ハーレム王国建国計画!

もりもり森三

第1話 ハーレム王に俺はなる

 俺の名前は皆木るい。日本生まれ日本育ちの普通のサラリーマン、独身の25歳だ。突然で悪いが聞いてほしい。

 俺はずっと異世界に憧れていたんだ。剣と魔法の世界は俺の夢の塊だった。いや、異世界に憧れていたというより、具体的には異世界で自分だけのチート能力を盛大に炸裂させ、数多の可愛い女の子とイチャイチャし、そして更に現代の知識も駆使して、数多の可愛い女の子とイチャイチャする。そんな人生に憧れていた。


 そう、つまり女の子とイチャイチャしたいのである!


 もう一度言わせてくれ。

 女の子とイ(割愛)


 え?日本でもいいじゃないかって?

 バッキャヤロウッ!お前はなんにもわかっていない。日本は一夫一妻制じゃないか!俺がしたいのはハーレム!そう!ハーレムなのだ!ぐははははは。


 よくある小説で、目立つのが嫌だとか、国の大事に巻き込まれたくないとか言って、正体を明かさずにコソコソしたり、まるでやる気のない主人公の異世界物語が多くあるけど、俺はその主人公達に直接会って声を大にして言いたい。


 なにしとんじゃわれぇえ!まったくけしからん!異世界及びハーレムへの侮辱である!切腹しやがれ!


 と。


 だってさ、どうせなら目立たなきゃじゃない?目立った方がかっこいいし、モテるじゃん。ヒーロー=モテるは俺の中で絶対不可侵の常識なのだ。誰がなんと言おうと俺はこれを言い続ける。異論は認める。


 もし俺が異世界に行けたならそれはもう目立って目立って目立ちまくってハーレムを築いてやりますよ。ええ。5人とか10人とかそんなしょぼくれたハーレムに興味は無い。星の数にも負けないようなハーレム王国を築いてやるのだ!どうだ!恐れ入ったか!星の数がどれくらいなのかはちょっとわからない。



 とか一人虚しく脳内小説家ごっこをしていたら、突然視界が変わった。





「……?」


 突然のことに俺は言葉を失った。人間本当にびっくりしている時は声が出ないものである。初めて富士急ハイランドのジェットコースターに乗った時、俺はあまりの衝撃に無言人形になった。だからビックリしながら「キャーキャー」言ってる奴らは本当はびっくりしていないのだ。(自論)


 ふむ。おかしい。さっきまでティッシュだらけの部屋にいたのに気づいたら、目の前にあるのは高く伸びた大きな木。それも1本では無い。視界を埋めつくほどの木である。人はそれを森と呼ぶ。


「はにゃ?」


 やべ。少し冷静になったら変な声出た。なんだこの状況は。だが、俺は薄々気づいているんだ。いや確信している。こんなの、まるで、まるで、


「ハーレムきたああああああ!」


 俺はこれまでの25年間の中で最も喜びに満ちた声を上げた。心の底からの叫びだった。ちなみに周りに女の子は誰もいない。女の子というか人っ子一人いない。ただ、俺の脳内お花畑辞書によると、異世界=ハーレムなのでこれで合ってるだろう。(キリッ)


 来た!遂に来てしまった!俺の理想郷に!

 ていうか異世界来て第一発声が「はにゃ?」ってどうなんだろう。「うぅ…ここは…?」とか言っとくべきだったんだろうか。あ、そういえば、


「定番の女神様に会った記憶もトラックに跳ねられて死んだ記憶もないんだけどいいのか?」


 記憶を辿ってみても、俺の最後の記憶は部屋に散らかった使用済みのティッシュ達だった。うん。まあいいんだろう。ここが異世界ということが何よりも大事なのだ。ちっちゃい事は気にするなって、たしか馬面のお笑い芸人さんが言ってたもんな。ありがとうな、ウマッティ!


 そんなことより、まずはやらなくちゃいけないことがある。異世界と言えばまずこれよ。これをしなければ始まらない。


「ステータスオープン!」


 すると、情報が脳内に浮かんできた。


 名前:ミナギ=ルティンコ

 年齢:16

 種族:人間 Lv1

 HP:10/10

 MP:10/10

 攻撃:3

 防御:3

 敏捷:3

 知能:3

 装備:なし

 スキル:なし

 SP:0


 取得可能スキル

 体術


 ぬおおお!これがステータス!夢にまで見たステータスだ。ああ涙が出そう。俺はこのステータスを見るために生まれてきた気がする。ステータスを見ると異世界に来たことをすごく実感する。でもさ、ひとつだけ、いやふたつだけ言わせて欲しい。


「弱すぎじゃない?あとなんか名前変わっとる!」


 俺はどうやら弱いようだ。しかもチートスキルは持っていないみたいだ。残念だけど、こればっかりは仕方がない。女神様に会えていたらもしかしたら貰えてたかもしれないけどね。まあでも落ち込む必要はない。なぜなら異世界というだけで、俺は今非常に気分がいいのだから!


 それよりもだ。ルティンコってなんだ。ミナギ=ルティンコだと?声に出して読んで見てほしい。さんはい。


「みなぎるてぃんこ」


 漲るちんこやないかい!


 誰だ!こんな名前にした奴は!だいぶセンスがいい。褒めてやろう。ありがとう。


 てかもう1個あった。なんか若返ってやがる。まあ嬉しいので今はスルーしよう。


「ステータスも確認したし、さっそくレベル上げしますか!」


 俺のハーレム王国を築くために、一刻も早く俺は強くならなければならない。大丈夫、ハーレム王国を目標とした俺に壁などないのだ!ビバハーレム!


 ちなみに、俺はレベル上げ大好き人間である。なんかレベルって上げたくなるんだよね。無心でひたすらレベルを上げるのはもはや快感である。


「じゃあ、さっそくレッツレベリング!」


 俺はハーレムの夢に向け1歩を踏み出した。まずはその辺を歩いてみる。


 5分くらい歩いていると、草むらから何やら兎のような生き物が出てきた。ぴょんぴょんしてる。あら可愛い。ちょっとムキムキだけど。俺は動物愛護の精神を持ち合わせているから兎ちゃんは愛でてやるのだ。


「ほらこっちおい「グヌオオオオオ」


 前言撤回。絶対に兎が出してはいけない鳴き声してるし。う、うん。まあそう来るんじゃないかと思ってた!全然油断なんかしてなかったんだからねっ!


 軽いショックを受けたが、さすがは俺である。直ぐに気持ちを切替えた。


「ふっふっふ。ついに会ったな!デーモンラビット(今命名)!貴様はここで俺のハーレム計画の生贄となれ!」


 変な方向に切り替えてしまった。周りに誰もいないのでつい痛い事を口走ってしまったぜ。でもなんだろう。ちょっと楽しい。デーモンラビットは俺をしっかりと敵認定し、今にも飛びかかって来そうだ。


 そして俺はあることに気づく。


 俺、戦闘経験0だった。武器も持ってないし。


「退きゃーーーkへぶしっ」


 思いっきり右膝蹴りを食らった。人生初めての膝蹴りだった。なにこれめちゃくちゃ痛い。デーモンラビットやばい。


【取得条件を満たしました。〈痛覚耐性〉が取得可能です。SP消費は1です】


 なんか頭の中で言ってるけど、今はそれどころじゃない。HPを見ると残り6になってた。4ダメージだと?こいつ、できる。兎のくせに生意気な。このままだと、あと2回食らったら終わりだ。どうする?このまま挑むか?ダメだ勝てる気がしない。俺はデーモンラビットに背を向け、全力で走り出した。


「無理無理無理無理!」


 ちらっと後ろを振り返るとデーモンラビットは俺を追うことはせず、まるでゴミを見るような目で俺を見ていた。くっ、お前ごときに興味は無いとでも言っているのか!(妄想)


 戦略的撤退に成功した俺は、木の影に身を隠しひとまず安全を確保した。


「あー、ビビった。なんだあの筋肉兎。軽くトラウマだぞちくしょう。うーん、どうしようか。まず武器が欲しいな。でもマジでなんも無いなこの森」


 辺りを見渡してみても武器になりそうなものは何も無かった。そういえば、


「取得条件がなんちゃらって言ってたな」


 ステータスを開いてみると、取得可能スキルの所に体術と痛覚耐性があった。おお!これは取るしかないだろう!とりまーす!まずは体術からっと。


【SPが足りません。不足SPは1です】


 なにぃいいいい!完全に不覚。俺としたことが情けない。そういやSPの欄0だったわ。痛覚耐性も取れそうにないな。


「あれ?詰んでね?」


 いやそんなわけないだろう。俺のハーレムへの道がこんな所で終わりを告げるわけが無いだろう。はっはっは。まったく悪い冗談だせ!


「ふむ。どうしたものか」


 マジで困った。今すぐにあの筋肉兎にリベンジマッチを挑みたいというのに。


 その時だった。俺の背後から何者かが近づく音がした


「プルンプルンっ」


 振り返るとそこには青色のスライム先輩がいた。

 ス、スライム先輩!まさかこんな俺を助けに?


「えいっ」


 とりあえず殴ってみた。特に理由は無い。


【スライムを倒しました。経験値3を獲得しました】


「スライム先輩ぃいい!」


 誰だ!あんな無害なスライム先輩を殺した奴は!誰がなんと言おうと許さんぞ!まあ僕なんですけど。


「筋力3の俺にやられるなんて、なんて律儀な先輩なんだ。よし、たくさん狩ってやろう」


 さすがに弱すぎて1体ではレベルが上がらなかったので、他のスライム先輩を探してレベルを上げることにした。俺の勘がレベルが上がったらSPをもらえると言っているので、とっととレベルをあげてしまおうと思う。


【スライムを倒しました。経験値3を獲得しました。レベルが2になりました。SP1を獲得しました】


 4体目のスライムをえいっとしたところでやっとレベルが上がった。良かった。やっぱりSPが貰えた。さっそく体術を、いや痛覚耐性の方がいいか?うーん。まあどっちでもいいか。先に体術を取る事にした。


【SP1を消費して〈体術〉を取得しました。〈体術Lv1〉を取得しました】


 うおおお!なんか不思議な感覚。体の使い方が何となくだけどわかる気がする!めっちゃなんとなくだけど。


 ということで、律儀なスライム先輩に経験値のお礼として生まれ変わった俺の攻撃を見てもらおう。


「えいっ」


【スライムを倒しました。経験値2を獲得しました】


 そういえば体術取得する前からスライム先輩はワンパンだったので、いまいち強くなった気がしない。あれ、獲得経験値が減ってる。俺のレベルが上がったからか。これはスライム先輩とお別れする日も近いな。


 とはいえ、まだ2は経験値が貰えるので更にスライム先輩を狩りまくった。


【スライムを倒しました。経験値2を獲得しました。レベルが3になりました。SP1を獲得しました】


【SP1を消費して〈痛覚耐性〉を取得しました。〈痛覚耐性L v1〉を取得しました】


「よし、体術と痛覚耐性ゲットだぜ!」


 あのサトシくんにも負けないゲットだぜ!をキメた俺はこのままあの筋肉兎、デーモンラビットに再戦を挑むため、歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る