それから

第6話 久しぶりの生徒会

続編スタートです。

楽しんでいただけますように。

プロローグの2話目、4話目のセリフを少し加筆しました。大筋は変わりありませんが、お時間ございましたら、ご確認を。


─────────────────────




改めまして。


私、シャルリア=アウダーシア。アネーロ王国四大公爵家のひとつ、アウダーシア公爵家の長女、17歳。下に、隣国へ留学中の三歳離れた可愛い弟もいる。


本日は久しぶりに、通っている王立学園の生徒会室で生徒会役員の皆さまにお菓子配り中。学園は毎日きちんと通っていたけれど、この三ヶ月はクズから引き継いだ事業の見直しなんぞをしていたから、副会長の仕事ができなかったのだ。


まあ、ヤツの事業、と言っても、元々平民の商家が起こしていた事業にお墨付きをしたりオーナーになって保護したり、共同経営にしたりとかなので、三ヶ月くらいで落ち着いたとも言えるのだけれど。もう一人の副会長でもあったクズが領地へ帰り休学したのもあり、二人で穴を空ける形になってしまったのだ。その辺のお礼とお詫びはね、しておかないと。


ちなみに、我がアウダーシア公爵家と、バカヤーニ公爵家の婚約破棄話は、いろいろな憶測と共に貴族中を騒がせたが、両家が口を閉じているので大っぴらには誰も聞いてこない。まあ、聞けないわな。


そして有り難いことに、アウダーシア家には釣書がずいぶんと届いているようだけれど、表面好青年だったロイエのまさかのやらかしに、お父様が物凄く慎重になっており、しばらくは次の婚約者とか言う話は出なさそうだ。

例えクズがクズなせいだとしても、やっぱり失恋は疲れるので、ちょっと助かっている。


「お嬢様、お茶が入りました」


「ありがとう、シス。皆さんにお配りして」


「かしこまりました」


シスがいつものように、シャンとした美しい所作で皆に配っていく。そう、シスも一緒にいたりするのだよ。

ふふふ、何故かと言うと、公爵家以上は学園に侍女か従者を連れて来られるのだ!何て特権階級!!って、前世を思い出した後は恐縮したけれど、シスとずっといられるのは嬉しい。ありがとう、特権階級。


「会長、そして皆さま。長い期間ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。心ばかりのものですけれど、どうぞ召し上がってくださいな」


私は淑女の微笑みを浮かべて、皆に挨拶をする。前世を思い出してからますます思考が日本よりになってきちゃってるから、気をつけないとボロが出そうだ。

……地味にシスが厳しいから、まあ、大丈夫なんだけどね……。


「ありがとう、シャルリア嬢。……もう落ち着いたのかい?」


「ええ。お気遣いありがとう存じます、ルトハイト殿下」


例に漏れず?学園に王族が在学中の時は、その方が会長に就かれる。この代はルトハイト=アネーロ第一王子殿下だ。下にご兄弟が何人かいるけれど、このまま行けばこの方が王太子になる予定。


「そうか、何よりだ。……では皆、ありがたくいただくとしようか」


殿下のお言葉に、皆がワッと嬉しそうにお茶に手を伸ばし、それぞれに談笑を始める。皆、「おいしい!」「食べたことない!」なんて言いながら喜んでくれている。ふふふ、シスと私直伝の、我がアウダーシア家のシェフによるスイーツ……!!美味しくない訳がなくてよ。


なんて、にやにやを堪えて皆を見ていると、横からこそっと声をかけられる。


「リア……本当に大丈夫なの?」


「ルト様。ええ、もう、全くもって本当に」


殿下は同い年で、私とクズの幼馴染みでもあるのだ。表向きの挨拶が済めば、それはいつも通りの口調で。優しくて、気配りの出来る王様。さすがに王家には理由を話さない訳にはいかなかったので、きちんと報告してある。王太子候補のルト様も聞いたのであろう。クズともかなり仲が良かったし、従兄弟でもあるから心配だよね、きっと。


「まったく、あいつは……」


「殿下。ここではちょっと」


「あ、そうだよな、すまない。……けど本当に、腹が立ってな」


「そのお気持ちはいただきますわ」


幼馴染みとして、心底心配して怒ってくれているのが分かる。分かるのだけれど、もう怒るのも面倒なくらい、クズがどうでもよくなっている私は、曖昧に微笑んで話を切った。周りに聞き耳を立てられても嫌だし。


向こうの瑕疵だし、別に隠す必要もないのだけれど。周りに興味本位の視線を送られるのが煩わしいのだ。またヤツのせいで、そんな時間を過ごしたくはない。どうせ徐々に漏れるのだろうけど、しばらくは、ね。


「そういえば、フリーダが会いたがっていたぞ。なかなか会えないと」


そして少しの間の後、ふと思い出したようにルト様が話し出す。


フリーダ様とは、ルト様の三つ下の、妹殿下だ。

ちょっと気が強いけれど、利発で愛らしい方……なのだけれど。


「ああ、申し訳ございませんでしたわ。何度かお茶会のお誘いをいただいたのだけれど……」


私は困った顔でシスに視線を送る。


「お嬢様は新規のお仕事でお忙しく。王女殿下には失礼を致しました。お詫びの品も贈らせて頂きましたが……不備がございましたでしょうか?」


「いや、そうではなく。ああ、うん。私もそう言っているのだが。どうしても話をときかなくてな。……あの子には詳しく話していないから、余計になのだろう」


「ああ、それで……」


最初に言っておく。別に私は彼女が嫌いではない。

むしろ、妹のように可愛がっている。いるのだけれど。


「シャルリア姉様!!本日はこちらにいらっしゃると聞いたわ!」


ノックもそこそこに、慌てて止めようとする姿勢の見える侍女を差し置いて、バーン!と効果音が見える程の勢いで生徒会室のドアを開けて入って来たのは、その彼女、フリーダ様だった。


ああ、来てしまったのね……。


「フリーダ!ノックもきちんとせずに失礼だぞ!王女の自覚を持ちなさいとあれほど、」


「だってお兄さま!シャルリア姉様ったら、なかなか捕まらないのだもの!」


「だからと言って、」


「お兄さまは黙ってて!シャルリア姉様!今日こそ、なぜロイエ様とお別れになったのか理由を聞かせていただきますわ!」


兄の注意をことごとく無視して、フリーダ様がまくし立てる。



……そうなのだ。この子、ロイエの大ファンなんだよなあ……。やれやれ。

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