♦新人メイド・マナちゃんの憂鬱!
はぁい♪私の名前はマナ♥
どこにでもいるごく一般的な、メイドサイボーグ!
昔はちょっとやんちゃなことをしていたけど、かっこいいご主人様のおかげで、かわいいメイドになれました☆
でも、私はまだまだメイドとしてもまだまだ始めたて。
そのせいで、お料理もお掃除も、針仕事や機械仕事もうまくできません。
お友達で且つ親友である、他のメイドA組のみなさんは何かしら、得意なことがあるのに、こういう部分はみんなに頭が上がりません。
だけど!こんな私でも、このメイド=サン・カンパニーとして、特になことがあります!
それは……。
「マナちゃん!今日もご指名入ってるわよ!」
「はぁい♪今行きます!」
そうです!それは接客業。
このメイドカンパニーに併設されている一般向けのメイド喫茶にて私は働かせてもらっており、そこでいろんな人に可愛がってもらっています!
「あぁ~♪今日もマナちゃんはかわいいなぁ!
このちょっといびつなオムライスと、よれてるけど一生懸命可愛い文字を書いてくれてるのとか、マジ最高!」
「マナちゃんマナちゃん、拙者とじゃんけんしてほしいでござる!
今日こそは完勝して、一緒にラブラブ写真を撮ってもらうでござる♪」
そして、ありがたいことに今日もたくさんのご主人様(仮)が、私を指名してくれてます♪
もっとも、私はほかの先輩メイドさんたちと違って、いろいろと未熟なのに、指名してくれるのには感謝しかありません。
せめて、できる限りのご奉仕をと思いますが、それでもうまくいかないこともたくさんあります。
「ぐふふふふ♪今日も来てやったぞぉ?マナブ、いや、マナちゃん!
ずいぶんと可愛いらしい容姿になってなぁ。
失敗してごめんなさい?ええぞええぞぉ、そうだ!お主限定で、オプションに土下座があったなぁ?それじゃぁ、それをやってもらおうか」
「あぁ~、マナちゃんはほんとうにドジっ子メイド可愛いなぁ!
頭ゆるゆるの隙だらけ過ぎて、時々パンツが見えてるところとか、お胸がポロリするところとか、ホント好き。
これは愛玩用ですね間違いない」
それでも、ごんなダメダメなメイドな私をご主人様(仮)は見捨てずに、愛してくれます!
それはとてもありがたいことですが、同時にとても申し訳ない気持ちにもなります。
「見ていてください!
いつかマナは、このメイド喫茶、いや、メイドカンパニー壱の一流のご奉仕メイドになって見せますから!」
こうして、私は今日も、このメイド=サン・カンパニーで、一流のメイドになるべく、今日もたくさんのご主人様相手に全力でご奉仕させていただくのでした♥
◆◇◆◇
「おお!流石元若、いや、今はお嬢様ですね。
まさか、メイドとしてまともなお仕事ができていないのを逆手にとって、こんなに荒稼ぎするとは!」
「死にたい……」
さて、場所は変わってそこはメイドカンパニー併設のメイド寮。
この建物には無数のメイド=サン・カンパニーに所属するメイド達が住む建物。
元メガネ団のアジトである第二工場の隣の建物を、メガネメイドの発展と推進のためにそこの地主が供給してくれたものだ。
そして、そんな建物の中に元若頭兼新人メイドのマナともう一人のメイドが一つの部屋に収められていた。
「それにしても、私は元の体もそれなりにいいもののつもりでしたが、この体はそれ以上ですね。
生体系パーツメインであり、隠し武器などの数は少ない。
ですがそれ以上に、金属系サイボーグアンドロイドと遜色ない程度には馬力を出すことが可能ですからね。
それなのに、メンテナンスの必要性が少なく、ウィルスなどのセキュリティ対策もばっちり。
単純な戦力では、前の体のほうが強かったですが、応用力ではこちらの体のほうがはるかに高いですよ」
へこんでいるマナを、尻目にもう一人のメイドは改めて自分の体のスペックを確認していた。
「今日で、他のA組の方に全員に再会し終えて、彼らのスペックも確認しましたが、彼らも多かれ少なかれ似たような処理だと判明しました。
つまりは、どの体もそれなり以上のスペックに、恐ろしいほど高性能なセキュリティ。
つまりは、私達の大ご主人様はアンドロイド用斡旋所基準で、Aランクご主人様は確定。
へたしたら、Sランク、いや、SSランクご主人様かもしれませんね!」
「へーへー、そうですか……」
そのように興奮しながら話している方のメイドの名は、カナ。
サイボーグではなく、アンドロイドのメイドであり、特徴としてはこのメイドカンパニーの中では高身長型の体であることだ。
「というかお前、元男型アンドロイドだった癖に、性別とか体が変わった事のは気にならないのか?」
「まぁ、そこはアンドロイド故」
「それに、おr、いや僕のためとはいえ、主人を無理やり替えられたこととかについては?」
「まぁ、そこもアンドロイド故」
「……というか、元主人であるおr、いや僕を目の前に主人が変わったことを平然と言う事に、罪悪感とかないのか???」
「元主人であるマナの事や阿弗利加組の記憶を残したまま、主人を変えてくださるなんて!
大ご主人様は、元ご主人様と違って、なんと高スペックなうえに優しい方なんでしょうか!
一生お仕えします!」
そんな元側近アンドロイドの変わり果てた姿に、マナの気持ちはますます沈んでいく。
現カナ元K-7と呼ばれたそのアンドロイドは、現マナ元マナブとは生まれたころからの付き合いであったのだ。
冷徹にして無骨な見た目も性格も鉄のようなアンドロイド、自分の側近でありながら、同時に兄妹や親戚、なんなら師匠や保護者のようにも思っていた。
恐怖とあこがれ、それとわずかな親しみを感じていた。
そんなかっこいい系アンドロイドが、いまではこのざまである。
主従を離すとかわいそうだから一緒にしてやった?
ちがうね!これは、どう考えても見せつけとかわからせとかそんなものに違いない!
すくなくとも、マナはそう感じる程度にはショックな光景であった。
「でも、メイド姿や多少の名称は違うとはいえ、私達元阿弗利加組、現A組、将来杏組が形だけでも残った。
そうプラスに考えておきましょう!」
「手足どころか、心臓や頭も取られてるような状態だけどな」
「でも、魂は無事なのでしょう?
アンドロイドの私とは違って」
「……多分、な」
そんなカナのセリフに溜息を吐きながら答えるマナ。
そうだ、現在のマナはその体や仕事中の言語中枢、果てには行動のほとんどがこのメイドのサイボーグボディと電脳接続部、さらにはこの体に備え付けられた補助脳で制御されている。
が、それでも今回の改造が唯一良心的であるといえる部分は、ある意味では人やアンドロイドの一番大事な部分。
電脳そのものについては、最低限しかいじられていないということだ。
だからこそ、マナはもちろん、カナも今回の事の経緯や過去の事もきっちり覚えているし、マナに関して言えば、メイドとは別の自分の芯というべきものは保ったままであった。
「そうだ、今回ボクたちは不幸な事故でこんなところに入れられてしまったが…。
それでも、ボクは阿弗利加g…A組、アンズ組の復興をあきらめたりはしないぞ!
そうだ、ボクには部k、いやお友達もいるし、何よりもあきらめちゃいけないわけがある!」
マナは自分を鼓舞するかのようにそ叫ぶ。
そうだ、そもそも今のマナがこのような状態になっているのは、組の存続という大義名分に、マナ自身にとって譲れないものがあったからなのだ。
それは自分の魂以上に大事なもののため、そしてそれを理解してついてきてくれた部下のためにもそれを成し遂げなければならないものであった。
「幸い給料は出ているし、ボクたちがこうしてとらわれたおかげで……あいつらの身の安全は保障してくれたみたいだからな」
「そうです!
今は屈辱かもしれませんが、いずれはこれが癖に……ごほん、生きているうちは再起の可能性がありますので!
それこそ、マナ様がその魅力で大御主人様を調略などどうでしょうか?」
「やめろ。
ただでさえ、メイドの奉仕プログラムやこの体のせいで、奉仕するたびに戻れなくなりかけるんだから。
それよりも、あいt…いや大ご主人様を暗s…意地悪することはできないのか?」
「あ、それはやめたほうがいいですよ。
どうやら私達アンズ組メイドの体は、それなりに特別製みたいなので。
それこそ大ご主人様が死亡したら、私達全員そのまま死んでしまう程度には」
「え」
確実に自分たちの組の存続と、自分の本当に守りたかったもののため、全力で知恵を絞る。
が、結局打開策は出ないまま。
最終的には、機を探る以上の結論が出ることはなかった。
「はぁ、まったく。
それじゃぁボクはそろそろ寝ることにするわ。
……睡眠学習なんかも使って、少しでも実務を覚えて、メイド喫茶以外でも資金稼ぎできるようにしなければならなきゃいけないからな」
「了解です。
それじゃ、ほら、こちらに来て下さい」
そのセリフとともに、カナは学習装置備え付けベットに横たわり、その横にポンポンとマナを手招きした。
「……いやさ、もうすでに何回かやったからいまさらだが、本当に一緒に眠る必要があるか?」
「あるかないかで言えば、多分あると思いますよ。
それに、元とはいえマナ様は私のご主人さまでしたので。
睡眠中の安全のためにも、組のためにも、これは必要なことです」
「……ほんとか?」
「……本当本当。
それにご主人様は、いまさら諦めるんですか?
組と未来のための努力を」
「!!そ、そんなわけないだろ!
それじゃぁ、え~……か、カナ!ボクの睡眠中はボクの体を任せたからな。
きっちり守ってくれよな」
「ハイ、了解です。
それでは、おやすみなさい」
こうして、マナは元従者へと体を預け睡眠に入る。
一方カナはそんな、純真すぎる元主人現同僚に、笑顔を向けその寝顔を見守る。
かくして、この元主従関係は、形を変えてメイドカンパニー内での日々を過ごすのであった。
◇◆◇◆
そして後日。
「おかえりなさいませ、ご主人さ……あ」
「……」
「げへっへっへ!本当にメイドになってやがる!
ほら!俺様達が客だぞぉ?存分に奉仕やがれ!」
その日、マナはついに自分の眼で見たくないものを見てしまった。
そう、それこそが彼の宝であり、真の守り、欲したかったもの。
他の男のものになってしまった、元許嫁の姿が、そこにあったのでした。
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