第41話操り人
夏目の優香に翳された手の光が、優香の瞳を通して身体に入っていくようだった。
すると、どんどん優香の瞳は侵食されていく。
「僕はあなたの味方です。だから、あなたはぼくの言う通りに動けばいい」
「私の味方?夏目さんが?」
朦朧としながら、優香は嬉しそうに微笑み言葉を反芻した。
「そう、あなたは俺の操り人形だ」
その瞬間、優香の正気は一気に夏目の手に落ちていった。
夏目は徐々にアザゼルの顔を表しながら、正気を失った優香に催眠をかけた。
そして、優香は力が抜けて眠ってしまうと、夏目はピアスをとり、アザゼルの姿になると、優香を抱えて飛び立っていった。
「ははははっ、人間はちょろいもんだ」
アザゼルは怪しく笑いながら宙を舞う。
その姿を人間は誰も気づかない。
「アザゼル?」
そんな様子をマッドは別の教室から眺めていた。その表情は訝しげで、すぐにアザゼルの向かう方向へマッドも動き出した。
「アリアを消すために、お前が必要なんだ」
アザゼルは不気味な笑い声を上げながら、街を飛び渡っていると、美奈瀬が働く病院近くを飛んできた。
普通の人間にはアザゼルの姿は見えない。しかし、美奈瀬がナースステーションにいて、ふと空を見たとき、アザゼルを目撃した。
「あれは…」
衝撃的な光景に、美奈瀬は持っていたファイルを落としてしまった。
「美奈瀬、大丈夫?」
同期の看護師がやってきて、ファイルを拾うのを手伝ってくれた。
「いや、ごめん。疲れかな?」
「美奈瀬は真面目すぎるんだよ。ちゃんと休憩とりなよ」
「ありがとう」
そうおどけてみせるが、美奈瀬の鼓動は激しく波打っていた。
そして、別室へいき、人目がないことを確認すると、すぐさま瑛太に電話をかけた。
『もしもし?美奈瀬?どおした』
瑛太も駐在所で書類を書いていた。警察官としての仕事を真面目にやっている中、勤務時間に美奈瀬が瑛太に連絡することは、滅多になかった、瑛太は驚いたように電話にでた。
「もしもし?瑛太、実は…」
美奈瀬の言葉に、瑛太は絶句した。
空を飛んでいたのが悪魔の羽だったこと、少女を一人抱えていたことを全て告げた。
「あの姿、見たことあるわ」
『それ、アザゼルだよ』
瑛太の脳裏に、教会で戦ったアザゼルの姿が浮かんだ。
「やっぱり?あなた知っていたの?彼が地上にいること…どうして見張ってないのよ」
美奈瀬は少し怒った口調で問いただした。
「ごめん、まだ調べたいことあったから、伝えるの遅くなった」
「もう!」と、電話越しの美奈瀬はご立腹だった。
「詳しくは会って話したい。今晩うちこれるか?」
瑛太の沈んだ声に、美奈瀬も冷静になり、
「いけるよ、じゃあ、そのときにね」
そういって、電話を切った。
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