバルド」


「……?……いや、そんな事は……ははは……」


 不意にそんな事を言う神聖な気配を纏った神楽殿。俺の全てを見透かす様な視線だが、何故か射竦められる様な気はしない。むしろ深い慈愛に包まれる安心感がある。


……もしや?……このお方は魔神ではなく神様なのだろうか?







「お茶をどうゾ……テオパルド。…………ところで神楽様。本当に闇属性は邪気と全く違うものだったのですネ。勉強になりましタ!」


「いや、実は私も確証は無かったのですが、テオバルドが身をもって証明してくれたお陰で私も大いに勉強になりましたね。……ついでに闇属性に有効な攻撃も分かりましたし」


……いや……やはり大魔神だ!!

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