豊受サマの言うとおり
@hasumi1206
フライパンハンバーグ
『おなかすいた!なにか食べさせてたも!』
俺は木崎尚之、28歳。Win5で当てた5億5千万、3億は米国債にして残りでマンションを買って、高等遊民をしている。
仕事もやめた。思いつきで参拝した稲荷神社、そこで地元の神様に目をつけられたらしい。
『はやく入れるのじゃ!おなかすいた!』
ドアホンの前で騒ぐ少女。ピンク地にクリーム色ラインの入ったのセーラーロリータ、お揃いのセーラー帽、そこから覗く鮮やかな翠色のシニヨン。
あまりにも非現実的すぎる。
言いしれぬ圧と、抗い切れないなにかを感じて思わずオートロックの解錠ボタンを押す。
『やっと入れたのじゃ!もう鈍臭いのう。さあ何か食べさせるのじゃ!さあ!さあ!』
解錠ボタンを押した瞬間、真横にピンクの少女が突然現れ、飯をくわせろと騒ぎ立てる。
俺はその瞬間、考えるのを諦めた。
「ええ、ええ、作りますよ。作りますとも。ご近所の迷惑になりますので、少しだけ声を小さくしてもらえますか。」
取り敢えず、騒がしい声を収めてもらう。
「ところで貴方はどちら様でしょうか?」
残り少ない現実への理性を振り絞り、そう聞くと、
『妾かえ?妾はトヨウケじゃ。この地域の総鎮守として讃えられておる。』
…。
もういいや。これはきっと夢だ。そうに違いない。
開き直って、
「何かリクエストはありますか?」
と聞くと、
『妾ハンバーグが食べたい!』
と元気におっしゃられる。
ハンバーグね…。いいよもう。作ってやろうじゃないの。柴田ダミアン先生監修「白まんま.com」直伝のハンバーグをな。
まずは26cmフライパンに油をたっぷりひいて、煙がでるまで加熱。火を止めて、玉ねぎ1玉とにんにく3かけ、みじん切りにし炒めていく。
でかいボウルに牛豚合い挽き肉400g3パックをあけ、炒めた玉ねぎ、卵3こを混ぜ合わせ気合いを入れて捏ねていく。
うおおおおおお!!
ある程度粘りがでてきたらぺしぺしとはたく!はたきまくる!うおおおおおお!
二十分もこねてはたきまくり、ボウルいっぱいのハンバーグの種が完成する。
フライパンに油をひき、フライパン上で丸く整形した後着火。弱中火でじっくりと加熱していく。
半身に火が通ったら、火を止めお皿にゆっくり移し替え、えいや、とフライパン上にひっくり返す。
ほどなくしてジュウジュウと香ばしい香りをたてるそのブツに対し、竹串を差して肉汁が染み出すか確認。
透明な肉汁が吹き出すのを見て、皿にあけて、ソースを作成…と多すぎる油をオイルポットに入れ、ケチャップ、ウスターソースを半量ずつ、醤油を大さじ2、これでもかというぐらいハンバーグソースを作成。
出来上がった極厚ハンバーグをショートケーキ状に切り分け、皿に盛りソースをたっぷりかけていく。直径50cm、厚さ5cmのフライパンハンバーグが完成。
とりあえず二人分を皿によそい、テーブルに並べる。
『おいしそうなのじゃ!!』
いただきます!と元気な掛け声とともにパクパクと食べだす謎の少女。瞬く間に食べ終わると、
『おかわり!!』
と元気よくおかわりコール。おかわりコールはおよそ1kgのそれを3/4程食べ終わり、
『うむ!美味!大儀であった!』
とお褒めの言葉。
それで、いったいぜんたいどういうわけで私のところに来ることになったのか聞こうとした刹那。
眩いピンクの光が部屋中に立ち込め、
『妾満足したぞ!!またくる!期待しておるぞよ!!』
バシュウウウウ…
少女が叫ぶ。少女は真っ白で巨大な狐に姿を変え、
『社へ戻る!さらばじゃ!』
眩い光が収まると、何時もと変わらぬリビングの風景。1/4だけ残されたハンバーグ。
ハイボールを作成し、一服。
「何だったんだ…。精神がイカれたのか?」
そうひとりごちる。ひとり。
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