第9話 神楽 5
「……か……かみさま?…………パタン……」
侍女らしき少女が気を失って倒れた。どうやら神に祈る程に、私は恐ろしい姿をしているらしい。
……意外に広いな。奥で苦しそうな表情で眠る女人が主様?いや腹の中におられる様だが。
この侭では危ない。主様の神気は以前と変わらないから私はその気配を辿ることが出来た。だがこの世界では異物だ。普通なら周りの神気とゆっくりと交流して同化するのだろうが。主様の神気は私と同じに強過ぎるので喧嘩してしまっている。
この女人は、まだ主様が小さいから孕んでいるのにすら気づいていないだろう。だが時折、神気の喧嘩に巻き込まれて今の様に苦しんでいるはずだ。気づく程に大きくなれば女人は耐えられなくなり、腹の中の主様も共に死んでしまうだろう。
……だが幸いだ。私はたった今その喧嘩に勝利したばかりだ。だからこの場に飛んで来れた。もうこの世界の神気は自由自在だ。かつて何かの神の一柱であった事は伊達ではない。
女人の腹に手を当て、神気を僅かづつ吸い上げて同化させては戻していく。ただこれだけの事だがかなり繊細な作業だ。
「……んっ…………」
「苦しいだろうが我慢してくれ……あともう少しだ。」
……やっと終わったな。これでもう心配ない。
「……私は助かったのね……ありがとう……貴方の名前は?」
「……名前?……
「そう、カーラって言うのね……ごめんなさい……少し……休むわ」
……聞き間違えたまま眠ってしまったか。まあ丁度いいだろう。神楽は私が依り代にしていた太刀の銘に過ぎないしな。
「……ん?……あ!……かか……かみさま!…………あっ!……そうだ奥様は」
……目を覚ましたか。元気な少女だな。
「心配ない。疲れて眠ってるだけだ。そんなに騒いだら起きてしまうぞ?」
「……かかか……かみさま!」
「済まないな。そんなに神に祈る程怖がらせてしまって。」
「ありがとうございました女神様!」
「……………………え?」
それから色々とあって、メイドのカーラは今日もレイモンドの傍に居る。
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