13 天使かな?
翌朝、ツキは俺が作ったローブを大喜びで受け取った。
鹿の前足をスカーフの様に首元で結び、フードをかぶる。
まるでハムスターのフードをかぶるあのキャラみたい。
「ありがとうございます、ルキ様!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるその愛くるしさに、俺は頰の筋肉を緩ませる。
やっぱ、着るよりか見る側だな俺。
「どうですか?」
くるっと回転をし、首を傾けてこちらを見ている。
うん、可愛い。いや可愛すぎる。
天使か? 天使なのか?
でも、だからって”可愛い”なんてそんな一言で終わらせていいのだろうか?
それは否だ、断じて否である!
俺の語彙力、脳内辞典をフル活用して表現すべきだと思う。
「んーっ。似合っていないんですか?」
「いや! うん、可愛い。可愛いぞ?」
プクーっと頰を膨らませる不満げなツキに、俺は反射的に対応してしまった。
凡庸な言葉で。
「なんか適当ですね……。まぁいいですけど」
お? 言葉遣いが緩くなった?
「訂正しておくが適当じゃないからな? 可愛いの一言、そんな凡庸な言葉で片付けていい問題じゃないと思っただけだ!」
「……」
ツキは俺の言葉に耳を貸す様子は無かった。
それどっころか、ローブをじぃっと見ている。
「もしかして、気に入らんかった?」
このデザイン、キモとか思われた?
可愛いとか何言っちゃってんの? とか考えている?
俺の本質にあるコミュ障は、まだ治療してないんだから。そんなこと言われたら、俺は死にかねないよ?
「それにしても、また貴重な魔物を倒していたんですね。この鹿の角はとても高く取引されているんですよ?」
「そ、そっちか」
なんだ、ローブの素材について気になっていたのか。
一先ず嫌われていなくて良かった。
「でもまぁ俺は魔族だし、街に入れたとしても換金なんてできないだろうし」
金は欲しいけど、現状無理でしょ。
「僕たちもですよ。換金できないってことはないと思うんですけど、相場の適正価格ではないですね。十分の一でも貰えればいい方じゃないですかね」
まじか。
やってられない、やってられない。やってられない!
”てられな”なんだよな。
「あ、そういえばツキって戦闘経験とか、狩猟経験ってあったりする?」
今後、冒険をするにあたって避けては通れない問題だ。
そこんとこは聞いておかないと。
「無いですよ。
あー、なるほどね。
だから僕っ子なのか。
「じゃあどんな武器を使いたいとか、魔法の適正属性とか分かったりする?」
「んーっとですね、武器とかは正直よく分かりません。属性は風みたいです」
風かぁ。
結構、応用が効きそうな属性だな。
「どのくらいできそう?」
「全然ですよ。キリムに内緒でこっそり調べたので、第Ⅰ位階の魔法も使えません。だから、ルキ様にお任せしますよ」
使えない?
俺はいきなり魔法が使える様になったのに。
あの威力ってどう考えても、第Ⅱ位階以上はあるよな。
その辺がイマイチよく分かっていないんだよな。
「ツキは、俺のイメージで魔法や武器を決められちゃてもいいの?」
「はいっ! ルキ様が決めてくれた方が頑張れます」
「そっか」
そう言われると、決めなきゃだよな。
でも、俺の戦闘技術なんて、格好良く言うなればゲームからインスパイアされた自己流の——…
うん。
完全な偏見だけど、獣人でしかも熊っ子キャラは武器なんかは使わないイメージなんだよな。
拳と蹴りだけ、となると。
「武闘家みたいなのはどう?」
「
「簡単に説明するなら体が武器だな。殴ったり蹴ったり。自由度はかなり高いんじゃないかな?」
ツキは二つ返事の即決だった。
俺がルキ・ガリエルになる前、白井慎平(中学生)だった頃、我流の
「お前いつそんなの使うんだよ」
「そ、そんなのとは失礼な!? いつ、どこから命が狙われているか分からないんだぞ!」
「誰にだよ。ってか、お前なんかを狙わねぇよ」
「な、な、なんかだと!?」
「はぁ。いい加減、その中二病癖卒業しろよ」
「は? 卒業? 馬鹿言うなよ、俺が俺でなくなった時、即ち卒業する時は俺が死ぬ時だ」
「何言ってんだ、お前」
そんなたわいもない会話をふと思い出した。
まさか、本当に
良太もきっとビックリだな。
魔法のないただの人間、地球人じゃ戯言だ。
でも、魔法があるここは違う。
物理的に不可能な動きだって、魔法を使えば可能になる。
そこで、俺は前世に考えていた人間の動きじゃないアクロバティック過ぎる
「まぁ、ここまで説明を聞いてもらっておいてなんだけど。結局は自分に合った戦い方がベストだから」
ずっと小首を傾げ放しのツキに、俺はそう付け足す。
ぶっちゃけ、
だから、自分の動きに合う形を見出だして欲しい。
そして、俺たちはリンピールに向けてまた歩き始めた。
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〜提示可能ステータス〜
名前:ルキ・ガリエル
種族:−−−− / 魔族
性別:⚥
称号:−−−−
属性:火、闇
スキル:【
魔 法:【黒炎】
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