第2話話題のニュース

『続いてのニュースです…昨夜未明、女性の遺体が廃墟ビルのそばで発見されました。女性はビルの屋上から落ちたものと考えられ、自殺と警察はみて調査しているもようです』


そんなニュースをみていたのは、一軒家で兄妹だけで暮らす間宮瑛太と妹の愛美だった。


朝のニュースを、互いに支度をしながらも、今、世間を賑わしているニュースに、愛美も瑛太も気になって仕方がなかった。


「またか、これで5件目だよ。本当に自殺なのか?」


瑛太は警察官をしていて、この自殺続きのニュースを怪しんでみていた。確かに、何も凶器も見つかっていないし、誰かが手をかけてもみ合った形跡もなかった。


しかし、瑛太には何か野生のカンというか、何かが関わっている気がしてならなかった。


「お兄ちゃんもこの事件関わってるんだね。私も何かある気がする」


自分が食べた食器を流しに持っていきながら愛美は言った。


「おっ?愛美、探偵気分か?五人には共通点はないんだけどな。でも、すっきりするまで、一緒に調べるか」


「私にはそんな時間ありません」


愛美は芸術大学の演劇科に通っていた。夢は舞台女優で、幼き頃から劇を見るのが好きだった。


その憧れで入った学校は、愛美の思い描く世界とは裏腹に、皆ギスギスしていて、友達はクラスに出来なかった。


大人しめな愛美は皆から嫌われて、それでいて、評価がいいため。妬まれ嫌がらせを受けることもあった。


でも、そんなことは、瑛太には話せなかった。余計な心配をかけないためだ。


両親もいなくて、二人暮らしの間宮家では、瑛太の稼ぎで生計を立てている。


芸術大学には奨励金で通っていて、そのお金も、愛美は自分のやるべきことに全うしたらいいという理由で、瑛太は愛美にバイドさせなかった。


そんな優しい兄の期待に応えたい。


もっと、自信を持てたら、きっとそんないじめも気にならなくなるだろう。


けれど、何故か評価をされる度、自分を認めてあげることができなかった。


「愛美、なんか悩みでもあるのか?」


ぼーっとしていた愛美の顔を、心配そうに瑛太が見つめていた。


「別に…ちょっと、もうすぐオーディションあるから緊張してるだけ」


無理に笑顔を見せて安心させようとする愛美を、複雑な笑顔で、「そっか」と瑛太も頷いて見せた。


愛美は洗面台へ向かい朝の支度を開始した。


瑛太も、納得はいかなくてもそれ以上何も言わなかった。




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