第40話 応ジル

「兄ちゃん。この空き家、本当に心霊スポットなの?」


「ああ。インターホンを押したら、誰も住んでないはずなのに返事が返って来るらしいんだよ」


「へえ。本当かなあ」


「本当だよ。実際に試して、返事が帰って来た奴が何人もいるって話だ」


「ただの噂だよ、そんなの」


「まあ見てろって。いくぞっ」


 ——―ピンポーン…………


「……返事が無いね」


「まあ、待ってろって」


 ——―…………………………


「……兄ちゃん、もう帰ろうよ」


「……ああ」


 僕たちはトボトボと帰路に着いた。




 その夜、両親が町内会の寄合で出掛けた為、二人で留守番をしていると、


 ——―ピンポーン


 誰かが訪ねてきた。


「はぁい」


「ま、待てっ!」


「兄ちゃん?どうしたの?」


 ——―ピンポーン


「……これ、うちのチャイムの音じゃない」


「……あっ」


 ——―ピンポーン


「こ、これって、あの家の……」


「……ああ」


 ——―ピンポーン


 ——―ピンポーン


 ——―ピンポーン


「ひっ……!」


「静かにしろ……。応じなきゃいいんだ。このままやり過ごせば――」


「オへンじをイたダいたノでモうアがラせてイただいテおりまス」


 ノイズ混じりの電子音声を無理矢理繋ぎ合わせたかのような酷く抑揚のない声が、僕たちの背後で響いた。

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