第49話 入レ替ワル

「捕まえた」


「やったぁ」


「やったね」


「逃がさないよ」


「うふふ」


「もう逃げないでね」


「もう逃げられないよ」


 私を追い詰めるように取り囲んだ七人の少女たちが、口々に言う。

 少女たちの身体からは色が失われており、どろりと濁った眼には生気が宿っておらず、所々が霧のように霞んでいた。

 その姿は、彼女らがこの世のものではないということを、明確に表していた。


「ねえねえ」


「あなた」


「名前は?」


「答えて」


「うふふ」


「なんていう名前?」


「答えてよ」


 じりじりと迫られ、


「み、ミサキ……」


 正直に答えると、


「ミサキ?」


「ミサキっていうの?」


「ミサキって名前なの?」


「ミサキっていうんだ」


「うふふ」


「ミサキだって、あはは」


「私たちにぴったりじゃん」


 少女たちは各々、驚いたり笑ったりして反応すると、


「誰が抜けるかな?」


「誰だと思う?」


「私がいいなあ」


「次は私でしょ?」


「うふふ」


「私!私がいい!」


「誰が選ばれるかは、分かんないもんね」


 と、顔を見合わせ始めた。


「あ……あなたたち、何なの?私を、どうする気なの?」


 恐る恐る訊くと、


「あなたは、選ばれたの」


「私たちの仲間に」


「一人抜けたら、一人が加わるの」


「それがルール」


「うふふ」


「身に覚えがあるでしょう?」


「犯した罪は、償わなきゃ」


 七人の少女たちはいつの間にか、銀色の鋏を手にしていた。

 それが一斉に、私に向かって振り下ろされる直前、


「ようこそ、私たちへ」


 七人の少女たちは、笑みを浮かべながら言葉を揃えた。

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