06 魔法とスキルについて
「私たち獣人には、第六感。超感覚的知覚能力である
「……は?」
テ、テレパシー?
何言ってんだ、この婆さん。
テレパシーって、超能力じゃん。
それに第六感? 超感覚的知覚?
何そのかっこいい能力!
羨ましい……。
驚かないでとか言われても無理な案件だよ!?
いや。
いやいや、よく考えるんだ! ここには魔法もスキルもある世界なんだ。
こっちの世界にとって、それは普通のこと。
地球じゃ、まずあり得なかろうと、ここではそれが普通。
俺だっていつか、第六感が開花するかもしれないし。
よし、もう驚かない。
俺は軽く咳払いをしてから、口を開いた。
「じゃあ話が早い。まず、俺は君達と敵対するつもりはないよ。近くの、あれは獣人の村だよな? そこで、一人保護したからここまでとりあえず連れてきたってところ」
「その連れてきたという子供は?」
「入口の近場で寝かせているよ」
俺が熊耳の子を指差すと、今まで静観していた双子が駆け出した。
「ツキお兄ちゃーん!」
「ツキにぃー!」
この熊耳は男の子だったのか。
名前は”ツキ”か。
その後ツキの容態を見た老婆曰く、疲労で眠っているだけとのことだった。
それを聞いた俺はひとまず胸を撫で下ろす。
命に別状はない、か。よかった。
助けた手前、死んじゃったら悔やんでも悔み切れない。
獣人を手にかけている人間に対する怒りで我を失いかねない。
「精強なお方。私たちをお助けください!」
突然、犬耳の男が頭を下げた。
「私の名はキリム・サークと言います。厚かましいのも重々承知ですがどうか、私たちを、家族を、村をお救いください!」
いきなりの展開で理解が追いつかない。
けど、何か訳ありって感じだよな。
もちろん、俺は今すぐにでも助けに行きたい。
というか、ツキに邪魔されなかったら今頃暴れていた。
じゃあ、何か訳があっても関係ないか。
「もちろん、手を貸す。状況はよく分からないが、俺もあの騎士もどきの人間には腹が立っていたんだ。任せなさい!」
俺は目深にかぶっていたフードを脱ぎ、自分の胸にドンと拳を当て約束を宣言する。
「俺の名前はルキ・ガリエル。絶対にケモ耳じゃなくて、獣人は救ってみせるから、安心しなさい!」
俺は魔人だ。しかも、死ぬことのない化け物だ。
それ故にきっと俺の本性、本物の姿を見たらきっと怖がられるだろう。
獣人と仲良くしたい俺からしたら、怖がられるのは本意ではない。
でも、俺が魔人という力が示せれば、少なくともここにいる獣人は安心してくれるかもしれない。
そういった思惑でフードを脱いで顔を、額の角を見せたんだけど……ありゃ?
犬耳の男は更に深々と頭を下げているし、老婆にいたっては跪いて土下座していた。
「ちょ、何してんの!?」
俺が悪いことしているみたいじゃん。
ってか、犬耳の男泣いてない?
「いえ、その。嬉しくって……。こんなにも、異種族の方に優しくしてもらえたのは初めてだった物ですから」
「あー、ん?」
「私たち獣人は、一応は人族なのです」
やっぱ、そうだよね。
魔人は魔族、人族とは敵対関係だよ?
優しくとか、それ以前の問題じゃない?
「しかし、この見た目からか人間からは迫害を受け続けていました。この国の人間の住む街の獣人のほとんどが奴隷です。仕事は選べず、住む場所も選べない。そんな状況を変えるべく、前村長たちが獣人の為の村を作ったんですが、それを良しと思わなかったんでしょう。色々難癖つけて襲ってきたのです」
「うん」
はぁ。
その奴隷制度に関して、俺は嫌悪感がある。
でも、それは一概に悪とは言い放てない。奴隷にも色々と種類があるだろうし。
それでも、難癖つけてきた奴の首は跳ね飛ばしたいな。
奴らがやっているのは同族狩り。
家を燃やし、物品を盗み、歯向かえば殺し、歯向かわなくても殺す。
これは、紛れもなく悪だ。疑いようの無い悪だ。
「私にできることであれば、なんでもやります! ですから、お願い致します!」
キリムが再び頭を下げると、ツキの傍にいた双子が駆け寄ってきた。
「おねがいです」
「おねがいなの」
ぐっ、可愛すぎる。
暴力的な愛くるしさだな。
「も、もちろん」
俺は双子の頭に優しく手を乗せ、軽く撫でた。
双子たちは屈託のない笑顔を見せる。
モフい。尊い。
「あっ。その前にツキの傷の手当てなんだけど、できる?」
疲れて眠っているだけと言っても、この新しくも痛々しい複数の傷だ。
そこから菌が入らないとも限らない。
「できますとも」
老婆が微笑みながら頷く。
横になるツキの前髪をふわっと触り、顔を見る老婆は両手を体の上にかざして『
小さな魔法陣が出現し、ツキの外傷をゆっくりだけど着実に回復させていく。
傷口からはキラキラと粒子が舞って、空気中に霧散している。
異世界で見た初めての魔法。
これは、すごい。
「ねぇ、魔法ってどうやったら使えるの? こっちに来てからまだ日が浅くてよく知らないんだよね」
「こっち……ですか」
「うん、まぁ」
別に異世界人ということを、隠す気なんてないけど、それの説明には時間を有する。
だから俺は、触れないでオーラをバリバリに放った。
その後、ツキが回復したのを見届けてから、老婆が魔法について教えてくれた。
老婆の話を纏めると、魔法には各属性やI~Ⅶまでの階位があるみたい。
ツキに使った『
階位は自分が保持している魔力量で決まり、魔力量は自分が強くなるたびに容量が増えるらしい。
第Ⅶ位階は本当に一握り、勇者クラス。
森人、エルフのようなあまり俗世と関わりの無い種にはいるかもしれないが、今現在人族世界で確認されている中で第Ⅶ位階を行使できる者はいない。
第Ⅲ位階でかなりの実力と知名度を有し、第Ⅳ位階まで行使できるものは英雄と謳われる。
あくまでも人間基準、人族基準だと思うけど、ゲームと大して変わらないだろう。
そして皆平等に第Ⅰ位階までなら、全属性を修練と努力次第で行使が可能になるみたい。
魔 法——空気中に漂う魔気と体内の魔力を用いるもの。
スキル——体内に存在する魔力のみで用いるもの。又は恩恵や技能のようなもの。
まぁ、時間はかかるし、属性の向き不向きもあるから、適正属性のみを伸ばすのが普通みたいだけど。
「ちなみにだけど、俺の適正属性とかって分かる?」
「申し訳ございません。村にある魔結水晶があれば可能なのですが」
「そっか」
やっぱ、今すぐには分からないよね。
でもまぁ、知識は武器だ。
この老婆のおかげで、色々と知ることができた。
ほんじゃ、それの恩返しも込めて、村を襲っている蛮族共には痛い目にあってもらおう。
俺は人間と戦うことを再び固く決意した。
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