第23話 山へ進め 9

「……私の右肩越しに生首が言った……お前じゃない…………と思ったけど面倒だからお前でもいいかな?」


「ぎゃ~~~~~~~~~!!……ああ怖かった……トイレ行ってなかったらヤバかったぞ」


 私が探していた気配はこの子ではありません。この子の行動は大分前から把握していましたし、むしろ辺境伯からも陰ながらでも保護するように頼まれていますから。      

 探していた覚えのある気配とは昔戦った悪鬼です。似ているだけだったのですが同じに邪気と呼ばれるたぐいのものです。邪気は悪しき者にしかまとえませんから放置するのは大変危険です。


「怖かったけど面白かったぞ……ありがとうカーラ」


 この子は帝国のアラゴン侯爵に勝手に守護神と祭り上げられ、他国の貴族への脅しに利用されていただけの人畜無害で優しい良い子なのですから。それにとても可愛いですよ。


「いえ、お粗末さまでした。……喉が渇きましたのでビールをもう一杯貰えますでしょうか?」


 この世界の龍を初めて見たので驚いてしまい、つい醜いなんて言葉が出てしまったのを謝らなければなりませんね。


「はいよ。魔法で冷やし直したから旨いぞ!……エドマメもまだ沢山あるぞ」


 でも困りましたね。この子は余りにも魔王を怖がり過ぎていますので。私は本当に魔王じゃないのに。ここへ来た本当の理由をどうやって説明したらよいのやら。




「……!……ポコちゃん!扉から離れて私の後ろへ!……急いでください!」


……考える間もなく来てしまいましたか。


 気配がいきなり現れたり消えたりで予測が出来ない面倒な相手です。逃げられてばかりでした。でもこの子を狙っているのだけは分っていましたので、探すのは諦めて急ぎでメイドに変化へんげして私の気配を隠し、少し危険ですが傍で護りながら戦う事にしたのでした。




「見つけたぞ守護神……お?……随分と別嬪べっぴんさんなメイドも居るじゃねーか!……得したぜ!……いっひっひっひ」


 でもここまで近づいてみると。確かに悪鬼に似た様な邪気ではありますが、大した相手では無さそうですね。これなら魔王かぐらの出番はありません。奇麗で優しいメイドさんは実はとっても強かった!で済みそうですね。怖がらせて気絶させたりせずに、可愛いポコちゃんの頭を撫で撫でしたいお姉さんは頑張っちゃいますよ!


「カーラは関係ないんだぞ!……これでも喰らえスケベおやじ!……えいっ!」


 え?……ポコちゃん!………駄目…………危ない………………コショウのかたまりなんか投げたら……
























「……は…………はっ……………………はっくしょーん!!」


 急いで変化してたから……術が解ける……くしゃみひとつで


……呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!でごじゃるよ。


「「大魔王!!」」

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