おっぱいから出るエトセトラ
かささぎの渡せる橋
おっぱいから出るエトセトラ
おれは自宅の近所にあるファミリーレストランでハンバーグを食べていた。何故ここにいるのかはとんと見当がつかない。気づくとレストランの席に座っていて、残り一口になったハンバーグを口に押し込むところだった。ハンバーグなら昨日も食べたし、そのハンバーグは恐ろしくボリューミーで胃もたれがするぐらいだったので、しばらく肉は勘弁願いたいと思っていたのだが。
ハンバーグを食べ終わると、脂のせいか少し喉が渇いた。おれはテーブルの上に置いてあったコップを持ってレストランのドリンクバーコーナーに向かった。するとそこには様々なボタンが置かれた機械やティーバッグの棚はなく、代わりに優しく膨らんだおっぱいが五対十個が剥き出しに艶めかしく並んでいた。どうやら、女が五人、裸の上半身だけを晒すようにカウンターの中に立っているようだった。
おれは向かって左から二番目の女の、向かって右のおっぱいに目を付けた。大きさはおそらくHカップぐらいで、「釣鐘型」とか言われる綺麗なおっぱいだ。乳首は肌の色と同化していてほとんど色がついていない。おれはそのおっぱいの先っぽにコップを当てると、おっぱいの先端、乳輪の周りをを五本の指でしっかり圧迫する。柔らかく押し返す感触がしたと思うと、おっぱいから出てきたのは母乳ではなく、緑色の液体だった。コップに入るとシュワシュワと泡立ったため、おれはそれがメロンソーダだと分かった。おっぱいから出てくるメロンソーダをなみなみと注ぐと、おれは「もっと飲みたい」という欲求が抑えられなくなり、思わずそのおっぱいに吸い付いてみる。甘く爽快なメロンソーダがおっぱいから溢れ、俺の喉を潤していく。しかし突然、
「お客様!」
と店員らしき声が背後から響いた。おれはびっくりしながらもおっぱいから口を離せずにいると、
「衛生上、おっぱいに直接口を付けないようお願いします!」
と強く注意されてしまったため、おれは慌ててメロンソーダを出すおっぱいから口を離した。とても名残惜しかった。
おれはその後何回か自席とおっぱいとの間を往復した。先ほどと同じ女の向かって左のおっぱいを搾ってみると、今度はコーラが出てきた。「左右のおっぱいで出るものが違うのだな」と妙に感心した。顔が分からないというのも、それはそれでおっぱいだけに集中できるので、なかなかにありがたい。
そのうち、五対のおっぱいの全貌が分かった。
左から二番目の女は先ほどの通りだ。Hカップの釣鐘型おっぱい、乳首はほとんど色がない。向かって左がコーラを出すおっぱいで、右がメロンソーダを出すおっぱい。
一番左の女はJカップの垂れが強いおっぱいで、茶色く色がついた乳首を持つ。向かって左のおっぱいはオレンジジュース、右のおっぱいはウーロン茶を出す。
真ん中の女はIカップのロケットおっぱいで、乳首が少し大きい。向かって左のおっぱいはグレープジュース、右のおっぱいはレモンスカッシュ。
右から二番目の女はGカップで、綺麗なおわん型をしていて乳首もピンク色。向かって左はジンジャーエールのおっぱいで、右は紅茶のおっぱい。
一番右の女はKカップで、とにかく下の膨らみがボリューミー。向かって左のおっぱいからはコーヒーが、右のおっぱいからはジャスミンティーが出てくる。
このようにおっぱいから出てくる様々な飲み物を楽しんだが、如何せんコップに注ぐだけというのは味気ない。直接おっぱいから吸い出したいという気持ちが募った。
気付くとおれは有名な海浜公園を散歩している途中、女に
「ねえ、おっぱい飲ませて!」
と声を掛けていた。おれは普段そのように見知らぬ人物に声を掛けるようなことはしないし、もしそうしなければならないとしてより丁寧に応対するはずだ。おれはよほどおっぱいが恋しいらしい。
女はおれの言葉を聞くと、
「はあ……じゃあいいですよ」
と言った。するとたちまち女の服が消えうせ、丸々としたEカップぐらいのおっぱいがおれの眼前に鎮座していた。おれはたちまち左のおっぱいに飛びついた。だがおれはたちまちむせ返った。女のおっぱいから出てきたのは、醤油だった。そのしょっぱさにたまらず咳き込む。おれはそれでもなんとか、と醤油おっぱいと格闘し、しょっぱさに耐える。だが、限界があった。「確か醤油って致死量があったっけな」というトリビアルな知識が脳裏をよぎる。すると女は
「こっち飲めばいいじゃないですか!」
と、右おっぱいを差しだしてきた。おれは「ああ、そういえばそうだったな」とおっぱいの仕組みを思い返し、右おっぱいを吸ってみた。右おっぱいからは、何かの出汁が入ったスープのような液体が出てきた。口の中に広がる香りからすると、これはカニ汁か。昔旅行で飲んだっけな、と思いながら、おっぱいカニ汁を吸った。
おれはふと思いついて、右おっぱいから出るカニ汁を吸った後、それを口に含みながら左おっぱいを少し吸ってみた。するとどうだろう、右おっぱいのカニ汁と左おっぱいの醤油が絶妙な匙加減でブレンドされ、旨味が口の中に広がるではないか。気を良くしたおれは右おっぱいからたっぷりカニ汁を吸い出し、左おっぱいから少しの醤油をもらう。このやり方で、たっぷりとおっぱいを味わわせてもらった。
女と別れると、おれは検索サイトで、おっぱいから出る飲み物について調べてみた。人のおっぱいからは実に様々なものが出るらしい。アップル、オレンジ、グレープの定番ジュースやコーラ、メロンソーダなどの炭酸飲料、茶やコーヒーが出ることが多いらしい。確かにファミリーレストランにあったのと同じラインナップだ。また、少し食事に近いものとして、味噌汁やコンソメスープ、コーンスープを出すおっぱい、醤油やウスターソース、トマトピューレなんかを出すおっぱいもあるという。さらに、ビールやワイン、ウイスキー、日本酒といったお酒を出すおっぱいもあるそうだ。ある人の話として、この人は自分のおっぱいから出る飲み物の正体が分からず首をかしげていたが、職場にいた料理に詳しい人におっぱいを飲んでもらったところ、なんと牛の肉汁がおっぱいから出ている、なんていう話も見つかった。
さらに、飲み物ではなく他の液体を出すおっぱいもあるようだ。
こんな動画を見つけた。アメリカのある街で裸の女が立ち、助手らしき人物が火のついた蝋燭を女の前に置く。そして女がおっぱいから液体を出すと、蝋燭は勢いを増し激しく燃え上がった!実はこの女のおっぱいはガソリンを出すおっぱいであり、おっぱいから火を噴いてみせるおっぱい芸で人気の大道芸人なのだという。別のサイトでは液体窒素を出すおっぱい、というのもあった。おっぱいから出る液体窒素をかけて花を凍り付かせるおっぱい芸。それはいつか見た科学実験を思い起こさせたが、おっぱいのおかげでそれよりもはるかに幻想的に見えた。
しかしおっぱいからこれだけ多様な液体が出る中、肝心の母乳はどうなったのだろうか、という疑問を覚えたが、いくらインターネットを探しても答えは見つからなかった。
ふと我に返ると、周りは深夜になっていた。もう人通りもない仲、急いで家路についた。終電はもう終わっており、ここから歩くと1時間はかかるだろうか。
その道すがら、全裸の女とすれ違う。カップサイズKはある大きなおっぱいが街灯に照らされてゆらゆらと揺れている……と、女が向かって左のおっぱいに手を伸ばし、何かの液体を噴射した、次の瞬間!
「ゔああああああああああーっ!!!!!」
おれは絶叫していた。顔が焼けるように熱い。おれは激痛にもうろうとしながらも、「こいつ、硫酸おっぱいだ!」と直感した。
おれがもんどりうって倒れると、女はおれに馬乗りになり、左のおっぱいに手を伸ばして硫酸をさらに噴き出そうとする。おれは暴れる中で、思わず右のおっぱいを掴んだ。女が「ひゃっ!?」と声を上げると、顔にぬるりとした甘い香りの液体がかかる。洗剤か何かか。アルカリ性だというから多少硫酸が和らげばいいが。女が怯んだ隙を見ておれは必死に走り、走り、走った……。
次の瞬間、おれは自宅のベッドの中にいた。硫酸おっぱいで爛れていたはずの顔には、痛みも傷も全くなかった。やれやれ、こういうことがあると休日の朝にゆっくり休む、どころか余計疲れてしまうな、と思いながら、ベッドからのろのろと起き上がった。朝っぱらからおっぱいから母乳を出す女の淫らな動画を検索してみたが、さっき見た光景の印象が強すぎたか、あまり面白味は感じられなかった。
昼食時、ふと思い立って近所のファミレスに行ってみたが、どこにもおっぱいは並んでおらず、その代わりドリンクバーの機械の前には幼児たちが群れを成していた。彼らにとっては、飲んでいていかにも情けない母乳よりも、甘酸っぱさが心地いいオレンジジュースの方が素晴らしい飲み物のようだった。
おっぱいから出るエトセトラ かささぎの渡せる橋 @KOOkakuyoumu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます