第19話 現レル

「ねんねん~ねんねえよ~ねんねえしいな~。ころり~ころりいと~こぉろりいしいな~」


「何なの、それ?」


「これ、子供の頃に聴かされてた子守歌なんだよ」


「へー。でも、なんかねんねんころりと違くない?」


「うん。でも、そう歌ってたんだよ。オリジナルだったのかな?」


「うろ覚えで歌ってたんじゃないの?」


「でもさ、その後、こう続くんだよ。ねんねえの~こもりいは~こぉのわぁたぁしぃ~。さんずぅを~こえてえ~よぉみこえて~。ぼうやぁの~もとにぃい~まぁいろうかぁ~」


「何それ?ますます、ねんねんころりじゃないじゃん。それに、なんか怖くない?」


「何が?」


「だって、三途を越えてとか、黄泉を越えてとか、まるで……」


「でも、一番気になるのは、これを歌ってくれてた女の人が誰だったか、さっぱり思い出せないことなんだよ。母親でもないし、お婆ちゃんでもないし、誰だったんだろう?」


「このわたしだよ」


 彼女が突然、別人のような笑みを浮かべて喋った。


「……え?」


 その声色は、本能的な懐かしさを感じさせるものだった。

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