第22話 山へ進め 8
……作者より……
今回の話は怪談や怖い話が苦手な方は絶対に読まないでください。
この回を読み飛ばしてもストーリーに影響は全くありません。
カーラが怪談を語る場面にリアリティーを求めて、つい自分の体験を書いてしまったのです。書き終えてから失敗したと思ったのですが。消すのが惜しくなり、苦手な方が読み飛ばしても問題が無いように修正して公開する事にしました。誠に申し訳ありません。
「……私の右肩越しに生首が言った……お前じゃない…………と思ったけど面倒だからお前でもいいかな?」
「ぎゃ~~~~~~~~~!!」
「……と、最後にもう一つだけ短い話ですが、九官鳥ってご存じですよね?人の言葉を真似して繰り返し喋る鳥です……私が酒場での飲み友達から聞いた、片田舎に住む。趣味に小説モドキを書いて遊んでいる男の体験談だそうです」
俺は人が寝静まった夜間に配達の仕事をしている。働く時間の割に給金が良いので、もう20年近くも続けているので慣れたものだ。
毎日同じ順路を回るので、この家には大人しい犬がいる。この家の親父はいびきがうるさいので玄関まで聞こえる。どうでもいい情報まで覚えてしまうが、それがいつもの日常。気に留めてはいない。
「ゴメンクダサイ……ゴメンクダサイ……」
ある家の玄関に行くと、毎日ではないが向かいの集合住宅から声がする。つまり俺の背後から聞こえてくる。元気にオウム返しする九官鳥だ。いやオウム返しだからオウムだろうか?でも子供の頃に九官鳥を飼っている友達が居たのでその声に似ているので九官鳥だと俺は思っている。
用を終えて
「ゴクロウサマ……ゴクロウサマ……ゴクロウサマ……」
色々とバリエーションがある様だが、いつも短い言葉だ。ぶつぶつと聞き取れない事も多いが気にしない。
……そう、気にしなければ、それでよかったんだ。
「オツカレサマデス……〇〇〇デス……オツカレサマデス……〇〇〇デス……オツカレサマデス……〇〇〇デス……」
いつもより言葉が長い。何でだ?……と考えてしまったのが失敗だった。
そういえば鳥がこんな真夜中に?
用を終えて踵を返し、俺はいつもはしない動作を。集合住宅の2階を見上げてしまった。
明かりの無い集合住宅の2階。黒くて丸いものが窓から出ていた。いや球ではない。首らしきものに繋がっているので人の頭か?だが通常よりかなり高い位置にある通気の為にあるらしい小窓だ。しかも胴体がある筈の、その頭の真下にある完全に開いた窓には何も見えない。
「オツカレサマデス……〇〇〇デス……オツカレサマデス……〇〇〇デス……オツカレサマデス……〇〇〇デス……」
考えても無駄だ。この手の者はこちらから呼ばなければその建物から出て来れないと聞いた事がある。それに聞き慣れた声に過ぎない。これからも気にしなければいいだろう。
だがこれを幸いと言ってもいいものだろうか?九官鳥の声がまた聞こえないかとビビり続ける期間は一週間もなかった。その家の父親が亡くなったので配達は必要なくなり、俺が訪れる事も無くなった。
「オツカレサマデス……〇〇〇デス」
お疲れさまとは長い人生を終える、向かいにある家の父親への労いの言葉だったのだろうか?だがそう考えてしまうと〇〇〇デスが何を言っていたのかを知りたくなる。だが……。
……もう思い出すのは止めだ。
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